リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

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 「身に覚え、ございますわね?」

リーゼの言葉に王太子はふてくされて返事をしない。

「クリストフ様?」

リーゼの声の冷たさにリリゼットまでヒヤリとする。

「………ちょっとした遊びだ」

クリストフがようやっと声をだしている。子供の頃、クリストフはこの状態のリーゼに逆らってさんざんな目にあったのでいまだにこの状態のリーゼが怖いのだ。

 「お遊びで私のお友達に迷惑をかけないで」

リリゼットはリーゼにお友達、と言われて驚いていた。リーゼはこの危なっかしいリリゼットを放置はできなかったし、ほかの令嬢と違ってあまりに世間知らずだと思っていた。無意識に庇護対象にしていることにリーゼ自身も気が付いてなかった。

 入口がばんと開けられる。

「あら、クリス様、お茶会ですの?私もご一緒したいわ」 

オクレール男爵令嬢コゼットが割り込んでくる。

「今は会議中だ」

クレマンがコゼットにいう。コゼットが侍従にお茶を要求するが、クリストフが動かなくていいと合図する。

「コゼット、大事な話をしている。出ていけ」

「あら、この小娘はいいのかしら」

とコゼットはリリゼットを見る。

「お前はここで口を利く権利はない。ドルバック伯爵令嬢やリーゼ嬢にお前の方から口をきいてはいけない」

王太子が諭すように、しかし冷たい口調で言う。子供を産んでからこちらコゼットは他の女性よりも自分が上だという態度をとるので他の女生徒からは敬遠されていた。だからこそ余計に自分と過ごすことに執着している事にクリストフは気が付いていた。味方になる令嬢が一人もいないのは可愛そうだ、と知りうる限り公平で嘘をつかない女性、婚約者のリーゼを男爵令嬢の味方にできないか、とない頭をふり絞りクリストフは考えていたのだが。そもそも儀礼上、リリゼットやリーゼにコゼットの方から話しかけてはいけないのであった。学園なのでクラスメイトなら身分の差はないという建前ではあるが。一歩廊下に出ればそこは貴族社会であり、序列は純然と存在するのであった。

 コゼットは中等部からの入学でクリストフと同じ年齢であった。入学してすぐにクリストフに粉をかけ、すぐにクリストフが引っかかった、ということらしい。淡い金髪に淡い水色の瞳のふわふわとした少女、コゼットはクリストフに対して己を出し惜しみもせずせっせとクリストフ専用の性欲を受け止める女性になり下がって、…中等部の2年で子供を産んだ。コゼットにはクリストフだけしかいなかった。


 侍従とクリストフ、クレマンの三人でコゼットを椅子ごと抱え上げ廊下に押し出し生徒会室の鍵をかけた。

「失礼した」

クリストフが謝る。リリゼットは一連の騒ぎについていけず呆然とするばかりであった。
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