ポケットのなかの空

三尾

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DAY5

48

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「詳しいことはそちらのメールにもありますが、発症はおそらく事故の直前で、衝突の際、柳沼氏は意識不明だった可能性が高いそうです」
 しばらく答えを迷ったあとで、響野は「そうですか」と応えた。
 山崎がどんな表情をしているのかはわからない。だが、相手の目はじっとこちらの顔に注がれているような気がした。伯母の目も。……水元の目も。
 レーザーのような彼らの視線を皮膚に感じながら、響野は葬儀のときの柳沼智美の思いつめた表情を思い出していた。司法解剖は検案よりも時間がかかると聞く。あのとき、父親の遺体はまだ彼女のもとに戻っていなかっただろう。
「“父はお酒を飲まない人で、居眠り運転もしない”って言ってたな」
「柳沼智美さとみさんですね」
 山崎の声が静かに相づちを打った。再び、ぎしりとソファがきしみ、「柳沼智博氏のご息女です」という小声が聞こえたのは、これも水元に対する補足だろう。
「奥様はずいぶん昔に亡くなられたとのことで、娘の智美さんが葬儀にみえたのですが、なにぶん突然のことでしたので、ご本人にも葛藤があったようです」
「そうなんですね」と水元は応える。響野と似たりよったりの反応だった。ほかに言いようがないのかもしれない。
「……それで伸也とめていたのね? あのとき」
「揉めたってほどじゃないけど」
 伯母の言葉に、響野はやんわりと反論した。
 司法解剖の結果が出て、柳沼智美は何を考えただろう。父親が法律違反を犯していなかったことにホッとしただろうか。それとも父親の生命を奪うきっかけになった病気を憎んだだろうか。


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