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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
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わざとらしくすっとぼけてみせる斑目。寺山がやったことは決して許されることではないが、しかし斑目はそこに温情を挟んでやりたいらしい。一連の話を聞いていれば、そう思いたくなるのも無理はない。
「……お心遣いありがとうございます」
寺山が頭を下げると、鯖洲が小さく舌打ちをする。
「出頭するってことは、警察署までの足がいるだろうが。この中で車持ってんのは俺だけじゃねぇか」
鯖洲はもう一度舌打ちをすると、部屋を出て行こうとする。その際に振り返り、寺山に向かって一言。
「冥土の土産に署まで送ってやる。こんなこと、最初で最後だからな」
冥土の土産には早いようだが、犬猿の仲である鯖洲がこんなことをするのは珍しい。寺山は苦笑いを浮かべると「その施し、ありがたく頂戴する」と、わずかに……ほんのわずかにであったが頭を下げた。
「素直になられると調子が狂うじゃねぇかよ」
鯖洲はそう言いながら部屋の外へと出て行った。
「これで事件は解決――でしょうか?」
千早が言うと、斑目が呟く。
「少なくとも一里之君は釈放されることでしょう。我々がこちらにやってきた目的は達成されたかと」
元より彼らは一里之のために駆けつけたのだ。一里之の釈放が確定した今、もはや目的は遂行できたといえよう。
「……寺山、私のお願いを聞いてくださる?」
寺山の罪がどれほどのものになるかは分からない。そこに情状酌量の余地があったとしても、人を殺した事実は変わらず、それは必ず罪として認定される。しばらくは元に戻れないことだろう。
「なんでしょうか?」
今の状態の寺山にお願いできることなんてどれだけあるだろうか。それでも、コトリは願うのだ。はるか未来を見据えて。
「いつかここに戻って来てくれないかしら? どれだけ時間がかかっても構わないから」
寺山はその言葉に「お嬢様……」とだけ呟くと、言葉を失ってしまった。だが、しばらくすると緩く首を横に振って、かすかな笑みを見せた。
「その頃には、よぼよぼの老人になっているかもしれません。いや、もしかするとすでにこの世にはいないかもしれません。それでもよろしいですか?」
それはきっと、寺山の精一杯の冗談だったのであろう。
「えぇ、構いませんわ。ねぇ、お母様」
この先どうなるのかは分からないが、この屋敷が残っている限り、窓辺野家が残っている限り、寺山のような人材の居場所はあるだろう。
「……お心遣いありがとうございます」
寺山が頭を下げると、鯖洲が小さく舌打ちをする。
「出頭するってことは、警察署までの足がいるだろうが。この中で車持ってんのは俺だけじゃねぇか」
鯖洲はもう一度舌打ちをすると、部屋を出て行こうとする。その際に振り返り、寺山に向かって一言。
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冥土の土産には早いようだが、犬猿の仲である鯖洲がこんなことをするのは珍しい。寺山は苦笑いを浮かべると「その施し、ありがたく頂戴する」と、わずかに……ほんのわずかにであったが頭を下げた。
「素直になられると調子が狂うじゃねぇかよ」
鯖洲はそう言いながら部屋の外へと出て行った。
「これで事件は解決――でしょうか?」
千早が言うと、斑目が呟く。
「少なくとも一里之君は釈放されることでしょう。我々がこちらにやってきた目的は達成されたかと」
元より彼らは一里之のために駆けつけたのだ。一里之の釈放が確定した今、もはや目的は遂行できたといえよう。
「……寺山、私のお願いを聞いてくださる?」
寺山の罪がどれほどのものになるかは分からない。そこに情状酌量の余地があったとしても、人を殺した事実は変わらず、それは必ず罪として認定される。しばらくは元に戻れないことだろう。
「なんでしょうか?」
今の状態の寺山にお願いできることなんてどれだけあるだろうか。それでも、コトリは願うのだ。はるか未来を見据えて。
「いつかここに戻って来てくれないかしら? どれだけ時間がかかっても構わないから」
寺山はその言葉に「お嬢様……」とだけ呟くと、言葉を失ってしまった。だが、しばらくすると緩く首を横に振って、かすかな笑みを見せた。
「その頃には、よぼよぼの老人になっているかもしれません。いや、もしかするとすでにこの世にはいないかもしれません。それでもよろしいですか?」
それはきっと、寺山の精一杯の冗談だったのであろう。
「えぇ、構いませんわ。ねぇ、お母様」
この先どうなるのかは分からないが、この屋敷が残っている限り、窓辺野家が残っている限り、寺山のような人材の居場所はあるだろう。
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