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13.婚約
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ユリウスが不在の間、少しずつ、寂しさが募る。
いつの間にか、ユリウスがいるのが当たり前で、いないと急に一人ぼっちになったような気持ちで、気がつくと早く帰って来て欲しいと思っていた。
ユリウスがいれば、いつだって笑って、お茶を飲んだり、剣の稽古をしたり、私達は自然体でいられる。
逆に言えば、ユリウス以外には求められるあるべき姿を見せていた。
私達王族は、基本的には孤独なのだ。
分かり合える人は限られている。
ユリウスは、前王と王妃を流行り病で早くに無くし、一人でこの国を早くから治めている。
周りにワトス達がいたとしても、その肩に多くのものを背負っている。
それでも、一人で立ち続けていることを思うと、その思いを一緒に分かち合いたいと思う。
自分のことばかりだった私は、やっとユリウスを思いやる気持ちになった。
大分遅いけど、ユリウスが帰って来たら、結婚したいと自分から言おう。
それから3日経ち、ユリウスが帰って来た。
軍馬から降り立ったユリウスは疲れた表情をして、ワトス達と話していたが、セシーリアを見つけると笑顔を向ける。
「おかえり、ユリウス。」
「ただいま、セシーリア。
僕が来るのが、待ち遠しかったかい?」
ユリウスは茶化して笑う。
「ええ、とっても。」
そう言うと、ユリウスが真顔になり、
「嬉しいよ。」
と言って、そっと抱きしめる。
「ああ、セシーリアだ。
ずっとこうしたかった。
帰国がこんなに楽しみなのも、安らぐのも初めてだ。」
ユリウスは抱きしめたまま、セシーリアの肩に頭を埋め、離そうとしない。
「ユリウス、ワトス達が待っているみたいよ。」
「じゃあ、待たせておく。」
「ふふ、私がいたたまれないわ。」
「もう、いいじゃないか、セシーリアを補給してるんだ。
…。
ああ、わかったよ。」
そう言ってセシーリアを離すが、手は繋いだままワトス達と話しながら、執務室に向かう。
セシーリアは手を引かれたまま、ついていき、執務室のソファに並んで座る。
手を繋いだままなので、そのままぼんやりとユリウスを見ていたら、いつのまにか、二人きりになっていた。
「セシーリア、僕が留守の間、お茶会を開いたそうだね。
大丈夫だった?」
「思うところがあって、ユリウスとの結婚の話をしたわ。
みなさんがユリウスとの結婚を夢見ているのに、内緒にして貴重な時間を奪うのは違うと思って。
誰よりもその気持ちがわかるから。」
「そうか、セシーリアの判断で構わないけど、嫌な思いをしなかった?」
「大丈夫よ。
それどころか友達ができたわ。」
「その流れから、友達って想像がつかないけれど、君が嫌な思いをしてないんだったら、それでいいよ。」
「ユリウス、聞いて欲しいことがあるの。」
「何だい?」
「ユリウス、私と結婚してください。
あなたと生きていきたいです。」
「どうして?
何かあった?」
「ユリウスがいない間、私、寂しくて。
ユリウスと一緒にいたいって、思ったの。
大変なことも、二人で分け合っていきたいの。」
「ありがとう、セシーリア。
君もそう思ってくれるなんて、幸せ過ぎる。」
そう言って、再びセシーリアを抱きしめる。
「じゃあ、この後、教会で婚約しよう。
婚約誓約書はもうできてるから、神の前で署名しよう。」
「ユリウス、早い。」
「早くないよ。
僕はずっと待ってたんだから。」
そう言われ、用意された白いドレスに着替えると、この日のために用意された物だとわかる。
ほっそりと体の線に沿ったドレスはレースで、袖口や首を覆い、上品な仕上がりになっていた。
「これも、ユリウスが?」
「もちろん。
とても綺麗だよ。」
揃いのタキシードを着たユリウスは光り輝く王だった。
「もうこれ、結婚式でよくない?
