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8.不審な客
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食堂の店主のサリーは、時々食堂の隅に座る怪しい男二人に気づいていた。
日頃からオーレリアに近づこうとする男には、常に気を配り、いつの間にか彼女を守るのが自分の役割などと、勝手に思っていたのだ。
何せ、オーレリアは初めて世の中を知った修道女のように純粋に男性達と接し、その男達の不純な思惑など少しも考えていないようで逆にこっちが心配になる。
横暴な態度の男にも丁寧に接し、たちまち彼らを虜にしても、誘惑に気づかず節度を守った態度をとり続ける姿は、貴族であるならば、これが淑女というのだろう。
ただの民であるサリーには、良くわからないけれど。
そんなオーレリアを、この汚れた世の中の餌食にしてはならない思い、気がついたら必死に守っていた。
だからこそ、身なりの良い怪しい男性二人が気になって仕方がない。
彼らは、他の男達と違って、厨房を覗こうともしないし、「オーレリアは元気にしているか。」など、私に尋ねることもしない。
いつも周りからあまり注目されないような隅の席に座り、ひっそりと食事している。
二人の内、黒髪に茶色の瞳の顔の綺麗な男は俯きがちでガリガリに痩せており、注文する時も、もう一人の男がすべて話し、誰とも眼を合わせようとしないし、声も一切発しない。
しかし、一旦食事が始まると一心不乱に食べて、時折瞳を潤ませている。
その表情が目に焼きついて、見てるこっちが切なくなる。
きっとあの男は、オーレリアのことなのか、料理なのかそこははっきりとはしないけれど、好きでたまらないのだろう。
女の勘がそう告げている。
週に一回、必ず来るその二人組の話す方の男は、私に「食事を持ち帰って食べたい。」と話し、大量に持って帰る。
私の店の料理は、王都では中くらいの価格で普通に食べる分には、負担もそれほどでもない。
けれども、大量に持ち帰るとなると、それを続ける経済力が必要になり、とても平民には無理なことだった。
だけどその男は、平気な顔でお金を支払う。
だから、どこかの貴族がお忍びで来ている可能性が高い。
顔を見比べても、きっと黒髪の男が位の高い方なのだろう。
彼らの来る日だけ、異常に跳ね上がる売り上げを前に、サリーはいつも首を傾げていた。
ある時、どうしてもその男が気になって、オーレリアに
「黒髪で水色の瞳の男を知っているかい?」
と尋ねると、
「いいえ、知りません。」
と彼女も首を傾げている。
じゃあ、彼女に憧れるただの男達なのか、それならば、元々上品なその二人が彼女に危害を加えるはずもないし、まあいいか。
「そうだよね。
何か気になる二人なんだよ。
一人は、リアの作るシチュー食べて、時々涙を浮かべていてさ。
もう一人の男は、家で食べたいからって、大量に持って帰るんだ。
でも、その黒髪の方が痩せこけていて、心配な感じなのさ。
あれはきっと何かの病気持ちなんだよ。
そうじゃなきゃ、泣きながら食事したり、こっちが心配になるほど痩せこけたりしないと思うよ。
何となくだけどね。」
「そうですか…。」
オーレリアはその時、それ以上何も言わなかったが、その後から、その客達が来る日はシチューを大量に作って、二人を待っているようにサリーは感じた。
日頃からオーレリアに近づこうとする男には、常に気を配り、いつの間にか彼女を守るのが自分の役割などと、勝手に思っていたのだ。
何せ、オーレリアは初めて世の中を知った修道女のように純粋に男性達と接し、その男達の不純な思惑など少しも考えていないようで逆にこっちが心配になる。
横暴な態度の男にも丁寧に接し、たちまち彼らを虜にしても、誘惑に気づかず節度を守った態度をとり続ける姿は、貴族であるならば、これが淑女というのだろう。
ただの民であるサリーには、良くわからないけれど。
そんなオーレリアを、この汚れた世の中の餌食にしてはならない思い、気がついたら必死に守っていた。
だからこそ、身なりの良い怪しい男性二人が気になって仕方がない。
彼らは、他の男達と違って、厨房を覗こうともしないし、「オーレリアは元気にしているか。」など、私に尋ねることもしない。
いつも周りからあまり注目されないような隅の席に座り、ひっそりと食事している。
二人の内、黒髪に茶色の瞳の顔の綺麗な男は俯きがちでガリガリに痩せており、注文する時も、もう一人の男がすべて話し、誰とも眼を合わせようとしないし、声も一切発しない。
しかし、一旦食事が始まると一心不乱に食べて、時折瞳を潤ませている。
その表情が目に焼きついて、見てるこっちが切なくなる。
きっとあの男は、オーレリアのことなのか、料理なのかそこははっきりとはしないけれど、好きでたまらないのだろう。
女の勘がそう告げている。
週に一回、必ず来るその二人組の話す方の男は、私に「食事を持ち帰って食べたい。」と話し、大量に持って帰る。
私の店の料理は、王都では中くらいの価格で普通に食べる分には、負担もそれほどでもない。
けれども、大量に持ち帰るとなると、それを続ける経済力が必要になり、とても平民には無理なことだった。
だけどその男は、平気な顔でお金を支払う。
だから、どこかの貴族がお忍びで来ている可能性が高い。
顔を見比べても、きっと黒髪の男が位の高い方なのだろう。
彼らの来る日だけ、異常に跳ね上がる売り上げを前に、サリーはいつも首を傾げていた。
ある時、どうしてもその男が気になって、オーレリアに
「黒髪で水色の瞳の男を知っているかい?」
と尋ねると、
「いいえ、知りません。」
と彼女も首を傾げている。
じゃあ、彼女に憧れるただの男達なのか、それならば、元々上品なその二人が彼女に危害を加えるはずもないし、まあいいか。
「そうだよね。
何か気になる二人なんだよ。
一人は、リアの作るシチュー食べて、時々涙を浮かべていてさ。
もう一人の男は、家で食べたいからって、大量に持って帰るんだ。
でも、その黒髪の方が痩せこけていて、心配な感じなのさ。
あれはきっと何かの病気持ちなんだよ。
そうじゃなきゃ、泣きながら食事したり、こっちが心配になるほど痩せこけたりしないと思うよ。
何となくだけどね。」
「そうですか…。」
オーレリアはその時、それ以上何も言わなかったが、その後から、その客達が来る日はシチューを大量に作って、二人を待っているようにサリーは感じた。
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