ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

文字の大きさ
345 / 391
ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

62

しおりを挟む
「俺だってな、正直なところ寝耳に水なんだわ。だが、一里之が留置所に入ってきた男に聞いた話だと、どうやらそうみたいなんだ」

 ふと、ルームミラーを見ると、鯖洲の視線がこちらに向けられており「やっぱり、これ以上はやめておくか?」と、彼にしては珍しく優しい言葉が飛んできた。彼がそんなことをしてくれるということは、すなわちそれだけ酷い事実だということなのであろう。

「いえ、続けて」

 足元がふわふわとして、軽く目眩でも起きたかのごとく、周囲の景色が歪んでいる。それでも、逃げるわけにはいかなかった。いつもならば、ここでやめていただろうが、しかし逃げてばかりでは何も変わらない。

「一里之の話だとよ、留置所に入ってきた男は庭師として屋敷に雇われていたみたいだな。庭をいじってる際に屋敷の人間と顔を合わせることが多かったらしくて、特にそこの長女とは仲が良かったらしいな」

 歪む景色の中で過去のことを懸命に思い出してみようとする。屋敷の中で仕える人間には教育が徹底されており、家族ともある程度の距離を置いていたような気がする。こちらがどんなに親しくしようとしても一線を引かれてしまうことが寂しいと思ったこともあった。しかし、そんな中でも庭師の人達は、もっと暖かかったような気がする。今は業者に任せてしまっているから、昔のように住み込みで働く庭師はいなくなってしまったが。

「それで、ある時そんな話を小耳に挟んだらしいんだわ。まぁ、当時のお嬢の姉ちゃんは思春期真っ只中だし、家族との衝突もあったんじゃねぇんか? そんな中、まぁお嬢はお嬢で想像がつきそうな性格してるからな。思春期なんてなかっただろ?」

 なんとも失礼な話であるが、言われてみると反抗期などは一切なかった気がしないでもない。むしろ、周囲の友人などが、こぞって家族と距離を置き始めるのが不思議だった記憶がある。それは、姉の態度とて例外ではない。

「これも短絡的な思春期の発想だけどよ、なんだかお嬢の姉ちゃんは、ある種の嫉妬みたいなものを抱いていたのかもな。それで、妹のことを疎ましく思っていた」

 なんとか言葉の意味を噛み砕いてではあるが、脳が理解してくれるようになった。もっとも、解せはしない。姉がなぜそんな思考にいたったのかは、解せても解したくはなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

君に恋していいですか?

櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。 仕事の出来すぎる女。 大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。 女としての自信、全くなし。 過去の社内恋愛の苦い経験から、 もう二度と恋愛はしないと決めている。 そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。 志信に惹かれて行く気持ちを否定して 『同期以上の事は期待しないで』と 志信を突き放す薫の前に、 かつての恋人・浩樹が現れて……。 こんな社内恋愛は、アリですか?

讃美歌 ① 出逢いの章              「礼拝堂の同級生」~「もうひとつの兆し」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

幸せな人生を目指して

える
ファンタジー
不慮の事故にあいその生涯を終え異世界に転生したエルシア。 十八歳という若さで死んでしまった前世を持つ彼女は今度こそ幸せな人生を送ろうと努力する。 精霊や魔法ありの異世界ファンタジー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【その断罪、待っていました!】 私は侯爵令嬢オフィーリア・ドヌーブ。王太子アシル・バスチエの婚約者だった。良い国母になる為、日々努力を怠らなかった。そんなある日、聖女を名乗る女性ソネットが現れ、あっという間にアシルは彼女に夢中になってしまう。妃の座を奪われることに危機感を抱いた私は、ありとあらゆる手段でソネットを陥れようとして失敗。逆に罰として侯爵家から除籍され、辺境の地へ幾人かの使用人達と共に追放されてしまう。追放先の村での暮らしは不便だったが、人々は皆親切だった。けれど元侯爵令嬢というプライドから最後まで私は素直になれなかった。そんな自分に後悔しながら長い時を孤独に過ごしていたある日。不思議な懐中時計の力によって、何故か断罪の真っ最中に時が巻き戻っていた。聖女への嫌がらせは無かったことに出来ない。それなら今世はおとなしく追放されて和やかに過ごそう。今度こそ幸せに暮らす為に—— ※他サイトでも投稿中

処理中です...