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5.欲しかったもの
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トマトソースを売り、お金を得ることができているノアナとカリーヌは、マーシャを誘って、休みの日についに気になっていた屋台の飴を買ってみることにした。
「すみません。
三つください。」
三人は、飴を食べてみる。
「美味しい。」
三人は瞬く間に笑顔になる。
その飴は、色々な色が選べ、形も大きく、生まれて初めて食べた味は、今までの中でダントツに美味しい。
「あー、幸せ。」
笑顔の三人は、明日からも働いてまたこれを買って食べようと心に誓うのであった。
「ねぇマーシャ、私達はソースに使う瓶を買って来るね。」
家まで荷台を引っ張って帰った後、二人はまた街に戻って行った。
マーシャは二人を見送り、二人が来てから初めての夕食作りと掃除に取り掛かる。
二人が来てからと言うもの、食事作りも掃除もいつも二人がさっとやってしまっていて、マーシャの出番はなかった。
二人は帰って来て、初めてのマーシャの料理を見て喜ぶ。
「えー、今日はマーシャの料理を食べられるのね。」
「いつも二人に作ってもらっているから、たまには私も作ってみたんだよ。
食べてみて。」
「ありがとう。
マーシャ。」
二人はマーシャの作った野菜料理を、美味しい美味しいと喜んで食べる。
二人にとって自分達以外の人が作る料理は、初めてなのだ。
味付けも全然違うし、何やら酸っぱい料理もある。
二人は食べ終わると、
「マーシャ、これ二人からなの。」
と言って、包みを渡す。
「何だい?
開けてもいいかい?」
「うん。」
マーシャが包みを開けると、そこにはショールが入っていた。
「これを私に?」
「うん、私達自由になるお金ができたら、マーシャに何かお礼の物を買いたいねって、二人で言っていたの。」
二人は不安そうにマーシャを見る。
「ありがとう。」
マーシャは自分は何もしてないのに、二人は知恵を絞って、働いて得たお金でプレゼントしてくれたことに、驚きと嬉しさと申し訳なさと色々な思いがいっぱいになる。
感謝しているのは、こっちなのに。
「こんな立派なものは、私にはもったいないけどありがとうね。
大切に使わせてもらうよ。」
そう言うと二人は、嬉しそうに顔を見合わせて笑う。
二人にとっても自分達が作ったお金で、誰かにプレゼントすることは、初めてのことなのでとても嬉しかった。
「私達はマーシャと出会えず、この野菜がなかったら、何も作れなかったわ。
だからマーシャには、とても感謝しているの。
これからもよろしくね。」
そう言って笑顔になる二人を見て、マーシャは、感謝しているのはこっちなのにと思う。
マーシャが、人からプレゼントをもらったのは、息子以来である。
いつまでも、この暮らしが続いて欲しいとマーシャは思うのだった。
それからしばらくすると、ノアナから見てカリーヌとスペンサーさんは、何となく仲良くしているわけじゃないのに、二人の雰囲気が違っていた。
カリーヌが、
「ノアナ、スペンサーのお店のお肉に、マーシャの野菜を挟んで売ろうと思って。
肉だけじゃなく間に野菜がある方が良い人もいるかなって、スペンサーと話してたの。
それでやってみたら、結構売れたから、今度からそれも売るわ。
あと、お肉の味付けにトマトソースのも出してみたらそっちもいけたから、トマトソースももっといるわ。
仕込みよろしくね。」
と話す。
私が野菜を洗って、トマトソースを作っている間に、カリーヌは色々と売り方について試してみたようだった。
スペンサーさんの店の最初につけた網の境界線は、もうなくなっている。
「それいいね。
私も忙しくなるな。」
私はそう言って、野菜の仕込みのために店のそばを離れて、野菜を持って水場へ向かう。
でも最近いつも野菜を洗ってばっかりだから、手が荒れるなぁ。
そう言えば、どうして野菜の仕込みは私ばっかりで、カリーヌは店番だけになったんだっけ?
たまには、カリーヌに代わってもらおうかなぁ。
「カリーヌ、私も店番やりたい。
手もカサカサだし。」
私の手のひらは赤く、硬くなっている。
それを見てもカリーヌは、
「ダメよ。
手のクリームを買ってあげるから。」
と頑なに店番をやろうとする。
「何か変だよ、カリーヌ。」
「ごめん私、スペンサーと付き合っているの。
一緒にいたくてつい。」
「そうなの?
