16 / 20
16.君を取り戻す
しおりを挟む
「申し上げます。
セシーリア様が王宮に戻る途中で、賊に襲われ、連れ去られたとのことです。」
執務室に慌てたワトスが駆け込んで来た。
「何だって?
お茶会に行くには、充分な数の近衛がついている筈だ。」
ユリウスの表情は一気に硬いものへと変わる。
「はい、5人もの騎士がついておりました。」
「それでも、連れ去られたと?」
「はい、20人以上の賊で、もはや軍隊のような手練れだったそうです。」
「何てことだ。
今すぐ軍を集めろ。
捜索に向かう。」
ユリウスは先頭になって、軍馬にまたがり、セシーリアが攫われたという場所に急いだ。
賊は何が目的だ、内乱か?
身代金目的の誘拐か?
それとも、セシーリア個人に向けたものか。
どの場合も最悪だ。
攫われた場所に行ってみると左右を木々に囲まれた一本道で逃げ場がなく、襲われたとしても人目につかない選び抜かれた道だった。
「これは、通り魔などではなくて、セシーリアを絶対に攫うという強い思いが感じられる。
しかも、軍隊規模。
それほどを動かせる人物。」
「この方向に行ったとしたら、またしても、あの森でしょうか?」
「ああ、あの森だな。
行ってみるしかないな。」
その道の先は、かつてセシーリアが見つかった鬱蒼とした森のある方角だった。
捜索隊は、全く手掛かりがない以上、かつて誘拐に使われた場所などをしらみつぶしに、それぞれ少人数で分散して、捜索にあたるしかなかった。
「申し上げます。
森の手前の村で、怪しい一団を見たと報告がありました。」
「わかった。
その村に向かおう。」
なるほど。
大人数だとセシーリアを確実に攫うことはできても、多さゆえ目立ってしまう。
この村では、森に行くのに道を通る人は多いが、ほとんど立ち寄る者はいない。
だから、見知らぬ一団が村の中にいると村の人々の記憶に残ってしまう。
このことを知らない人物、攫うことだけが目的で知られても一向に構わないと思っている人物。
他国の者か?
そして、多くの手慣れた者を集めるためには財力が必要である。
それとも、人を動かすカリスマ性があるのか?
旧西国の残党?
いや、壊滅させているから、こんな短時間で集めるのは無理がある。
情報が集まらないと、捜索を絞れずに、どんどん時間が過ぎて行く。
セシーリアどこにいるんだ?
頼む。
無事でいてくれ。
「申し上げます。
森の入り口の物置小屋に、最近人が出入りしていたが、今日急に一切いなくなったとのことです。」
「よし、その物置小屋に行ってみよう。」
セシーリアを連れ去った賊と関係あるのか?
とりあえず行ってみるしかない。
その小屋について、中を覗くが、人が最近まで使った形跡はあるが、セシーリアに繋がりそうな物は何も見当たらない。
「申し上げます。
バーンハルト王子率いる一団が、旧マイルズ国の砦に現れ、フェルミノ国の兵士が入国を許可か、足止めかの判断を思いあぐねているうちに、静止を振り切り王都を進み、すでに王宮に入ったそうです。」
「バーンハルトが現れた?
生きていたのか。」
「現在はフェルミノ国の一部になっているのですが、バーンハルト王子はセシーリア王女を伴いつつ、旧マイルズ国の制服を着た軍隊と共に現れたそうで、王族以外には静止は不可能だったそうです。」
「セシーリアが一緒にいただって?
すぐに向かう。」
攫ったのは、バーンハルトだったのだとしたら、何故普通に名乗り出ずに攫うのか?
正攻法では無理だと思っているからか?
ユリウスは旧マイルズ王国へ急いだ。
セシーリア様が王宮に戻る途中で、賊に襲われ、連れ去られたとのことです。」
執務室に慌てたワトスが駆け込んで来た。
「何だって?
お茶会に行くには、充分な数の近衛がついている筈だ。」
ユリウスの表情は一気に硬いものへと変わる。
「はい、5人もの騎士がついておりました。」
「それでも、連れ去られたと?」
「はい、20人以上の賊で、もはや軍隊のような手練れだったそうです。」
「何てことだ。
今すぐ軍を集めろ。
捜索に向かう。」
ユリウスは先頭になって、軍馬にまたがり、セシーリアが攫われたという場所に急いだ。
賊は何が目的だ、内乱か?
身代金目的の誘拐か?
それとも、セシーリア個人に向けたものか。
どの場合も最悪だ。
攫われた場所に行ってみると左右を木々に囲まれた一本道で逃げ場がなく、襲われたとしても人目につかない選び抜かれた道だった。
「これは、通り魔などではなくて、セシーリアを絶対に攫うという強い思いが感じられる。
しかも、軍隊規模。
それほどを動かせる人物。」
「この方向に行ったとしたら、またしても、あの森でしょうか?」
「ああ、あの森だな。
行ってみるしかないな。」
その道の先は、かつてセシーリアが見つかった鬱蒼とした森のある方角だった。
捜索隊は、全く手掛かりがない以上、かつて誘拐に使われた場所などをしらみつぶしに、それぞれ少人数で分散して、捜索にあたるしかなかった。
「申し上げます。
森の手前の村で、怪しい一団を見たと報告がありました。」
「わかった。
その村に向かおう。」
なるほど。
大人数だとセシーリアを確実に攫うことはできても、多さゆえ目立ってしまう。
この村では、森に行くのに道を通る人は多いが、ほとんど立ち寄る者はいない。
だから、見知らぬ一団が村の中にいると村の人々の記憶に残ってしまう。
このことを知らない人物、攫うことだけが目的で知られても一向に構わないと思っている人物。
他国の者か?
