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12.ユリウスが不在の時
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メインデルト王国の宰相を務める家臣の働きで、旧西国はメインデルト王国の一部として、うまく回り出している。
そこに、視察という形でユリウスは向かうことになった。
セシーリアはメインデルト王国の形ばかりの代理人となっている。
実際はしっかりとした家臣達がいるので、何かをするわけではないけれど、代理人がいた方が家臣達が動き易いと説得されて、なっていた。
そんな時、お茶会の希望が令嬢達から上がっているとのことで、庭園で開催する。
サーナによると、この国の中心となる令嬢達だと。
親を含めた人間関係を頭に叩き込み、いざ開催すると、6人の令嬢達はバーンハルトの一件を知っているらしく、セシーリアに同情的だった。
だか、政略的理由でセシーリアがユリウスと結婚することになりそうだと伝えると、令嬢達はそれぞれ涙を流したり、顔が引き攣っていたり、不機嫌に退出したり、さまざまな反応を見せた。
それぞれがユリウスとの結婚を夢見ていたのだから、その反応は当然だし、決まっていることを内緒にして、令嬢達の若い大切な時間を無駄に奪いたくないという思いだった。
私も結婚をする直前に、今回のような展開になるとは夢にも思わなかった。
きっと彼女達にも、すぐに親達が新しい男性を紹介するのだろう。
そのためにも、わかっているのに引き伸ばすのではなく、彼女達に誠意をもって対応したかった。
今は理解されなくとも。
一人ずつ帰って行く中、最後に令嬢が一人だけ残った。
「セシーリア様、ご婚約おめでとうございます、でいいのでしょうか?」
「まだ、ユリウス様には待っていただいているところです。
でも、フェルミノ王が強く望んでいるので、内々には進んでいるようです。」
「では何故、今私達に教えてくれたのですか?」
「みなさんの時間を無駄にしたくないからです。
私の勝手で正式には発表していませんが、この決定は揺るぎないでしょう。
希望を持たれたまま、決まっているのに、皆さんの時間を奪うのはもうしわけなくて。」
「そのせいで、今のように嫌な思いをされることがわかっていてもですか?」
「私は結婚直前に、命までかけて守ろうとした相手を諦めさせられ、すぐにユリウス様に変えられました。
ユリウス様は幼い頃からの知り合いでしたし、とても素晴らしい方です。
なので、結婚が嫌なのではなく、少し時間が欲しいだけです。
私は立場上、政略結婚以外には選択肢などありません。
それでも、言われるままにするしかない自分が、時々嫌になるのです。
だからこそ、同じ思いをされるみなさんには、誠実にありたいと思いまして、罵倒されることも覚悟の上で、ここに来ました。
みなさん長い間、ユリウス様と結婚する希望を持たれて生きて来たのでしょうから。
突然私が入って来て、夢をぶち壊す。
嫌われて当然です。」
「確かに、私達はユリウス様と結婚したかったですけれど、セシーリア様のように婚約者にまだなれていない状態なので、私達の中から自分が選ばれるとも限らないわけでして、私は仕方がないと思います。」
「あなたは冷静ですね。
イボンヌ様とお呼びしても?」
「私はただの公爵令嬢なので、イボンヌとお呼びください。」
「では、イボンヌさん。
あなたとお友達になりたいわ。」
「ありがとうございます。
こちらこそ光栄です。
ところで、一つ伺ってもいいですか?」
「はい、もちろんです。」
「では、セシーリア様が元々結婚するのは、いつのご予定だったのですか?」
「花まつりの前でした。」
「そうですか、わかりました。」
「それが何か?」
「ユリウス様は花まつりが終わったら、
婚約者を決定すると話していました。
今まで、ユリウス様に女性がいたことはなく、どんなに周りの方々に結婚を進言されても決して頷かなかった。
なのに、突然でした。
あなたがメインデルト国に来てから、いかにあなたをユリウス様が大切にしているか、各方面から聞こえていました。
ユリウス様はあなたが結婚したら、自分も別の方と結婚しようと思っていらっしゃったのだと思います。
多分、ユリウス様はずっとあなたしか見ていなかったのです。
あなたが結婚したら、諦めようと。
