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10.その頃の二人
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「マリア様、二人で出かけるのは今日を最後にしましょう。」
二人で馬車に揺られながら、ロドルフは心配そうに眉をひそめる。
「そうね。
今日見つからなかったら、ロドルフの負担が大きいけど、この前の場所にするしかないわね。」
「そろそろタイラー様が、おかしいと思い始めていると思うんです。
タイラー様はベッドに長くいたから、人の些細な変化にも気づくんですよ。
だから、僕は不安です。」
「そうなの?
でも、タイラー様は、気づいたそぶりは何も見せていないから、大丈夫だと思うけれど。
あっ、でも、匂いがどうとか言っていたわ。
その後、勘違いだと言っていたような気がするんだけど。」
「そんなことを言っていたんですか?
それ、絶対にまずいですって。
特にマリア様のことでタイラー様に恨まれたらと思うと、僕は不安でなりません。」
「ふふ、ロドルフって案外小心者ね。」
「笑いごとじゃないですよ。」
「大丈夫よ。
それよりも見て、あそこなんてどうかしら?」
「いいですね。
行ってみましょう。」
二人は領地内にある砂浜沿いの一本道を馬車で進んでいた。
道は馬車が通るギリギリの幅で、走ると砂埃が舞っている。
私がロドルフに示した場所は、馬車を停めるには充分な広さがあり、その先には真っ白い砂浜が広がり、海へと続いている。
ロドルフは馬車の壁を内側から軽くトントンとノックして、御者に停車するよう指示を出す。
すると、馬車は静かにその場所に停車した。
ロドルフは私が馬車から降りるのを手伝ってくれ、地面に降り立つと、二人は砂浜へ向かって歩き出す。
私は目の前に広がる美しい海を見ると心が弾み、我慢できず途中から海へ向かって走り出す。
その後ろを、ロドルフが慎重に歩いてついて行く。
「ロドルフ、ここならどうかしら?
今までで一番馬車から砂浜へ行く道の長さが、短い気がするわ。」
「はい、とても良さそうですね。」
「ここは景色が開けて、海が輝いて見えるし、すごく気に入ったわ。」
私が海を見て喜んでいる間に、ロドルフは足元を確かめるように、一歩ずつゆっくりと歩いて、砂浜への歩数を数えている。
「馬車から砂浜までは、約五十歩というところでしょうか。
そして、海へはさらに同じぐらいの距離があります。
このぐらいの距離ならば、タイラー様を背負って歩くことも、何とかできるかもしれません。」
私は、来るタイラー様の誕生日にサプライズで、一緒に海に来ようと考えていた。
タイラー様は最近、車椅子で邸の庭園まで行ける。
ということは、車椅子ならばどこへでも行けるということ。
実際は、車椅子に乗っていても、疲れやすいから、無理をしても2~3時間が限界だと思うけれど。
きっと、タイラー様は自分の領地に、こんなに素敵な景色を見れるところがあることを知らないのだろう。
先日、タイラー様が執務のために見ていた書状の中に、この領地の地図があったのだ。
それを私は目ざとく見つけ、彼に見せてもらった。
地図には、領地が海に面していると示されていた。
片田舎で育った私は、過去に海を見たことがあり、ぜひタイラー様にも海の美しさを知って欲しいと思ったのだ。
目の前には、白い砂浜から続く青い海が一面に広がっていて、太陽の光が反射してキラキラと輝いている。
この景色なら、タイラー様も喜んでくれるはずだわ。
ロドルフから、タイラー様の誕生日が近いことを聞いていて、プレゼントを考えていたけれど、いつもタイラー様と一緒にいる私は、刺繍入りのハンカチを作っても、彼のそばにいるから、サプライズにしにくいのだ。
