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15.村の人々
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タイラー達が広場で歩行訓練を続けていると、興味深そうに見ていた村の子供達が数人集まって来た。
「とっても綺麗なお姉さん、こんにちは。」
子供達は、物おじすることなく、マリアに話しかけて来た。
マリアはどこに行っても、人の目を引くし、子供達にももれなく興味を持たれる。
「あら、初めまして、ここの村の子達ね。
私はマリアで、こちらはタイラー様よ。
私達が気になる?」
「うん、何してるの?」
「この村のことを調べているのよ。
それで、お父さんやお母さん達とお話したいと思っているの。
ご両親はお家にいるのかしら?
できれば、連れて来てほしいな。」
マリアは子供達に笑顔で話している。
すると、子供達は顔を見合わせて、すぐに頷いた。
「わかった。
僕達が連れて来てあげる。」
「ありがとう。」
子供達はそれぞれに家に向かって走り出した。
「マリア、ありがとう、これならすぐに村の者達と話せそうだ。」
僕は元々人と接することが得意ではないし、ましてや子供達にはどう話しかけたらいいのかわからない。
ロドルフもいるから、そう言った部分は彼に任せておこうと考えていた。
けれども、僕達が大人と話し合いの場を持つために費やす時間を、マリアは一瞬で終わらせた。
これには、さすがと言うしかない。
何せ、マリアの人を惹きつける人柄を一番知っているのは、紛れもなく僕だから。
初めて出会ったあの日、相手が彼女でなかったらきっと僕は関わることすら、拒んでいただろう。
ボツボツの顔を人に、ましてや令嬢に見せるなんて、絶対に嫌だと思っていた。
でも、拒否したいと思いながらも、素直そうなその瞳と表情についつい引き込まれ、今がある。
だから、マリアと出会えて、本当に良かった。
そして、先ほどディクソン公爵と会う時に、「僕を支える。」と断言してくれた言葉に嬉しさが込み上げる。
歩行時にふらついてしまうかもしれない僕に、あらかじめ支えてくれると言うことで、僕を安心させ、守ってくれようとしている。
とはいえ、僕が本当にふらついてしまったら、いくらマリアが自分がふらついたと庇おうとしても、僕だとわかってしまうだろう。
それでもあえて、自分のせいにすると言ってくれる優しさがマリアらしい。
彼女は常にぶれずに僕を支えてくれようとする。
そんなマリアがいるから僕は、明日ディクソン公爵に会う時も、冷静に振る舞うことができるだろう。
実は明日、初めて会う自分よりも高位の貴族と、調印し合うことに少なからず不安を抱いていた。
何せ僕は体が不自由で引きこもっていたから、普通なら領主同士がするであろう他の領主との会合などを一切やったことがない。
今回は領地を譲り受けるだけで、利を得るための交渉ごとでないから、それほど取り戻せないほどの失敗はしないだろうけれど、領主としてやっていく過程では、そのような場面もいずれ出てくるだろう。
その時に、僕達に少しでも有利に働くように、機転をきかせて相手の裏を読み取ることが求められる。
人に会うことのなかった僕にとって、非常に難しいことだ。
それでも、僕はここで自分の能力を示したい。
部屋に篭り、何も生み出さなかった自分が、ようやく領地経営を通じて価値を見出せるようになったのだから。
その原動力はいつだってマリアだ。
マリアに相応しい男に。
この思いが、少しでも弱気になりそうな僕を奮い立たせ、どうするべきか悩む時の道しるべになる。
だからこそ僕は、今まで領主として正しい選択ができている。
「マリアが良いと喜んでくれるものか。」そう思えた方を選ぶ。
それは、とてもシンプルだけど、間違いがないし、自信が持てる。
マリアのためにしたことは、すべて後悔しないと決めているのだから。
だから、勝手な願いだけど、どうかマリア、いつまでも僕のそばで見守っていてほしい。
僕は君がいる限り、いくらでも強い自分になっていくと誓うよ。
「こんにちは、お呼びと伺ったのですが…。」
子供達に連れられて村の大人達が不安そうな表情で集まって来た。
「やあ、初めまして。
こちらは隣街の領主のタイラー様で、こちらは、婚約者のマリア様です。
僕達はこの村の領主であるディクソン公爵の依頼を受けて、この村に来ました。
少しお話をしたいのですが、時間をいただきたい。」
ロドルフが説明する。
「わかりました、ではどうぞ。」
村人達は僕達を小さな集会所に案内した。
「早速ですが、僕はディクソン公爵からこの村の領主にと依頼されている。
僕はこの村を隣街と繋げて、同じように整備していこうと考えています。
そのことについて、皆さんはどう考えますか?」
村人達は互いに視線を交わし、沈黙の後、一人の男性が手を挙げる。
「この村は長い間、領主様に見捨てられたようなものでした。
どんなに窮状を訴えても、領主様は動いてくれることはなかった。
それが、隣街のように美しく変わると言うことですか?」
「はい、その通りです。
僕はこの村を安全で住みやすい街にしたいと思っています。」
「隣街みたいに美しくするなら、費用がかかるから、私達の生活は今より苦しくなるのでしょうか?