でしたらもう、私達はユリウス様が幸せになることを願うしかありません。」
そう言って諦めの表情を見せたイボンヌは、初めて本心を見せたようだった。
そこに、視察という形でユリウスは向かうことになった。
セシーリアはメインデルト王国の形ばかりの代理人となっている。
実際はしっかりとした家臣達がいるので、何かをするわけではないけれど、代理人がいた方が家臣達が動き易いと説得されて、なっていた。
そんな時、お茶会の希望が令嬢達から上がっているとのことで、庭園で開催する。
サーナによると、この国の中心となる令嬢達だと。
親を含めた人間関係を頭に叩き込み、いざ開催すると、6人の令嬢達はバーンハルトの一件を知っているらしく、セシーリアに同情的だった。
だか、政略的理由でセシーリアがユリウスと結婚することになりそうだと伝えると、令嬢達はそれぞれ涙を流したり、顔が引き攣っていたり、不機嫌に退出したり、さまざまな反応を見せた。
それぞれがユリウスとの結婚を夢見ていたのだから、その反応は当然だし、決まっていることを内緒にして、令嬢達の若い大切な時間を無駄に奪いたくないという思いだった。
私も結婚をする直前に、今回のような展開になるとは夢にも思わなかった。
きっと彼女達にも、すぐに親達が新しい男性を紹介するのだろう。
そのためにも、わかっているのに引き伸ばすのではなく、彼女達に誠意をもって対応したかった。
今は理解されなくとも。
一人ずつ帰って行く中、最後に令嬢が一人だけ残った。
「セシーリア様、ご婚約おめでとうございます、でいいのでしょうか?」
「まだ、ユリウス様には待っていただいているところです。
でも、フェルミノ王が強く望んでいるので、内々には進んでいるようです。」
「では何故、今私達に教えてくれたのですか?」
「みなさんの時間を無駄にしたくないからです。
私の勝手で正式には発表していませんが、この決定は揺るぎないでしょう。
希望を持たれたまま、決まっているのに、皆さんの時間を奪うのはもうしわけなくて。」
「そのせいで、今のように嫌な思いをされることがわかっていてもですか?」
「私は結婚直前に、命までかけて守ろうとした相手を諦めさせられ、すぐにユリウス様に変えられました。
ユリウス様は幼い頃からの知り合いでしたし、とても素晴らしい方です。
なので、結婚が嫌なのではなく、少し時間が欲しいだけです。
私は立場上、政略結婚以外には選択肢などありません。
それでも、言われるままにするしかない自分が、時々嫌になるのです。
だからこそ、同じ思いをされるみなさんには、誠実にありたいと思いまして、罵倒されることも覚悟の上で、ここに来ました。
みなさん長い間、ユリウス様と結婚する希望を持たれて生きて来たのでしょうから。
突然私が入って来て、夢をぶち壊す。
嫌われて当然です。」
「確かに、私達はユリウス様と結婚したかったですけれど、セシーリア様のように婚約者にまだなれていない状態なので、私達の中から自分が選ばれるとも限らないわけでして、私は仕方がないと思います。」
「あなたは冷静ですね。
イボンヌ様とお呼びしても?」
「私はただの公爵令嬢なので、イボンヌとお呼びください。」
「では、イボンヌさん。
あなたとお友達になりたいわ。」
「ありがとうございます。
こちらこそ光栄です。
ところで、一つ伺ってもいいですか?」
「はい、もちろんです。」
「では、セシーリア様が元々結婚するのは、いつのご予定だったのですか?」
「花まつりの前でした。」
「そうですか、わかりました。」
「それが何か?」
「ユリウス様は花まつりが終わったら、
婚約者を決定すると話していました。
今まで、ユリウス様に女性がいたことはなく、どんなに周りの方々に結婚を進言されても決して頷かなかった。
なのに、突然でした。
あなたがメインデルト国に来てから、いかにあなたをユリウス様が大切にしているか、各方面から聞こえていました。
ユリウス様はあなたが結婚したら、自分も別の方と結婚しようと思っていらっしゃったのだと思います。
多分、ユリウス様はずっとあなたしか見ていなかったのです。
あなたが結婚したら、諦めようと。
でしたらもう、私達はユリウス様が幸せになることを願うしかありません。」
そう言って諦めの表情を見せたイボンヌは、初めて本心を見せたようだった。
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