だからといって、一人で部屋に篭って、彼への刺繍入りのハンカチを作るのも楽しくないし、時間がかかる。
だったら、車椅子なら出かけれるかもしれない彼と、一緒にどこかへ出かけてみたい。
そのことを、ロドルフに相談したら、賛同してくれたが、実現にはいくつかの問題があった。
一番のネックは、どこに行くとしても、外の道が車椅子を押して歩けるほど、整っていないことだった。
邸の中や庭園は、タイラー様が車椅子を使えるようになってから、すべて修繕され、車椅子で通れるように段差を無くしている。
けれども、一歩外に出れば、車椅子で通れるような道は皆無で、ロドルフがタイラー様を背負って進むか、道を平坦に整備するかの二択しかないのだ。
ましてや私が行きたい海の砂浜は、車椅子が埋まってしまうことは明らかなので使えない。
だから、ロドルフは自分がタイラー様を背負い、海に行くと言ってくれた。
それでも、なるべくロドルフに負担をかけないで済むように、私達はできるだけ馬車を停めた位置から、海までの距離が近いところを探していた。
しかし、実際に行ってみると、海の周りは手付かずの自然のままで、美しい反面、馬車が停めれる場所から思った以上に遠かった。
そのため、何度も下見を重ね、ようやく理想的な場所を見つけることができたのだ。
「ねぇ、ここに椅子を置いて、タイラー様に座ってもらうの。
そうすれば、海はすぐそこよ。
きっと楽しんでもらえるわ。
ここに決めましょうよ。」
「はい、ここなら男手は僕とサエモンに手伝ってもらえば大丈夫です。」
「ふふ、楽しみね。
タイラー様の誕生日まで内緒よ。」
「わかりました。
僕はタイラー様を背負って、砂浜を歩かないといけないので、筋肉をさらにつけるように頑張ります。」
「ありがとう。
大変だけど、よろしくね。
この計画が実現できるのも、ロドルフのおかげよ。」
「いいえ、僕こそタイラー様の笑顔が見れたのは、マリア様のおかげですから感謝しています。」
「タイラー様のお誕生日、晴れるといいわね。
楽しみだわ。」
二人で馬車に揺られながら、ロドルフは心配そうに眉をひそめる。
「そうね。
今日見つからなかったら、ロドルフの負担が大きいけど、この前の場所にするしかないわね。」
「そろそろタイラー様が、おかしいと思い始めていると思うんです。
タイラー様はベッドに長くいたから、人の些細な変化にも気づくんですよ。
だから、僕は不安です。」
「そうなの?
でも、タイラー様は、気づいたそぶりは何も見せていないから、大丈夫だと思うけれど。
あっ、でも、匂いがどうとか言っていたわ。
その後、勘違いだと言っていたような気がするんだけど。」
「そんなことを言っていたんですか?
それ、絶対にまずいですって。
特にマリア様のことでタイラー様に恨まれたらと思うと、僕は不安でなりません。」
「ふふ、ロドルフって案外小心者ね。」
「笑いごとじゃないですよ。」
「大丈夫よ。
それよりも見て、あそこなんてどうかしら?」
「いいですね。
行ってみましょう。」
二人は領地内にある砂浜沿いの一本道を馬車で進んでいた。
道は馬車が通るギリギリの幅で、走ると砂埃が舞っている。
私がロドルフに示した場所は、馬車を停めるには充分な広さがあり、その先には真っ白い砂浜が広がり、海へと続いている。
ロドルフは馬車の壁を内側から軽くトントンとノックして、御者に停車するよう指示を出す。
すると、馬車は静かにその場所に停車した。
ロドルフは私が馬車から降りるのを手伝ってくれ、地面に降り立つと、二人は砂浜へ向かって歩き出す。
私は目の前に広がる美しい海を見ると心が弾み、我慢できず途中から海へ向かって走り出す。
その後ろを、ロドルフが慎重に歩いてついて行く。
「ロドルフ、ここならどうかしら?
