リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

文字の大きさ
21 / 61

21

しおりを挟む
 リリゼットたちが学園祭の準備で忙しくしている間にエドアールはひっそりと任地に向かった。任地に向かう三日前からクレマンの兄のエティエンヌもリリゼットの家に居続けて三人でずっと宴会をしていた。学園でクレマンと会うと

「面目ない…」

とうなだれていた。リリゼットが見る限り、3人は毎日大トラに変化してたし、毎日義姉が治癒魔法で二日酔いを解消してあげているようだった。正確に言うとニコルの二日酔いを軽減させて、エドアールとエティエンヌの二人をニコルが手当をする、という風だった。
 エドアールは旅立つ前に子爵として正式にリリゼットとの婚姻を問い合わせてきたのでそれはリリゼットにとっては頭痛の種でもあった。

「騎士団の話はクレマンとエティエンヌとニコルに引き継いであるからよろしくね」

そういいおいてエドアールは旅立っていった。

 姉ジュスティーヌの結婚まであと数日となった。夏の終わりの結婚ということになっていたのだがウジェ夫人の従妹が急な事故で亡くなり、夫人がショックを受けて結婚式の参列が危ぶまれたためウジェ家の都合で式が伸びたのである。
 さすがに連れ子とはいえウジェ家の初めての式なので夫人を外しての式は体裁が悪いということで療養の為一月半延長したのである。
 その間、リリゼットたち一族あげてウェディングドレスとついでにアランのタキシードに色々と加護をつけた。勢いで披露パーティでジュスティーヌが着るドレスは総レースの華麗なものになった。全てのレースを編み終えていた叔父が一月ほどで編み上げてくれたのだ。真白な総レースのドレスの下には柔らかな青のアンダードレスを加護裁縫ができる父の従妹が作ってくれた。宝飾系を担ってる叔父が

「多分、今回の式は見物もかなり出ると思うぞ。…一族の総力戦だからな」

と言っている。リリゼットの父親、ユーグも式用の白い手袋を最上質の皮で作り上げていた。まるで皮膚のようにピッタリして軽いその革の手袋はうっとりするような手触りの皮で出来上がっている。ニコルは式では使えるようなものは作っていなかった。新居を飾る時計を繊細な彫刻を彫りこんだ木工細工で作っていた。 



 リリゼットは姉と二人きりで座っている。

「もうすぐですね」

「リリちゃんと離れるのさみしい」

姉がそっと言った。

「この1~2年で慣れたでしょ、アランさんもいるんですし」

ジュスティーヌが少し赤くなった。

「アランとは………色々迷惑かけました。わからないって怖いね」

と自分たち二人の評判を理解してジュスティーヌはニコルとジュリエットにも謝っていた。元凶の父親には謝っていない。父親の状態をアランから正直な話を引き出して、これ以上ウジェ家から借金を重ねられないように頼んだりとジュスティーヌはジュスティーヌで苦労していた。ウジェ男爵は父親自身がお金を儲けられるように商売の話を持ってきていて父親もそれに乗り気だった。それは革細工用の革に加護を授ける、という話でドルバックの名前は出さない、それが加護付きの革であることを『教会』に保障させてそれで小物を作る、という話だった。革細工職人としての確固たる腕を持った父親が作るとさすがに値段が跳ね上がるので材料部分の加工、ということで一月で週に1回程度なら遊べる程度の小遣いになるような額を手に入れられるように、とウジェ男爵とニコルの密約でもあった。

 「とんでもないことをしでかす前に管理監視できる体制」

をニコルとウジェ男爵で作り上げたのだった。ウジェ男爵としても未だ名前だけとは言えドルバック伯爵のユーゴがバカを続けるのは得策ではないと判断したようだった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

処理中です...