ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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 その鯖洲の様子から、なんとなくではあるが緊急を要しているように思えた。急に辺りの空気が重くなった気がする。

「本当は車を回すまでここで待ってろと言いたいところだが、バラバラになるのは避けたほうがいい。俺が先頭に立つからついてこい。玄界灘、お前は万が一を考えて最後尾だ」

 鯖洲の焦燥した感じから、言わずとも察したのであろう。冥が「贅沢は言っていられないようですね」と首を縦に振った。何が起きているのか教えて欲しい。

「後、最悪のことを考えて――あんまり気乗りはしねぇが、組の若い連中を引っ張ってくるか。用心するに越したことはねぇ」

 一体、斑目と千早は何を掴んだのであろうか。そして、鯖洲がここまで焦燥しているのはなぜなのか。聞いたところで教えてもらえる雰囲気ではない。鯖洲はスマートフォンで、どうやら自分が所属している組の事務所に電話をかけているようだった。

「俺だ。今から集められるだけでいいから、うちの若い衆を寄越してくれ。おぉ、そうだ。例の大屋敷だよ。そこに悪い虫がつかねぇように、囲って欲しいんだよ」

 コトリの想像ではあるが、もしかすると屋敷が何者かに狙われているのか。だとすれば、今はまだ帰って来てはいない母や、おそらく自室で待機しているであろう寺山にも声をかけてやるべきではないだろうか。

「あの、お母様や寺山はどうするの? なんだか、ここにいるのが危険みたいな言い草だけど」

 何が起きているのかを直接聞けるような状況ではないが、しかし遠回しにでも確認したくなるのが人間というものだ。

「いや、心配いらねぇよ。俺達がここを出ちまえば問題ねぇんだ」

 何か危険が迫っている。しかしながら、危険が迫っているのは屋敷ではなく、おそらく自分達なのであろう。どんな危険が迫っているのかは、おおよそで予測がつく。

「斑目様と猫屋敷様は大丈夫なのですか?」

 こちらに危険が迫っている。しかも、どうやら自分達が対象らしい。そう考えると、斑目達にも同様の危機が迫っていると考えられはしないだろうか。

「あっちは現役の刑事がいるだろ? いざとなれば応援だって呼べる。まぁ、事を大きくすると面倒だから、そこまでのことはしないだろうが、まず大丈夫だろう。人の心配より自分達の心配をしたほうがいい」

 これらのやり取りで、コトリはすっかり察してしまった。鯖洲はあえて口にはしていないが、多分危機が迫っている対象は、コトリそのものなのであろう。ますます身に覚えはないのだが。
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