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6.オリオンの思い
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その後、オリオンは王国のルイス王子を支える一番の側近になっており、王宮の王子の居室にいた。
本日の執務もすべて終わり、ルイス王子とオリオンはソファに座り、ワインを飲みながらゆっくりと寛いでいる。
「オリオン、そろそろ誰か令嬢と婚約しない?
マリエッタ嬢なんて、オリオンと婚約したくて、ウズウズしてるじゃないか。
あれなら、すぐに婚約打診の書状が届くな。」
「私はどなたとも、婚約するつもりはありません。
ルイス様を支えるだけで、忙しいのです。」
オリオンは実際、ルイス王子が次期王になると決まると、体制を整えるために昼夜問わず忙しかった。
だとしても侯爵家の当主として、誰か令嬢と名ばかりの契約結婚をすることは必要なことだった。
それでもオリオンは、契約結婚をしなければならないと押しつけられたら、抱えているもの全て投げ出したいと本気で思っていた。
僕を探して養護院に迎えに来てくれたヒリス侯爵には大変世話になったし、恩を充分に返したい。
けれども僕はマルロを養子にして、侯爵家を継いでもらって、ノアナを探す旅に出たい。
その途中で僕に何かあったとしても、それは自分の運命だと諦めることもできるだろう。
何故ならこのままここにいて、ノアナに再び出会うことは皆無だと思うから。
だったらもう動こうかと真剣に思う。
ルイス王子は、オリオンにとってこの話題は禁句なのを忘れて、酒の勢いでつい迂闊に言ってしまった自分を呪う。
「あーやっぱり、令嬢と付き合って私のことを疎かにされたら困るから、オリオンはこのままでいいよ。」
「そうですか。
王子の許しがあるなのら、結婚しなくても許されますね。」
オリオンがこの話題の最後に、いつも遠い目をして、ふらっといなくなりそうな雰囲気を出すことを王子は気づいていた。
オリオンの眼は、いつもここに心がないことを示している。
だからこそ公正で、欲のないオリオンが信用できるし、安心もできる。
オリオン以外の周りの者は、権力を使ってルイスを失脚させようとして来たり、命を狙って来たことだって、一度や二度ではない。
自分にはオリオンが必要だ。
「好きな女性が見つかったら、応援してやるつもりもあるから、そんな人が出来たら私に言うといい。」
「もしいたらですね。
そうなるといいのですが。
私がここを離れて、好きな女性を自分で探しに行くのはどうでしょう?」
「いや、それはダメだ。」
「そうですよね。」
だからこそ王子は、オリオンがずっと探している女性を、影を使ってでも探し出した方が良いのか、逆に波をたてずにそっとしておいた方がいいのか、判断がつかなかった。
その女性が見つかったら、きっとオリオンは今と変わってしまう。
そのことに、ルイス王子は気づいていた。
「スペンサーと私は結婚しようと思うの。」
それからしばらくしたある夜、カリーヌは宣言した。
「えー、おめでとう。」
「それで、スペンサーと一緒に暮らそうと思って。
だから、この家を出て行くわ。
今まで通り畑仕事もするし、お店のこともやる。
ただ仕事が終わったら、彼の元に帰るわ。」
「うん、素敵だね。
好きな人と一緒に暮らすなんて。」
「こんな日が来るとはねぇ。
でも、もうお二人さんもいい年頃だからねぇ。」
「うん、ありがとう。
でも、これからも私達は変わらないから。」
「うん、いいんだよ。
変わっても。
スペンサーさんを大切にね。」
「ありがとう。
私ばっかり幸せになって、ごめんね。」
「そんなこと気にしないで。
私は勝手にオリオンを思っているだけだから。
あっマーシャ、私は結婚できそうにもないから、ずっとここにいるけどごめんね。」
「いいんだよ。
畑しかないけど、一緒に住んでいていいからね。
カリーヌも何かあったら、いつでも帰って来ていいよ。」
「マーシャ、ありがとう。」
三人は抱き合って、変わるものがあっても変わらなくてもお互いが大切だと思い合った。
その後、カリーヌは結婚式をスペンサーとあげると、数年後には子供を授かり、ピエラと言う名前の一児の母のなっていた。
スペンサーの両親は王都におり、子供を連れて王都に行くのに、ノアナに同行を願っている。
「お願いノアナ、一緒に来て。
夜はスペンサーと二人だけでご飯を食べて、素敵な宿に泊まりたいの。
その間、ピエラの面倒を見て。」
「えー、ピエラと三人じゃダメなの?」
「私達、新婚旅行にも行ってなかったから、二人きりで一日ぐらいは熱い夜を過ごしたいのよ。
お願い。」
「わかったわ。
相変わらず二人は仲がいいのね。
私はピエラと二人で、宿に泊まって一晩過ごせばいいのね。」
「嬉しい。
ノアナなら、そう言ってくれると思ってた。」
「もう、ちゃっかりしてるんだから。」
「じゃあ、三日後出発よ。」
そうしてカリーヌ家族とノアナは、王都に旅立った。
本日の執務もすべて終わり、ルイス王子とオリオンはソファに座り、ワインを飲みながらゆっくりと寛いでいる。
「オリオン、そろそろ誰か令嬢と婚約しない?
