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18.王都で
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王子のご成婚披露パーティーの前日に、私達は王都のクライトン侯爵家に、馬車で到着した。
別邸へ向かった時と違って、タイラー様が、ゆっくりと歩いて馬車から降りると、クライトン侯爵、カーステン様、ハリエットが揃い、その姿を見守るように待ち構えていた。
「よく帰ったな。
タイラー。
本当に歩けるようになったんだな。
肌も元通りに綺麗になって本当に良かった。
手紙ではそのことを聞いていたけれど、実際に見ると感極まるよ。」
クライトン侯爵は、目に涙を浮かべている。
彼のその反応には、別邸に移ってからの長い時を感じさせた。
それほどの間、私達は王都に戻らなかったということだ。
「タイラー、良くやったな。
おめでとう。
疲れただろうから、応接室に行ってから挨拶をしよう。」
「ああ、そうしてくれると助かるよ。」
私とハリエットは、お互いに笑顔を交わすと、クライトン侯爵家の方々と、応接室へと移動した。
それぞれ並んでテーブルを囲んでお茶を飲んでいると、上機嫌のクライトン侯爵が話し出す。
「改めて、こうして全員が揃ったのは初めてだな。
息子たち二人が共に婚約中で、未来の義娘達を連れてこの邸に来てくれたことに感謝する。
私は、義娘達とは顔を合わせているが、息子達は初めてだろうから、それぞれ紹介してくれ。」
「じゃ、僕から。
僕は、兄のカーステンです。
隣が婚約者で、マリアの妹のハリエットだ。
僕は、マリアとは手紙のやり取りをしていたけど、会ったのは初めてだね。
よろしく。」
「次は、僕だね。
僕は、弟のタイラー。
以前は寝たきりだったけれど、マリアのおかげもあって、今はこの通り、ゆっくりなら歩けるようになったんだ。
今はマリアと別邸に住んでいる。
そして、隣にいるのが婚約者のマリア。
マリア達は、姉妹だね。
よろしく。」
「それにしても、君達姉妹は全然似ていないんだね。
逆に僕達兄弟は似てるだろ?
眼の色が水色か、紫かの違いだけなんだ。」
「そうですわね。
私達姉妹は、母親が違うからあまり似てないんです。
顔も性格も。」
「性格なら、僕達も違うよ。
兄さんは昔から何でもできて、僕の憧れなんだ。」
穏やかな会話をしているが、テーブルの下でタイラー様は、私と手を繋いだまま離さなかった。
翌日の夜、王宮では王子のご成婚披露パーティーが行われ、私達二人とカーステン様達二人は、揃ってパーティーに向かう。
この日のために、あつらえた彼の瞳の色の紫を基調にしたスミレ色のドレスとタキシードを揃いで着ている。
タキシードを着こなしたタイラー様は、とても素敵で、私達が夜会で共に過ごせることがとても嬉しい。
タイラー様は、長らく療養していたし、私は王都から離れた田舎にいたため二人はほぼ初めて社交界に出席した美男美女カップルとして、注目を集める。
第一王子夫妻に、タイラー様とご結婚の祝福の挨拶が済むと、パーティー会場の隅の方のベンチに座り休んでいた。
タイラー様は、ゆっくりなら歩けるとはいえ、人混みでは疲れ易いからだ。
ホールの中央では、王子と王女を始めとして、多くのカップルが楽しそうにダンスをしている。
その輪の中にいたカーステン様が、ハリエットとダンスを終え、私達のところにやって来た。
「マリア、一緒に踊らないか?
以前手紙のやり取りをしていた時、一緒にダンスを踊るのが夢だと、書いてくれていたよね。
タイラーは、ダンスをするにはもう少しかかりそうだから、僕と代わりに踊ろう。」
「…でも。」
確かに、王都の夜会でダンスを踊るのは私の憧れだった。
でもそれは、以前、二人が婚約者同士だったから手紙に書いたことで、今二人で踊ったら、タイラー様が嫌な思いをするだろう。
私がカーステン様に断ろうとすると、タイラー様が遮る。
「僕のことは気にしないで、マリア、お兄様とダンスをしておいで。
せっかくだから、夢を叶えた方がいい。
僕は、ハリエットと、ここで待っているよ。」
「タイラー様はいいのですか?」
「うん、マリアはずっと踊りたかったんだろう?」
「でも…。」
タイラー様は心よく送り出してくれようとするけれど、果たして本当にそれが正しいことなのだろうか?