今までで一番馬車から砂浜へ行く道の長さが、短い気がするわ。」
「はい、とても良さそうですね。」
「ここは景色が開けて、海が輝いて見えるし、すごく気に入ったわ。」
私が海を見て喜んでいる間に、ロドルフは足元を確かめるように、一歩ずつゆっくりと歩いて、砂浜への歩数を数えている。
「馬車から砂浜までは、約五十歩というところでしょうか。
そして、海へはさらに同じぐらいの距離があります。
このぐらいの距離ならば、タイラー様を背負って歩くことも、何とかできるかもしれません。」
私は、来るタイラー様の誕生日にサプライズで、一緒に海に来ようと考えていた。
タイラー様は最近、車椅子で邸の庭園まで行ける。
ということは、車椅子ならばどこへでも行けるということ。
実際は、車椅子に乗っていても、疲れやすいから、無理をしても2~3時間が限界だと思うけれど。
きっと、タイラー様は自分の領地に、こんなに素敵な景色を見れるところがあることを知らないのだろう。
先日、タイラー様が執務のために見ていた書状の中に、この領地の地図があったのだ。
それを私は目ざとく見つけ、彼に見せてもらった。
地図には、領地が海に面していると示されていた。
片田舎で育った私は、過去に海を見たことがあり、ぜひタイラー様にも海の美しさを知って欲しいと思ったのだ。
目の前には、白い砂浜から続く青い海が一面に広がっていて、太陽の光が反射してキラキラと輝いている。
この景色なら、タイラー様も喜んでくれるはずだわ。
ロドルフから、タイラー様の誕生日が近いことを聞いていて、プレゼントを考えていたけれど、いつもタイラー様と一緒にいる私は、刺繍入りのハンカチを作っても、彼のそばにいるから、サプライズにしにくいのだ。
だからといって、一人で部屋に篭って、彼への刺繍入りのハンカチを作るのも楽しくないし、時間がかかる。
だったら、車椅子なら出かけれるかもしれない彼と、一緒にどこかへ出かけてみたい。
そのことを、ロドルフに相談したら、賛同してくれたが、実現にはいくつかの問題があった。
一番のネックは、どこに行くとしても、外の道が車椅子を押して歩けるほど、整っていないことだった。
邸の中や庭園は、タイラー様が車椅子を使えるようになってから、すべて修繕され、車椅子で通れるように段差を無くしている。
けれども、一歩外に出れば、車椅子で通れるような道は皆無で、ロドルフがタイラー様を背負って進むか、道を平坦に整備するかの二択しかないのだ。
ましてや私が行きたい海の砂浜は、車椅子が埋まってしまうことは明らかなので使えない。
だから、ロドルフは自分がタイラー様を背負い、海に行くと言ってくれた。
それでも、なるべくロドルフに負担をかけないで済むように、私達はできるだけ馬車を停めた位置から、海までの距離が近いところを探していた。
しかし、実際に行ってみると、海の周りは手付かずの自然のままで、美しい反面、馬車が停めれる場所から思った以上に遠かった。
そのため、何度も下見を重ね、ようやく理想的な場所を見つけることができたのだ。
「ねぇ、ここに椅子を置いて、タイラー様に座ってもらうの。
そうすれば、海はすぐそこよ。
きっと楽しんでもらえるわ。
ここに決めましょうよ。」
「はい、ここなら男手は僕とサエモンに手伝ってもらえば大丈夫です。」
「ふふ、楽しみね。
タイラー様の誕生日まで内緒よ。」
「わかりました。
僕はタイラー様を背負って、砂浜を歩かないといけないので、筋肉をさらにつけるように頑張ります。」
「ありがとう。
大変だけど、よろしくね。
この計画が実現できるのも、ロドルフのおかげよ。」
「いいえ、僕こそタイラー様の笑顔が見れたのは、マリア様のおかげですから感謝しています。」
「タイラー様のお誕生日、晴れるといいわね。
楽しみだわ。」
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