マリエッタ嬢なんて、オリオンと婚約したくて、ウズウズしてるじゃないか。
あれなら、すぐに婚約打診の書状が届くな。」
「私はどなたとも、婚約するつもりはありません。
ルイス様を支えるだけで、忙しいのです。」
オリオンは実際、ルイス王子が次期王になると決まると、体制を整えるために昼夜問わず忙しかった。
だとしても侯爵家の当主として、誰か令嬢と名ばかりの契約結婚をすることは必要なことだった。
それでもオリオンは、契約結婚をしなければならないと押しつけられたら、抱えているもの全て投げ出したいと本気で思っていた。
僕を探して養護院に迎えに来てくれたヒリス侯爵には大変世話になったし、恩を充分に返したい。
けれども僕はマルロを養子にして、侯爵家を継いでもらって、ノアナを探す旅に出たい。
その途中で僕に何かあったとしても、それは自分の運命だと諦めることもできるだろう。
何故ならこのままここにいて、ノアナに再び出会うことは皆無だと思うから。
だったらもう動こうかと真剣に思う。
ルイス王子は、オリオンにとってこの話題は禁句なのを忘れて、酒の勢いでつい迂闊に言ってしまった自分を呪う。
「あーやっぱり、令嬢と付き合って私のことを疎かにされたら困るから、オリオンはこのままでいいよ。」
「そうですか。
王子の許しがあるなのら、結婚しなくても許されますね。」
オリオンがこの話題の最後に、いつも遠い目をして、ふらっといなくなりそうな雰囲気を出すことを王子は気づいていた。
オリオンの眼は、いつもここに心がないことを示している。
だからこそ公正で、欲のないオリオンが信用できるし、安心もできる。
オリオン以外の周りの者は、権力を使ってルイスを失脚させようとして来たり、命を狙って来たことだって、一度や二度ではない。
自分にはオリオンが必要だ。
「好きな女性が見つかったら、応援してやるつもりもあるから、そんな人が出来たら私に言うといい。」
「もしいたらですね。
そうなるといいのですが。
私がここを離れて、好きな女性を自分で探しに行くのはどうでしょう?」
「いや、それはダメだ。」
「そうですよね。」
だからこそ王子は、オリオンがずっと探している女性を、影を使ってでも探し出した方が良いのか、逆に波をたてずにそっとしておいた方がいいのか、判断がつかなかった。
その女性が見つかったら、きっとオリオンは今と変わってしまう。
そのことに、ルイス王子は気づいていた。
「スペンサーと私は結婚しようと思うの。」
それからしばらくしたある夜、カリーヌは宣言した。
「えー、おめでとう。」
「それで、スペンサーと一緒に暮らそうと思って。
だから、この家を出て行くわ。
今まで通り畑仕事もするし、お店のこともやる。
ただ仕事が終わったら、彼の元に帰るわ。」
「うん、素敵だね。
好きな人と一緒に暮らすなんて。」
「こんな日が来るとはねぇ。
でも、もうお二人さんもいい年頃だからねぇ。」
「うん、ありがとう。
でも、これからも私達は変わらないから。」
「うん、いいんだよ。
変わっても。
スペンサーさんを大切にね。」
「ありがとう。
私ばっかり幸せになって、ごめんね。」
「そんなこと気にしないで。
私は勝手にオリオンを思っているだけだから。
あっマーシャ、私は結婚できそうにもないから、ずっとここにいるけどごめんね。」
「いいんだよ。
畑しかないけど、一緒に住んでいていいからね。
カリーヌも何かあったら、いつでも帰って来ていいよ。」
「マーシャ、ありがとう。」
三人は抱き合って、変わるものがあっても変わらなくてもお互いが大切だと思い合った。
その後、カリーヌは結婚式をスペンサーとあげると、数年後には子供を授かり、ピエラと言う名前の一児の母のなっていた。
スペンサーの両親は王都におり、子供を連れて王都に行くのに、ノアナに同行を願っている。
「お願いノアナ、一緒に来て。
夜はスペンサーと二人だけでご飯を食べて、素敵な宿に泊まりたいの。
その間、ピエラの面倒を見て。」
「えー、ピエラと三人じゃダメなの?」
「私達、新婚旅行にも行ってなかったから、二人きりで一日ぐらいは熱い夜を過ごしたいのよ。
お願い。」
「わかったわ。
相変わらず二人は仲がいいのね。
私はピエラと二人で、宿に泊まって一晩過ごせばいいのね。」
「嬉しい。
ノアナなら、そう言ってくれると思ってた。」
「もう、ちゃっかりしてるんだから。」
「じゃあ、三日後出発よ。」
そうしてカリーヌ家族とノアナは、王都に旅立った。
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