待てないよ。」
「ふふ。
一国の王が、二人でひっそりと結婚しましたなんて、聞いたことがないわ。」
お互いに神の前で署名して、二人は婚約した。
いつの間にか、ユリウスがいるのが当たり前で、いないと急に一人ぼっちになったような気持ちで、気がつくと早く帰って来て欲しいと思っていた。
ユリウスがいれば、いつだって笑って、お茶を飲んだり、剣の稽古をしたり、私達は自然体でいられる。
逆に言えば、ユリウス以外には求められるあるべき姿を見せていた。
私達王族は、基本的には孤独なのだ。
分かり合える人は限られている。
ユリウスは、前王と王妃を流行り病で早くに無くし、一人でこの国を早くから治めている。
周りにワトス達がいたとしても、その肩に多くのものを背負っている。
それでも、一人で立ち続けていることを思うと、その思いを一緒に分かち合いたいと思う。
自分のことばかりだった私は、やっとユリウスを思いやる気持ちになった。
大分遅いけど、ユリウスが帰って来たら、結婚したいと自分から言おう。
それから3日経ち、ユリウスが帰って来た。
軍馬から降り立ったユリウスは疲れた表情をして、ワトス達と話していたが、セシーリアを見つけると笑顔を向ける。
「おかえり、ユリウス。」
「ただいま、セシーリア。
僕が来るのが、待ち遠しかったかい?」
ユリウスは茶化して笑う。
「ええ、とっても。」
そう言うと、ユリウスが真顔になり、
「嬉しいよ。」
と言って、そっと抱きしめる。
「ああ、セシーリアだ。
ずっとこうしたかった。
帰国がこんなに楽しみなのも、安らぐのも初めてだ。」
ユリウスは抱きしめたまま、セシーリアの肩に頭を埋め、離そうとしない。
「ユリウス、ワトス達が待っているみたいよ。」
「じゃあ、待たせておく。」
「ふふ、私がいたたまれないわ。」
「もう、いいじゃないか、セシーリアを補給してるんだ。
…。
ああ、わかったよ。」
そう言ってセシーリアを離すが、手は繋いだままワトス達と話しながら、執務室に向かう。
セシーリアは手を引かれたまま、ついていき、執務室のソファに並んで座る。
手を繋いだままなので、そのままぼんやりとユリウスを見ていたら、いつのまにか、二人きりになっていた。
「セシーリア、僕が留守の間、お茶会を開いたそうだね。
大丈夫だった?」
「思うところがあって、ユリウスとの結婚の話をしたわ。
みなさんがユリウスとの結婚を夢見ているのに、内緒にして貴重な時間を奪うのは違うと思って。
誰よりもその気持ちがわかるから。」
「そうか、セシーリアの判断で構わないけど、嫌な思いをしなかった?」
「大丈夫よ。
それどころか友達ができたわ。」
「その流れから、友達って想像がつかないけれど、君が嫌な思いをしてないんだったら、それでいいよ。」
「ユリウス、聞いて欲しいことがあるの。」
「何だい?」
「ユリウス、私と結婚してください。
あなたと生きていきたいです。」
「どうして?
何かあった?」
「ユリウスがいない間、私、寂しくて。
ユリウスと一緒にいたいって、思ったの。
大変なことも、二人で分け合っていきたいの。」
「ありがとう、セシーリア。
君もそう思ってくれるなんて、幸せ過ぎる。」
そう言って、再びセシーリアを抱きしめる。
「じゃあ、この後、教会で婚約しよう。
婚約誓約書はもうできてるから、神の前で署名しよう。」
「ユリウス、早い。」
「早くないよ。
僕はずっと待ってたんだから。」
そう言われ、用意された白いドレスに着替えると、この日のために用意された物だとわかる。
ほっそりと体の線に沿ったドレスはレースで、袖口や首を覆い、上品な仕上がりになっていた。
「これも、ユリウスが?」
「もちろん。
とても綺麗だよ。」
揃いのタキシードを着たユリウスは光り輝く王だった。
「もうこれ、結婚式でよくない?
待てないよ。」
「ふふ。
一国の王が、二人でひっそりと結婚しましたなんて、聞いたことがないわ。」
お互いに神の前で署名して、二人は婚約した。
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