5 / 22
5.本を読む
しおりを挟む
ある日、私はタイラー様の横で、自分の本を読み、タイラー様は、ベッドに座りロドルフにページを捲ってもらい読書をしていた。
その時ふと、私が持っている本を見ているタイラー様の視線に気づく。
「僕もマリアの読んでいる本を読みたい。」
タイラー様は、元々は本を読むことも、字を書くこともできたそうだ。
少年の頃に急に発熱し、手足に力が入らなくなり、今のような寝たきりになったと話してくれた。
そのため、私がタイラー様の横で読書をするようになると、元々、ロドルフにページを開いてもらい、本を読んでいたタイラー様は、そばにいる私の本も同時に読み出した。
どうやら、ロドルフがページを捲るのを待ちきれず、二つの本を同時に読んでいるらしい。
なんと器用な。
タイラー様は、できることが限られているから、多くの時間を読書に充てて、過ごしているのだそう。
そして、それに伴い読むスピードがどんどん速くなったとのこと。
「タイラー様、二冊の本を同時に読めるのでしたら、ロドルフに本を立てかけるものを作ってもらえば、ベッドに二人で並んで一緒に読めますよ。」
「どう言う意味?」
「私の読んでいる本とタイラー様の読んでいる本を横に並べて置いて、私は私の読んでいる方だけを読んで、タイラー様は両方とも読むんです。
私は一ページ読んだら、二冊の本のページをめくります。
そしたら、ロドルフはその時手が空いて、その間に他のことができますよね。」
「なるほど、じゃあ早速、ロドルフ、作ってみて。」
「わかりました。」
ロドルフはすぐに立ち上がると、庭に出て、庭師から木の板をもらい、本を立てかける台を作り始める。
そのようすを私とタイラー様は、窓越しに見守り、台の大きさや角度の希望をロドルフに伝えて、すぐにその台は完成した。
翌日から、私とタイラー様は、ベッドに並んで座り、その台に本を立てかけると、毎日少しずつ二人で読書を楽しむようになった。
本を読む時は、私もベッドの上に上がって座り、タイラー様の隣に並ぶので、いつもよりも二人の距離は近い。
私は、並んだ二冊の本をめくりながら、胸がドキドキして、読むスピードはゆっくりになってしまう。
最初は、私に合わせてゆっくり読んでいたタイラー様だが、元々早く読む方だから、ほとんど動かなかった自分の手をなんとか動かして、私がページをめくる前に、自分でも本のページを、時々めくってしまうことがあった。
それなら、私の本を読むペースは遅いので、元のようにロドルフにページをめくってもらう方がいいかしら。
「タイラー様、私の読むスピードは、タイラー様が二冊読むよりも、遅いんですね。
でしたら、前のようにタイラー様の分はロドルフにお願いしましょうか?」
「いや、このままでいい。
時々自分でページを捲るのは、手の運動になるから自分でやるよ。」
そう言うと、タイラー様は引き続き私の隣で、私がめくる他に自分で本を捲り、二冊同時に読み続ける。
私は、この二人で並んで読書する時間が好きなので、タイラー様の器用な二冊同時読みを感心しながら、二冊のページをめくるのだった。
それを続けている内に、タイラー様は少しずつ自分で手を動かせるようになって来た。
最近では、二人で読書をするための台に紙を置き、字を書く練習をしている。
「タイラー様、字が書けるのでしたら、私と手紙のやり取りをしませんか?
同じ字を何回も書くばかりでは、飽きてしまいますよ。」
「そうだね。
僕もマリアと手紙のやり取りをしてみたい。」
「はい。
では早速お手紙を書きますね。」
私は、タイラー様と暮らしてみて楽しかったことや、これから二人でやりたいことなどを書いて、タイラー様に読んでもらおうと思う。
とは言え、私はタイラー様の部屋にいるので、手紙を書いたらすぐに、読書するための台に置く。
すると、タイラー様は、字を書く練習を中断し、私の書いた手紙を読み、返事の手紙を書き出している。
タイラー様が、書いた手紙は、大小様々な字が踊っているし、震えたような字で読みづらいが、どれほど大変な思いをして字を書いているのか、いつも側で見てきたので、そのお手紙は私にとって宝物だ。
お手紙の内容は、字を頑張って書いているとか、足を動かす練習をしているとかで、
「それ、いつも隣で見ているので全部知っています。」
と思うが、どうやらタイラー様は、以前、私がカーステン様の手紙を読んで、応援していたと伝えたからだろうか、そのことを期待しているような内容なのである。
ならば、私のお返事は応援一択である。
だって、本当にタイラー様は努力されているのだから。
最近では、もうカーステン様を思い出すこともなく、私を大切にしてくれるタイラー様が好きになっている。
妾の子である私は、生まれた時に産みの母を亡くしているので、これまでの人生においても、こんなに大切にしてくれる人に出会ったことがなかった。
タイラー様は、手足を動かすことさえ困難で、彼ができることは限られている。
けれども、いつもそばにいて、大切にしてもらっていることは伝わって来るのだ。
だから、私は今のままで十分に幸せだ。