「タイラーもそう言うんだ。
行こう。」
カーステン様は、半ば強引に私の腕を掴むとホールに連れ出し、私達はダンスの輪の中で踊り始める。
タイラー様のお顔に似ていて、瞳の色ぐらいしか違わないカーステン様とのダンスは、始めはぎこちなかったが、次第に息もピッタリ合い楽しい。
カーステン様は、ダンスしているうちに、次第に遠慮がなくなり、私をますます引き寄せて踊り続ける。
そして、私の耳元でこう囁くのだった。
「マリア、君はハリエットよりもずっと美しい。
僕は相手を間違えたようだ。
帰ったら父に話して、僕達がやり直せるようにするから、僕と結婚しよう。
妾の子でも、こんなに美人なら、ハリエットより君の方が僕に相応しい。」
その言葉を耳にした瞬間、私は強く動揺し、すっかり笑顔が消える。
それと同時に、息の合ったダンスも途端にぎこちなくなる。
一体、この人は何を言っているの?
私達は義理の兄妹として、これからうまくやっていかないといけない立場だから、ダンスをしただけなのに。
どうして周りを動揺させるようなことを平気で口にするのかしら。
勝手すぎて、とても彼を慕うタイラー様に話せない。
私は呆然としながらも、カーステン様にエスコートされ、タイラー様のところへ戻る。
タイラー様は私の顔を見ると、すぐに何かがあったと察し、「自分達は疲れたから。」とカーステン様達に伝え、邸に戻ることにしてくれた。
帰りの馬車の中で、タイラー様は、静かに私に尋ねる。
「兄に何か言われたんだね。
帰ってからゆっくり聞くけど、すでに大体の想像はついているよ。」
そう言って、困惑している私をあやすように抱きしめ、優しく包み込んでくれた。
タイラー様に、抱きしめられるのは初めてで、本来ならもっと胸がドキドキするはずなのに、今は彼に包まれる安心感でいっぱいだった。
さっきまでの不安は嘘みたい。
この腕の中にいれば、私は大丈夫。
彼から離れないわ。
私はタイラー様の胸に顔を埋め、彼に抱きついた。
私達はいつの間にか、一緒にいるのが当たり前で、彼の香りに包まれていれば、どんなことがあっても私は満たされる。
そして、私は帰りの馬車の中で、彼に抱かれたままいつの間にか眠りに落ちてしまっていた。
別邸へ向かった時と違って、タイラー様が、ゆっくりと歩いて馬車から降りると、クライトン侯爵、カーステン様、ハリエットが揃い、その姿を見守るように待ち構えていた。
「よく帰ったな。
タイラー。
本当に歩けるようになったんだな。
肌も元通りに綺麗になって本当に良かった。
手紙ではそのことを聞いていたけれど、実際に見ると感極まるよ。」
クライトン侯爵は、目に涙を浮かべている。
彼のその反応には、別邸に移ってからの長い時を感じさせた。
それほどの間、私達は王都に戻らなかったということだ。
「タイラー、良くやったな。
おめでとう。
疲れただろうから、応接室に行ってから挨拶をしよう。」
「ああ、そうしてくれると助かるよ。」
私とハリエットは、お互いに笑顔を交わすと、クライトン侯爵家の方々と、応接室へと移動した。
それぞれ並んでテーブルを囲んでお茶を飲んでいると、上機嫌のクライトン侯爵が話し出す。
「改めて、こうして全員が揃ったのは初めてだな。
息子たち二人が共に婚約中で、未来の義娘達を連れてこの邸に来てくれたことに感謝する。
私は、義娘達とは顔を合わせているが、息子達は初めてだろうから、それぞれ紹介してくれ。」
「じゃ、僕から。
僕は、兄のカーステンです。
隣が婚約者で、マリアの妹のハリエットだ。
僕は、マリアとは手紙のやり取りをしていたけど、会ったのは初めてだね。
よろしく。」
「次は、僕だね。
僕は、弟のタイラー。
以前は寝たきりだったけれど、マリアのおかげもあって、今はこの通り、ゆっくりなら歩けるようになったんだ。
今はマリアと別邸に住んでいる。
そして、隣にいるのが婚約者のマリア。
マリア達は、姉妹だね。
よろしく。」
「それにしても、君達姉妹は全然似ていないんだね。
逆に僕達兄弟は似てるだろ?