すごいね、おめでとう。
だったらこのまま私は、作る方でいいよ。」
私は、カリーヌとスペンサーさんの付き合いを笑顔で祝福する。
「ノアナ、あんたいいやつすぎる。
私がすごくいやなやつみたいじゃない。」
「そんなことないよ。
スペンサーさんと一緒にいたい気持ちがわかるから。」
「えっ、ノアナもスペンサーのこと好きなの?」
「違うよ、私が好きなのはオリオンよ。
会えなくなった今でも、オリオンを思う私の気持ちは変わらないわ。
もう会えないけど。」
「ノアナ、なんて切ないの。」
「うん、仕方ないのよ。
オリオンはどこかの貴族なんだろうからもう会えないし、私が好きでいてもしょうがないのはわかっているんだけど、私の全てがオリオンが教えてくれたことを基本にしているの。
だから諦めて忘れようとしても、気がついたらオリオンのことを思っていて。
ああこれならオリオンのことをいつまでも好きなのは、しょうがないって思うの。
だって、トマトソース作りからして、元々オリオンの作ったものだから。
何をしてもオリオンを思い出さないでいるなんて、無理だわ。」
私はオリオンを思い出して、悲しく微笑んだ。
その様子を見たカリーヌは、
「でも、私はオリオンには感謝しているけれど、スペンサーと話している時の方が楽しいわ。」
「そっか、じゃあカリーヌにもオリオンの思い出があるのにオリオンを好きじゃないってことは、私はオリオンの思い出があるから、好きなわけじゃないのね。」
「そう言うことね。」
そっか、私は思い出だけじゃなくて、オリオンと過ごすこれからを思っている。
オリオンと一緒に飴を食べたいとか、花畑を散歩したいとか、何をしても何処に行っても考えてしまう。
私の思いは全然過去を振り返っているだけではない。
もう会えないのに、願いばかりが増えていく。
オリオン、今あなたはどこにいて、誰を想っているの?
そして、どうしてこの想いは過去にならないのだろう。
カリーヌのように関わることのできる男性を好きになれたら、幸せになれるのに。
「ノアナ、それにしても野菜の仕込みは私もやるから、ごめんね。
手のクリームも買おう。」
「うん。」
二人は笑顔で頷くのだった。
「すみません。
三つください。」
三人は、飴を食べてみる。
「美味しい。」
三人は瞬く間に笑顔になる。
その飴は、色々な色が選べ、形も大きく、生まれて初めて食べた味は、今までの中でダントツに美味しい。
「あー、幸せ。」
笑顔の三人は、明日からも働いてまたこれを買って食べようと心に誓うのであった。
「ねぇマーシャ、私達はソースに使う瓶を買って来るね。」
家まで荷台を引っ張って帰った後、二人はまた街に戻って行った。
マーシャは二人を見送り、二人が来てから初めての夕食作りと掃除に取り掛かる。
二人が来てからと言うもの、食事作りも掃除もいつも二人がさっとやってしまっていて、マーシャの出番はなかった。
二人は帰って来て、初めてのマーシャの料理を見て喜ぶ。
「えー、今日はマーシャの料理を食べられるのね。」
「いつも二人に作ってもらっているから、たまには私も作ってみたんだよ。
食べてみて。」
「ありがとう。
マーシャ。」
二人はマーシャの作った野菜料理を、美味しい美味しいと喜んで食べる。
二人にとって自分達以外の人が作る料理は、初めてなのだ。
味付けも全然違うし、何やら酸っぱい料理もある。
二人は食べ終わると、
「マーシャ、これ二人からなの。」
と言って、包みを渡す。
「何だい?