その時ふと、私が持っている本を見ているタイラー様の視線に気づく。
「僕もマリアの読んでいる本を読みたい。」
タイラー様は、元々は本を読むことも、字を書くこともできたそうだ。
少年の頃に急に発熱し、手足に力が入らなくなり、今のような寝たきりになったと話してくれた。
そのため、私がタイラー様の横で読書をするようになると、元々、ロドルフにページを開いてもらい、本を読んでいたタイラー様は、そばにいる私の本も同時に読み出した。
どうやら、ロドルフがページを捲るのを待ちきれず、二つの本を同時に読んでいるらしい。
なんと器用な。
タイラー様は、できることが限られているから、多くの時間を読書に充てて、過ごしているのだそう。
そして、それに伴い読むスピードがどんどん速くなったとのこと。
「タイラー様、二冊の本を同時に読めるのでしたら、ロドルフに本を立てかけるものを作ってもらえば、ベッドに二人で並んで一緒に読めますよ。」
「どう言う意味?」
「私の読んでいる本とタイラー様の読んでいる本を横に並べて置いて、私は私の読んでいる方だけを読んで、タイラー様は両方とも読むんです。
私は一ページ読んだら、二冊の本のページをめくります。
そしたら、ロドルフはその時手が空いて、その間に他のことができますよね。」
「なるほど、じゃあ早速、ロドルフ、作ってみて。」
「わかりました。」
ロドルフはすぐに立ち上がると、庭に出て、庭師から木の板をもらい、本を立てかける台を作り始める。
そのようすを私とタイラー様は、窓越しに見守り、台の大きさや角度の希望をロドルフに伝えて、すぐにその台は完成した。
翌日から、私とタイラー様は、ベッドに並んで座り、その台に本を立てかけると、毎日少しずつ二人で読書を楽しむようになった。
本を読む時は、私もベッドの上に上がって座り、タイラー様の隣に並ぶので、いつもよりも二人の距離は近い。
私は、並んだ二冊の本をめくりながら、胸がドキドキして、読むスピードはゆっくりになってしまう。
最初は、私に合わせてゆっくり読んでいたタイラー様だが、元々早く読む方だから、ほとんど動かなかった自分の手をなんとか動かして、私がページをめくる前に、自分でも本のページを、時々めくってしまうことがあった。
それなら、私の本を読むペースは遅いので、元のようにロドルフにページをめくってもらう方がいいかしら。
「タイラー様、私の読むスピードは、タイラー様が二冊読むよりも、遅いんですね。
でしたら、前のようにタイラー様の分はロドルフにお願いしましょうか?」
「いや、このままでいい。
時々自分でページを捲るのは、手の運動になるから自分でやるよ。」
そう言うと、タイラー様は引き続き私の隣で、私がめくる他に自分で本を捲り、二冊同時に読み続ける。
私は、この二人で並んで読書する時間が好きなので、タイラー様の器用な二冊同時読みを感心しながら、二冊のページをめくるのだった。
それを続けている内に、タイラー様は少しずつ自分で手を動かせるようになって来た。
最近では、二人で読書をするための台に紙を置き、字を書く練習をしている。
「タイラー様、字が書けるのでしたら、私と手紙のやり取りをしませんか?
同じ字を何回も書くばかりでは、飽きてしまいますよ。」
「そうだね。
僕もマリアと手紙のやり取りをしてみたい。」
「はい。
では早速お手紙を書きますね。」
私は、タイラー様と暮らしてみて楽しかったことや、これから二人でやりたいことなどを書いて、タイラー様に読んでもらおうと思う。
とは言え、私はタイラー様の部屋にいるので、手紙を書いたらすぐに、読書するための台に置く。
すると、タイラー様は、字を書く練習を中断し、私の書いた手紙を読み、返事の手紙を書き出している。
タイラー様が、書いた手紙は、大小様々な字が踊っているし、震えたような字で読みづらいが、どれほど大変な思いをして字を書いているのか、いつも側で見てきたので、そのお手紙は私にとって宝物だ。
お手紙の内容は、字を頑張って書いているとか、足を動かす練習をしているとかで、
「それ、いつも隣で見ているので全部知っています。」
と思うが、どうやらタイラー様は、以前、私がカーステン様の手紙を読んで、応援していたと伝えたからだろうか、そのことを期待しているような内容なのである。
ならば、私のお返事は応援一択である。
だって、本当にタイラー様は努力されているのだから。
最近では、もうカーステン様を思い出すこともなく、私を大切にしてくれるタイラー様が好きになっている。
妾の子である私は、生まれた時に産みの母を亡くしているので、これまでの人生においても、こんなに大切にしてくれる人に出会ったことがなかった。
タイラー様は、手足を動かすことさえ困難で、彼ができることは限られている。
けれども、いつもそばにいて、大切にしてもらっていることは伝わって来るのだ。
だから、私は今のままで十分に幸せだ。
673
あなたにおすすめの小説
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
[完結]出来損ないと言われた令嬢、実は規格外でした!