眼の色が水色か、紫かの違いだけなんだ。」
「そうですわね。
私達姉妹は、母親が違うからあまり似てないんです。
顔も性格も。」
「性格なら、僕達も違うよ。
兄さんは昔から何でもできて、僕の憧れなんだ。」
穏やかな会話をしているが、テーブルの下でタイラー様は、私と手を繋いだまま離さなかった。
翌日の夜、王宮では王子のご成婚披露パーティーが行われ、私達二人とカーステン様達二人は、揃ってパーティーに向かう。
この日のために、あつらえた彼の瞳の色の紫を基調にしたスミレ色のドレスとタキシードを揃いで着ている。
タキシードを着こなしたタイラー様は、とても素敵で、私達が夜会で共に過ごせることがとても嬉しい。
タイラー様は、長らく療養していたし、私は王都から離れた田舎にいたため二人はほぼ初めて社交界に出席した美男美女カップルとして、注目を集める。
第一王子夫妻に、タイラー様とご結婚の祝福の挨拶が済むと、パーティー会場の隅の方のベンチに座り休んでいた。
タイラー様は、ゆっくりなら歩けるとはいえ、人混みでは疲れ易いからだ。
ホールの中央では、王子と王女を始めとして、多くのカップルが楽しそうにダンスをしている。
その輪の中にいたカーステン様が、ハリエットとダンスを終え、私達のところにやって来た。
「マリア、一緒に踊らないか?
以前手紙のやり取りをしていた時、一緒にダンスを踊るのが夢だと、書いてくれていたよね。
タイラーは、ダンスをするにはもう少しかかりそうだから、僕と代わりに踊ろう。」
「…でも。」
確かに、王都の夜会でダンスを踊るのは私の憧れだった。
でもそれは、以前、二人が婚約者同士だったから手紙に書いたことで、今二人で踊ったら、タイラー様が嫌な思いをするだろう。
私がカーステン様に断ろうとすると、タイラー様が遮る。
「僕のことは気にしないで、マリア、お兄様とダンスをしておいで。
せっかくだから、夢を叶えた方がいい。
僕は、ハリエットと、ここで待っているよ。」
「タイラー様はいいのですか?」
「うん、マリアはずっと踊りたかったんだろう?」
「でも…。」
タイラー様は心よく送り出してくれようとするけれど、果たして本当にそれが正しいことなのだろうか?
「タイラーもそう言うんだ。
行こう。」
カーステン様は、半ば強引に私の腕を掴むとホールに連れ出し、私達はダンスの輪の中で踊り始める。
タイラー様のお顔に似ていて、瞳の色ぐらいしか違わないカーステン様とのダンスは、始めはぎこちなかったが、次第に息もピッタリ合い楽しい。
カーステン様は、ダンスしているうちに、次第に遠慮がなくなり、私をますます引き寄せて踊り続ける。
そして、私の耳元でこう囁くのだった。
「マリア、君はハリエットよりもずっと美しい。
僕は相手を間違えたようだ。
帰ったら父に話して、僕達がやり直せるようにするから、僕と結婚しよう。
妾の子でも、こんなに美人なら、ハリエットより君の方が僕に相応しい。」
その言葉を耳にした瞬間、私は強く動揺し、すっかり笑顔が消える。
それと同時に、息の合ったダンスも途端にぎこちなくなる。
一体、この人は何を言っているの?
私達は義理の兄妹として、これからうまくやっていかないといけない立場だから、ダンスをしただけなのに。
どうして周りを動揺させるようなことを平気で口にするのかしら。
勝手すぎて、とても彼を慕うタイラー様に話せない。
私は呆然としながらも、カーステン様にエスコートされ、タイラー様のところへ戻る。
タイラー様は私の顔を見ると、すぐに何かがあったと察し、「自分達は疲れたから。」とカーステン様達に伝え、邸に戻ることにしてくれた。
帰りの馬車の中で、タイラー様は、静かに私に尋ねる。
「兄に何か言われたんだね。
帰ってからゆっくり聞くけど、すでに大体の想像はついているよ。」
そう言って、困惑している私をあやすように抱きしめ、優しく包み込んでくれた。
タイラー様に、抱きしめられるのは初めてで、本来ならもっと胸がドキドキするはずなのに、今は彼に包まれる安心感でいっぱいだった。
さっきまでの不安は嘘みたい。
この腕の中にいれば、私は大丈夫。
彼から離れないわ。
私はタイラー様の胸に顔を埋め、彼に抱きついた。
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