開けてもいいかい?」
「うん。」
マーシャが包みを開けると、そこにはショールが入っていた。
「これを私に?」
「うん、私達自由になるお金ができたら、マーシャに何かお礼の物を買いたいねって、二人で言っていたの。」
二人は不安そうにマーシャを見る。
「ありがとう。」
マーシャは自分は何もしてないのに、二人は知恵を絞って、働いて得たお金でプレゼントしてくれたことに、驚きと嬉しさと申し訳なさと色々な思いがいっぱいになる。
感謝しているのは、こっちなのに。
「こんな立派なものは、私にはもったいないけどありがとうね。
大切に使わせてもらうよ。」
そう言うと二人は、嬉しそうに顔を見合わせて笑う。
二人にとっても自分達が作ったお金で、誰かにプレゼントすることは、初めてのことなのでとても嬉しかった。
「私達はマーシャと出会えず、この野菜がなかったら、何も作れなかったわ。
だからマーシャには、とても感謝しているの。
これからもよろしくね。」
そう言って笑顔になる二人を見て、マーシャは、感謝しているのはこっちなのにと思う。
マーシャが、人からプレゼントをもらったのは、息子以来である。
いつまでも、この暮らしが続いて欲しいとマーシャは思うのだった。
それからしばらくすると、ノアナから見てカリーヌとスペンサーさんは、何となく仲良くしているわけじゃないのに、二人の雰囲気が違っていた。
カリーヌが、
「ノアナ、スペンサーのお店のお肉に、マーシャの野菜を挟んで売ろうと思って。
肉だけじゃなく間に野菜がある方が良い人もいるかなって、スペンサーと話してたの。
それでやってみたら、結構売れたから、今度からそれも売るわ。
あと、お肉の味付けにトマトソースのも出してみたらそっちもいけたから、トマトソースももっといるわ。
仕込みよろしくね。」
と話す。
私が野菜を洗って、トマトソースを作っている間に、カリーヌは色々と売り方について試してみたようだった。
スペンサーさんの店の最初につけた網の境界線は、もうなくなっている。
「それいいね。
私も忙しくなるな。」
私はそう言って、野菜の仕込みのために店のそばを離れて、野菜を持って水場へ向かう。
でも最近いつも野菜を洗ってばっかりだから、手が荒れるなぁ。
そう言えば、どうして野菜の仕込みは私ばっかりで、カリーヌは店番だけになったんだっけ?
たまには、カリーヌに代わってもらおうかなぁ。
「カリーヌ、私も店番やりたい。
手もカサカサだし。」
私の手のひらは赤く、硬くなっている。
それを見てもカリーヌは、
「ダメよ。
手のクリームを買ってあげるから。」
と頑なに店番をやろうとする。
「何か変だよ、カリーヌ。」
「ごめん私、スペンサーと付き合っているの。
一緒にいたくてつい。」
「そうなの?
すごいね、おめでとう。
だったらこのまま私は、作る方でいいよ。」
私は、カリーヌとスペンサーさんの付き合いを笑顔で祝福する。
「ノアナ、あんたいいやつすぎる。
私がすごくいやなやつみたいじゃない。」
「そんなことないよ。
スペンサーさんと一緒にいたい気持ちがわかるから。」
「えっ、ノアナもスペンサーのこと好きなの?」
「違うよ、私が好きなのはオリオンよ。
会えなくなった今でも、オリオンを思う私の気持ちは変わらないわ。
もう会えないけど。」
「ノアナ、なんて切ないの。」
「うん、仕方ないのよ。
オリオンはどこかの貴族なんだろうからもう会えないし、私が好きでいてもしょうがないのはわかっているんだけど、私の全てがオリオンが教えてくれたことを基本にしているの。
だから諦めて忘れようとしても、気がついたらオリオンのことを思っていて。
ああこれならオリオンのことをいつまでも好きなのは、しょうがないって思うの。
だって、トマトソース作りからして、元々オリオンの作ったものだから。
何をしてもオリオンを思い出さないでいるなんて、無理だわ。」
私はオリオンを思い出して、悲しく微笑んだ。
その様子を見たカリーヌは、
「でも、私はオリオンには感謝しているけれど、スペンサーと話している時の方が楽しいわ。」
「そっか、じゃあカリーヌにもオリオンの思い出があるのにオリオンを好きじゃないってことは、私はオリオンの思い出があるから、好きなわけじゃないのね。」
「そう言うことね。」
そっか、私は思い出だけじゃなくて、オリオンと過ごすこれからを思っている。
オリオンと一緒に飴を食べたいとか、花畑を散歩したいとか、何をしても何処に行っても考えてしまう。
私の思いは全然過去を振り返っているだけではない。
もう会えないのに、願いばかりが増えていく。
オリオン、今あなたはどこにいて、誰を想っているの?
そして、どうしてこの想いは過去にならないのだろう。
カリーヌのように関わることのできる男性を好きになれたら、幸せになれるのに。
「ノアナ、それにしても野菜の仕込みは私もやるから、ごめんね。
手のクリームも買おう。」
「うん。」
二人は笑顔で頷くのだった。
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