リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

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 「順番に魔力を入れてくれていい。量も適当でいい、完全に等分に入れたかったら魔術師連れてくるべきだったと思う」

そういいながらニコルは魔力を温めている。

「リリゼットと公爵は…いつもの1/10位の出力でお願いします。あと順番は氷、風、水、闇、炎、土、光の順で。出力足りなかったらいうので。皆自分の出力が終わったら甘いもの食べて余分な力保持しておいて。足りなかったら追加もらうから」

ニコルの髪が赤く煌めいている。

「リリゼットは最後にもう一度、上から守護をかけてもらうから」

何度かの調整を終わらせた後、ニコルが暫く石を撫でまわしている。みなそれを固唾をのんで見守っている。力が加えられているのはニコルの髪の光方でわかる。何度かそれをした後リリゼットを呼び守護の力を「石にコーティング」させる。作業のコツを教えながら角砂糖を3ついれた甘い紅茶を飲んでいる。
 リリゼットは周りを気にしないように、目をつぶって深呼吸をする。兄に言われた通り石を自分の持つ聖属性の力の守護の力をまとわりつかせ、一定の厚みでコートしていく。その間ずっと祝福状態でリリゼットの周りが金と銀の光で包まれ、柔らかい音が作業場に聞こえていた。ゆっくりと音と光が消えた後、ニコルはもうひと作業をする。力をすべて石に収める作業だった。

 「ふぅ、今回はできましたよ。エド先輩」

学生の頃、マテリアルに複数属性を着ける実験をエドアール、ニコル、エティエンヌでやって最後の『石に収める』事ができなかったのだ。ニコルはその頃は長男であったが、家を継ぐ嫡男とは決まっていなかった。ニコルの子供が生まれたら嫡男にするかも、など決まっていなかったのでまだこの技を受け継いでなかったのだ。エドアールは本当に嬉しそうだった。

「なんかすげぇ石ができたな」

「これを複数作りたいなら何回かに分けて作らせてほしい。俺が持ちませんよ」

ニコルは二個目、三個目、と言い出しそうなエドアールとルネに言い切った。

「仕方ないな…。リリゼットちゃん、できない?」

エドアールの無茶ぶりにニコルはきっぱり拒否した。

「これは魔力量の問題じゃないんです。うちの家系の問題です」

後日、リリゼットは兄に

『赤毛の子がこの技を教えられないのはお前たちが既に背負ってる以上のモノを背負わせないため、だ』

と教えられた。ただでさえ重責で仕事も超過しがちな赤毛の魔女達の重荷は少しでも減らしたいドルバック一族の掟でもあるのだ。



 「おつかれさま」

義姉が迎えにでてくれた。もう子供たちは部屋に引き取っているらしい。

「お夕飯はちょっとお肉多めでいいかしら?」

兄の体調を確かめるためにジュリエットはニコルに声をかける。リリゼットは普段自分についてる侍女が迎えてくれる。

「お嬢様、おかえりなさいませ」

ジュリエットはリリゼットがいない事に慣れているので色々な場面でナチュラルにリリゼットを無視する。ジュスティーヌがいた時はジュスティーヌも無視されていた。これはわざとではないし、本人もされているリリゼットやジュスティーヌも気にしていなかった。が、屋敷の使用人の中では奥様のこれに違和感を感じていた。執事頭は一度ニコルと話すべきだ、と思っていた。

 が、先にニコルがジュリエットに声をかけた。
「リリゼットの夕食は?」

「あ!」

ジュリエットは驚いた顔になった。

「ご一緒だったの?」

「今、馬車から降りてたのみえてなかったかな?」

あくまで物言いは優しいし声も優しい。が、ジュリエットはニコルのなにかに触れていることはわかった。

「これが何回目かわかってる?」

執事がいう。

「大丈夫です、人数分ちゃんと夕食は用意しております」
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