青空一夏
恋愛
「おまえなど生まれてこなければ良かったのだ!」そうお父様に言われ続けた私。高位貴族の令嬢だったお母様は、お父様に深く愛され、使用人からも慕われていた。そのお母様の命を奪ってこの世に生まれた私。お母様を失ったお父様は、私を憎んだ。その後、お父様は平民の女性を屋敷に迎え入れ、その女性に子供ができる。後妻に屋敷の切り盛りを任せ、私の腹違いの妹を溺愛するお父様は、私を本邸から追い出し離れに住まわせた。私は、お父様からは無視されるか罵倒されるか、使用人からは見下されている。そんな私でも家庭教師から褒められたことは嬉しい出来事だった。この家庭教師は必ず前日に教えた内容を、翌日に試験する。しかし、その答案用紙さえも、妹のものとすり替えられる。それは間違いだらけの答案用紙で、「カーク侯爵家の恥さらし。やはりおまえは生まれてくるべきじゃなかったんだな」と言われた。カーク侯爵家の跡継ぎは妹だと言われたが、私は答案用紙をすり替えられたことのほうがショックだった。やがて学園に入学するのだがーー
これは父親から嫌われたヒロインが、後妻と腹違いの妹に虐げられたり、学園でも妹に嫌がらせされるなか、力に目覚め、紆余曲折ありながらも幸せになる、ラブストーリー。
※短編の予定ですが、長編になる可能性もあります。
あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす
青の雀
恋愛
公爵令嬢スカーレット・ロッテンマイヤーには、前世の記憶がある。
幼いときに政略で結ばれたジェミニ王国の第1王子ロベルトと20歳の時に結婚した。
スカーレットには、7歳年下の義妹リリアーヌがいるが、なぜかリリアーヌは、ロッテンマイヤー家に来た時から聖女様を名乗っている。
ロッテンマイヤーは、代々異能を輩出している家柄で、元は王族
物語は、前世、夫に殺されたところから始まる。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
[完結]だってあなたが望んだことでしょう?
青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。
アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。
やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー
(完結)私はもう他人です!
青空一夏
恋愛
マリアの両親は平民で、ピナベーカリーというパン屋を経営している。一歳違いの妹ソフィアはピンクブロンドにピンクの大きな瞳の愛らしい女の子で、両親に溺愛されていた。マリアも妹を可愛がっており、幼いころの姉妹仲はとても良かった。
マリアが学園に通う年齢になった頃、小麦粉の値上げでピナベーカリーの経営がうまくいかず、マリアは学園に行くことができない。同じ街のブロック服飾工房に住み込みで働くことになった。朝早く実家のパン屋を手伝い、服飾工房に戻って夜まで針仕事。 お給料の半分は家に入れるのだが、マリアはそれを疑問にも思わなかった。
その1年後、ソフィアが学園に通う年齢になると、ピナベーカリーが持ち直し、かなりパンが売れるようになった。そのためソフィアは裕福な子女が通う名門ルクレール女学園の寮に行くことになった。しかし、ルクレール女学園の学費は高く、マリアは給料を全部入れてくれるように頼まれた。その時もマリアは妹の幸せを自分のものとして捉え、両親の言うとおりにそれを受け入れる。
マリアは家族思いで誠実。働き者なところをブロック服飾工房のオーナーであるレオナードに見初められる。そして、レオナードと結婚を誓い合い、両親と妹と引き合わせたところ・・・・・・
これは、姉妹格差で我慢させられてきた姉が、前世の記憶を取り戻し、もう利用されないと、自分の人生を歩もうとする物語です。
たのしい わたしの おそうしき
syarin
恋愛
ふわふわのシフォンと綺羅綺羅のビジュー。
彩りあざやかな花をたくさん。
髪は人生で一番のふわふわにして、綺羅綺羅の小さな髪飾りを沢山付けるの。
きっと、仄昏い水底で、月光浴びて天の川の様に見えるのだわ。
辛い日々が報われたと思った私は、挙式の直後に幸せの絶頂から地獄へと叩き落とされる。
けれど、こんな幸せを知ってしまってから元の辛い日々には戻れない。
だから、私は幸せの内に死ぬことを選んだ。
沢山の花と光る硝子珠を周囲に散らし、自由を満喫して幸せなお葬式を自ら執り行いながら……。
ーーーーーーーーーーーー
物語が始まらなかった物語。
ざまぁもハッピーエンドも無いです。
唐突に書きたくなって(*ノ▽ノ*)
こーゆー話が山程あって、その内の幾つかに奇跡が起きて転生令嬢とか、主人公が逞しく乗り越えたり、とかするんだなぁ……と思うような話です(  ̄ー ̄)
19日13時に最終話です。
ホトラン48位((((;゜Д゜)))ありがとうございます*。・+(人*´∀`)+・。*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる