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「クリストフ様、男性の中でリリゼット嬢はどういう扱いになっているのですか?ご自宅に個人的な手紙を送る、それも『秘密の遊び』の誘い、とは………無礼千万ですわね」
リーゼに言われてクリストフは男子内の賭けの話をしてしまった。リリゼットの男に誰が最初になるか、という話をリリゼットは他人事のように聞いている。
「はあ…?」
リーゼはリリゼットに尋ねる。
「意味、わかってる?」
「意味?」
リリゼットは今一つピンと来ていないようだった。
「………クリストフ様、あなたはこういう純粋な女性になんて手紙を書いてるんですか」
リーゼの言葉にクリストフは何も言えなかった。男子生徒の中で噂になっているリリゼット嬢は修道院育ちというのも嘘で姉と一緒にアランに教育されている、などと流れているのだ。王太子ば観念して謝罪のような事を言う。
「いや、…その………、事実誤認だったようだ
意外なほど優しい声でクレマンがリリゼットに聞く。
「あと誰から来てるんですか?」
「…ごめんなさい、私まだクラスの方の名前覚えられてなくて。その上クラス外の人とかからお手紙頂くのでどうしたものかと。お返事もどう書いていいのかわからずに…。二度、三度下さる方もいらして…、正直私の手にはあまります」
クレマンが
「ではお兄様にお返事をお任せすればよいと思いますよ。お兄様でしたら正式なものならそういう対応をしていただけるでしょうし。もし、侯爵以上にご子息からの非公式なお手紙が来ているなら教えていただけるとありがたいです」
と言う。リーゼも
「そうね、目に余るようなら私の方から手を回してもよろしくてよ」
という。クレマンは首を横に振った。
「男の恥は男が断罪しますよ。………最近男子生徒の乱れは目に余りますから。ウジェ商会の方にも手を回さなければ」
最後のつぶやきはクリストフ以外には届いていなかった。最近リリゼットたちのクラスでは賭け事で停学者が男子から6人女子から2人出たところであった。不祥事が続く事は学園としても避けたいところであろうとクリストフも思っていた。王立、という名が冠されているのでひいては王家の威信にもかかわる事だ、とクリストフは理解していた。
「お兄様相談があるのですが」
リリゼットは分類した手紙の箱を持って兄のニコルの執務室を訪ねた。別棟のジュリエットとニコルの館は本館よりは小さいが居心地よく整えられている。
「珍しいなリリゼット。なんだ、その手紙の束は」
「最近、男性の方からお手紙が多くて。…正式なものではないのでどうお返事したらいいかと思って」
とリーゼと考えたセリフを言った。変に感情が混じると兄の判断も鈍るだろうし、兄として利用したいものがあれは利用するといい、とリリゼットは思っている。意外な所で冷静に判断していた。リリゼットから受け取った手紙の束を一枚ずつ読みながらニコルの顔は怒りで赤くなっていった。ニコルは何度か深呼吸するとなんとか落ち着いてむりやり笑顔になりリリゼットに聞いた。
「これ、誰かに相談してるのかな?」
リリゼットは素直に答えた。ただし少し与える情報を削ったが。
「ダンテス公爵様のご令嬢のリーゼ様とデュ・ベレ宰相のご令息のクレマン様、あと王太子様」
「…生徒会か?」
リリゼットは頷く。嘘は言ってないし、とも思った。
「そこで、お兄様のお返事をしてもらうのはどうか、と」
「それは正しい。未婚の子女にみだらがましい手紙を送ってくるのは言語道断。正式に私を通さないと誘うことはまかりならん、………が、父上に知られたらまた」
と最後の言葉は途中で途切れた。
リーゼに言われてクリストフは男子内の賭けの話をしてしまった。リリゼットの男に誰が最初になるか、という話をリリゼットは他人事のように聞いている。
「はあ…?」
リーゼはリリゼットに尋ねる。
「意味、わかってる?」
「意味?」
リリゼットは今一つピンと来ていないようだった。
「………クリストフ様、あなたはこういう純粋な女性になんて手紙を書いてるんですか」
リーゼの言葉にクリストフは何も言えなかった。男子生徒の中で噂になっているリリゼット嬢は修道院育ちというのも嘘で姉と一緒にアランに教育されている、などと流れているのだ。王太子ば観念して謝罪のような事を言う。
「いや、…その………、事実誤認だったようだ
意外なほど優しい声でクレマンがリリゼットに聞く。
「あと誰から来てるんですか?」
「…ごめんなさい、私まだクラスの方の名前覚えられてなくて。その上クラス外の人とかからお手紙頂くのでどうしたものかと。お返事もどう書いていいのかわからずに…。二度、三度下さる方もいらして…、正直私の手にはあまります」
クレマンが
「ではお兄様にお返事をお任せすればよいと思いますよ。お兄様でしたら正式なものならそういう対応をしていただけるでしょうし。もし、侯爵以上にご子息からの非公式なお手紙が来ているなら教えていただけるとありがたいです」
と言う。リーゼも
「そうね、目に余るようなら私の方から手を回してもよろしくてよ」
という。クレマンは首を横に振った。
「男の恥は男が断罪しますよ。………最近男子生徒の乱れは目に余りますから。ウジェ商会の方にも手を回さなければ」
最後のつぶやきはクリストフ以外には届いていなかった。最近リリゼットたちのクラスでは賭け事で停学者が男子から6人女子から2人出たところであった。不祥事が続く事は学園としても避けたいところであろうとクリストフも思っていた。王立、という名が冠されているのでひいては王家の威信にもかかわる事だ、とクリストフは理解していた。
「お兄様相談があるのですが」
リリゼットは分類した手紙の箱を持って兄のニコルの執務室を訪ねた。別棟のジュリエットとニコルの館は本館よりは小さいが居心地よく整えられている。
「珍しいなリリゼット。なんだ、その手紙の束は」
「最近、男性の方からお手紙が多くて。…正式なものではないのでどうお返事したらいいかと思って」
とリーゼと考えたセリフを言った。変に感情が混じると兄の判断も鈍るだろうし、兄として利用したいものがあれは利用するといい、とリリゼットは思っている。意外な所で冷静に判断していた。リリゼットから受け取った手紙の束を一枚ずつ読みながらニコルの顔は怒りで赤くなっていった。ニコルは何度か深呼吸するとなんとか落ち着いてむりやり笑顔になりリリゼットに聞いた。
「これ、誰かに相談してるのかな?」
リリゼットは素直に答えた。ただし少し与える情報を削ったが。
「ダンテス公爵様のご令嬢のリーゼ様とデュ・ベレ宰相のご令息のクレマン様、あと王太子様」
「…生徒会か?」
リリゼットは頷く。嘘は言ってないし、とも思った。
「そこで、お兄様のお返事をしてもらうのはどうか、と」
「それは正しい。未婚の子女にみだらがましい手紙を送ってくるのは言語道断。正式に私を通さないと誘うことはまかりならん、………が、父上に知られたらまた」
と最後の言葉は途中で途切れた。
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