ポケットのなかの空

三尾

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DAY7

53

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 響野は素直に相手の言葉を受け入れた。謝罪するつもりで水元の背に手を置くと、抱きしめる力がますます強くなる。
「早く家に帰りたい」
 ぽろりとつぶやいてから、水元は顔を上げた。
「なんてね。響野んだけど」
 どこか恥じ入るような表情で笑う。
 水元の部屋もあるじゃないか、と言いかけて、なぜかまた胸が苦しくなった。響野は何も言わずに水元の肩に顔をうずめる。
 本当に、後悔してないか?
 本当に、俺でいいのか?
 すり替えられた言葉とは、そのようなものだったのではないかと思う。今までの水元の言動を考えると。
 確証があるわけではない。見当違いかもしれない。だが、自分も相手もこんなに些細なきっかけで揺らぐのだと思った。
 きっと自信がないせいだろう。お互いがお互いに負い目を持っていて、自分の正しさに自信がない。だから、相手の中に“正しい”家族や恋人の気配を感じると、劣等感で足がすくむ。
 ――かどうかなんて誰にもわかんないのに。
 花音の言う通りだと思った。その正しさは、おそらく、自分たちが心の中で勝手に作り上げているものだ。
 水元が途中で言葉を止めたのも、もしかしたら、そのことに気付いているからなのかもしれない。
 響野は相手の肩から顔を上げた。
ひじり
 下の名を呼ぶと、水元がびっくりしたようにこちらの顔をのぞき込む。


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