そして、多くの手慣れた者を集めるためには財力が必要である。
それとも、人を動かすカリスマ性があるのか?
旧西国の残党?
いや、壊滅させているから、こんな短時間で集めるのは無理がある。
情報が集まらないと、捜索を絞れずに、どんどん時間が過ぎて行く。
セシーリアどこにいるんだ?
頼む。
無事でいてくれ。
「申し上げます。
森の入り口の物置小屋に、最近人が出入りしていたが、今日急に一切いなくなったとのことです。」
「よし、その物置小屋に行ってみよう。」
セシーリアを連れ去った賊と関係あるのか?
とりあえず行ってみるしかない。
その小屋について、中を覗くが、人が最近まで使った形跡はあるが、セシーリアに繋がりそうな物は何も見当たらない。
「申し上げます。
バーンハルト王子率いる一団が、旧マイルズ国の砦に現れ、フェルミノ国の兵士が入国を許可か、足止めかの判断を思いあぐねているうちに、静止を振り切り王都を進み、すでに王宮に入ったそうです。」
「バーンハルトが現れた?
生きていたのか。」
「現在はフェルミノ国の一部になっているのですが、バーンハルト王子はセシーリア王女を伴いつつ、旧マイルズ国の制服を着た軍隊と共に現れたそうで、王族以外には静止は不可能だったそうです。」
「セシーリアが一緒にいただって?
すぐに向かう。」
攫ったのは、バーンハルトだったのだとしたら、何故普通に名乗り出ずに攫うのか?
正攻法では無理だと思っているからか?
ユリウスは旧マイルズ王国へ急いだ。
68
あなたにおすすめの小説
婚約者が駆け落ちをした
四折 柊
恋愛
レナーテとリュークは二か月後に結婚式を挙げるはずだった。ところが二人の結婚式を一番楽しみにしていたリュークの祖父エフベルト様が亡くなったことで、状況が変わってしまう。リュークの父カレル様が爵位を継ぐと結婚を白紙にしてしまったのだ。どうして白紙に? エフベルト様の喪が明けるまでの延期ではなくて? リュークに会って彼の気持ちを確かめたい。ところがそれ以降レナーテはリュークと会えなくなってしまった。二人の運命は……。
謹んで婚約者候補を辞退いたします
四折 柊
恋愛
公爵令嬢ブリジットは王太子ヴィンセントの婚約者候補の三人いるうちの一人だ。すでに他の二人はお試し期間を経て婚約者候補を辞退している。ヴィンセントは完璧主義で頭が古いタイプなので一緒になれば気苦労が多そうで将来を考えられないからだそうだ。ブリジットは彼と親しくなるための努力をしたが報われず婚約者候補を辞退した。ところがその後ヴィンセントが声をかけて来るようになって……。(えっ?今になって?)傲慢不遜な王太子と実は心の中では口の悪い公爵令嬢のくっつかないお話。全3話。暇つぶしに流し読んで頂ければ幸いです。
あの、初夜の延期はできますか?
木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」
私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。
結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。
けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。
「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」
なぜこの人私に求婚したのだろう。
困惑と悲しみを隠し尋ねる。
婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。
関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。
ボツネタ供養の短編です。
十話程度で終わります。
二人が一緒にいる理由
四折 柊
恋愛
キャサリンはヴィクターが好き。だけど私たちは恋人ではない。いわゆる腐れ縁で一緒に過ごしてきた。でもそれも終わる。学園を卒業すればお互いに婚約者を探すことになるから。そうなれば今と同じ気安い関係ではいられなくなるだろう。「それは嫌」キャサリンは勇気を出して想いを告げようと決心した。全4話。
【完結】義妹と婚約者どちらを取るのですか?
里音
恋愛
私はどこにでもいる中堅の伯爵令嬢アリシア・モンマルタン。どこにでもあるような隣の領地の同じく伯爵家、といってもうちよりも少し格が上のトリスタン・ドクトールと幼い頃に婚約していた。
ドクトール伯爵は2年前に奥様を亡くし、連れ子と共に後妻がいる。
その連れ子はトリスタンの1つ下になるアマンダ。
トリスタンはなかなかの美貌でアマンダはトリスタンに執着している。そしてそれを隠そうともしない。
学園に入り1年は何も問題がなかったが、今年アマンダが学園に入学してきて事態は一変した。
全てから捨てられた伯爵令嬢は。
毒島醜女
恋愛
姉ルヴィが「あんたの婚約者、寝取ったから!」と職場に押し込んできたユークレース・エーデルシュタイン。
更に職場のお局には強引にクビを言い渡されてしまう。
結婚する気がなかったとは言え、これからどうすればいいのかと途方に暮れる彼女の前に帝国人の迷子の子供が現れる。
彼を助けたことで、薄幸なユークレースの人生は大きく変わり始める。
通常の王国語は「」
帝国語=外国語は『』
侯爵令嬢とその婚約者のありきたりな日常
四折 柊
恋愛
素敵な婚約者に相応しくありたいと一生懸命な侯爵令嬢アンネリーゼと、アンネリーゼを溺愛する眉目秀麗な公爵子息ジークハルトのお話です。アンネリーゼが彼に思いを寄せる令嬢を無自覚に撃退?したりしなかったり……の予定です。視点が頻繁に変わります。ちょっとシリアス入りますがハッピーエンドです。全18話。(誤字脱字が多くて申し訳ございません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる