ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【エピローグ】

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「その時のツアーコンダクターは一里之で決まりだな。しっかりとお嬢を世話してやれよ」

 とりあえずという形ではあるが、まだこの人達と一緒にいることができるらしい。会社員らしく、元の部署に戻ることを少しばかり期待したのであるが、これはこれで悪くはない。

「まぁ、会社がそれで構わないというのであれば、ずっとお世話係でもいいですけど」

 鯖洲や冥と違って、一里之は会社から雇われた身でありながら、コトリのお世話係をやっている。そこに変な後ろめたさのようなものがあるのだが、今はあまり深く考えないようにしたほうがいいだろう。

「まぁ、とりあえず先のことは置いといてだ。今日、これから予定があるってやつはいないよな?」

 鯖洲の言葉を聞いた一里之は、妙な胸騒ぎを覚える。今日はようやく留置所から解放された日なのだ。家でゆっくりしたいというのが正直なところだ。勾留された期間も短かったため、家そのものは心配ないとは思うが――。

「まぁ、お祝いですわね。一里之君のお勤めご苦労様会」

 コトリが両手をパチンと合わせて笑みを浮かべる。そんな言葉、どこで覚えたのか。自然と鯖洲のほうへと視線をやりそうになるが堪えた。何を言われるか分かったものではない。

「当たり前だろ? もちろん、今回は俺が出してやるよ」

 冥が身構える。きっと、ハンドルを握っていなければ、一里之も同じようなリアクションを見せていたことであろう。鯖洲がそんなことを言い出すなんて、裏があるとしか思えない。

「――何か企んでいませんでしょうね?」

 一里之の気持ちを代弁してくれたのは冥である。それに対して「なんも企んでねぇよ」と鯖洲。

「そ、それじゃあ。何かの見返りを求めるとかではなく、鯖洲さんがご馳走してくれるってことですか?」

 おそるおそると聞いてみると、鯖洲は「だからそうだって言ってるだろ?」と、信じられない言葉が返ってきた。

「やはり私帰ります。こんなことがあるなんて、今夜は雪でも降りそうですから」

 冗談だか本気だか分からない口調の冥。コトリが慌てて引き止める。

「なんだよ、俺が奢るってのはそんなに珍しいことかねぇ」

 助手席で面白くなさそうに言うと、鯖洲はややシートを倒して寄りかかった。冥への嫌がらせだったかのかもしれない。

 こうして、一里之を含めた打ち上げらしきものが行われ、その日は本当に鯖洲が財布を出した。

 ――しばらくした後、会社宛に請求されるなんてことは、もちろんこの時の一同は知らない。

―完―
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