納めるものが大幅に増えるとか?」
「その点については今と変えないと約束します。
ですから、後で一人ずつこちらのロドルフに、現在の領主に納めている物を教えてください。
その帳簿もあると助かる。」
「わかりました。
私は村長なので、私の方からお渡しします。」
「すみません、あまり村が変わってしまうのは、残念なのですが…。
もちろん、領主様に逆らうつもりはありません。」
子供を背負った女性が心配そうに話し、それを見たマリアは優しく話しかける。
「大丈夫ですよ。
こちらのタイラー様は、とても理解のある優しい方です。
あなた方から見ても、隣の街の人々は苦しい生活を強いられているようには見えないはずです。
同じような状態になると言うことですから、あまり心配しないでください。
それに、先ほどタイラー様と、この村は安全に配慮しつつも、子供達が自然で遊べる場所にしたいと話していたんですよ。
でもそれは、私達が考えていたことで、もし、皆さんの希望があれば、まとめてロドルフさんに話していただければ、タイラー様が検討してくれるはずです。」
マリアの言葉に少し安心したのか、先ほどまでの恐々とした表情から人々の顔つきが穏やかになる。
「では、これからよろしく。」
強い反対の意見などなく、僕達は村の者達に受け入れられた。
今までディクソン公爵が長年放置していたから、隣街で実績をあげている僕達に対して、受け入れ易いのだろう。
それに、僕とロドルフが二人で話すよりも、そこにマリアが加わることで、特に女性が安心感を覚えたようだ。
その領主によって、民の意見など必要ないと考える者もいる。
搾取するだけして、虐げる領主も。
でも、僕達は「領地はそこに住む民があってこそ。」だと考えている。
その考え方もマリアと僕は、お互いに共感していて、話し合うたびにさまざまな意見が出て、より良い未来を思い描けるようになっていた。
マリアと共に築く新しい村が、きっと素晴らしい場所にできると僕は信じている。
「とっても綺麗なお姉さん、こんにちは。」
子供達は、物おじすることなく、マリアに話しかけて来た。
マリアはどこに行っても、人の目を引くし、子供達にももれなく興味を持たれる。
「あら、初めまして、ここの村の子達ね。
私はマリアで、こちらはタイラー様よ。
私達が気になる?」
「うん、何してるの?」
「この村のことを調べているのよ。
それで、お父さんやお母さん達とお話したいと思っているの。
ご両親はお家にいるのかしら?
できれば、連れて来てほしいな。」
マリアは子供達に笑顔で話している。
すると、子供達は顔を見合わせて、すぐに頷いた。
「わかった。
僕達が連れて来てあげる。」
「ありがとう。」
子供達はそれぞれに家に向かって走り出した。
「マリア、ありがとう、これならすぐに村の者達と話せそうだ。」
僕は元々人と接することが得意ではないし、ましてや子供達にはどう話しかけたらいいのかわからない。
ロドルフもいるから、そう言った部分は彼に任せておこうと考えていた。
けれども、僕達が大人と話し合いの場を持つために費やす時間を、マリアは一瞬で終わらせた。
これには、さすがと言うしかない。
何せ、マリアの人を惹きつける人柄を一番知っているのは、紛れもなく僕だから。
初めて出会ったあの日、相手が彼女でなかったらきっと僕は関わることすら、拒んでいただろう。
ボツボツの顔を人に、ましてや令嬢に見せるなんて、絶対に嫌だと思っていた。
でも、拒否したいと思いながらも、素直そうなその瞳と表情についつい引き込まれ、今がある。
だから、マリアと出会えて、本当に良かった。
そして、先ほどディクソン公爵と会う時に、「僕を支える。」と断言してくれた言葉に嬉しさが込み上げる。
歩行時にふらついてしまうかもしれない僕に、あらかじめ支えてくれると言うことで、僕を安心させ、守ってくれようとしている。
とはいえ、僕が本当にふらついてしまったら、いくらマリアが自分がふらついたと庇おうとしても、僕だとわかってしまうだろう。
それでもあえて、自分のせいにすると言ってくれる優しさがマリアらしい。
彼女は常にぶれずに僕を支えてくれようとする。
そんなマリアがいるから僕は、明日ディクソン公爵に会う時も、冷静に振る舞うことができるだろう。
実は明日、初めて会う自分よりも高位の貴族と、調印し合うことに少なからず不安を抱いていた。
何せ僕は体が不自由で引きこもっていたから、普通なら領主同士がするであろう他の領主との会合などを一切やったことがない。
今回は領地を譲り受けるだけで、利を得るための交渉ごとでないから、それほど取り戻せないほどの失敗はしないだろうけれど、領主としてやっていく過程では、そのような場面もいずれ出てくるだろう。
その時に、僕達に少しでも有利に働くように、機転をきかせて相手の裏を読み取ることが求められる。
人に会うことのなかった僕にとって、非常に難しいことだ。
それでも、僕はここで自分の能力を示したい。
部屋に篭り、何も生み出さなかった自分が、ようやく領地経営を通じて価値を見出せるようになったのだから。
その原動力はいつだってマリアだ。
マリアに相応しい男に。
この思いが、少しでも弱気になりそうな僕を奮い立たせ、どうするべきか悩む時の道しるべになる。
だからこそ僕は、今まで領主として正しい選択ができている。
「マリアが良いと喜んでくれるものか。」そう思えた方を選ぶ。
それは、とてもシンプルだけど、間違いがないし、自信が持てる。
マリアのためにしたことは、すべて後悔しないと決めているのだから。
だから、勝手な願いだけど、どうかマリア、いつまでも僕のそばで見守っていてほしい。
僕は君がいる限り、いくらでも強い自分になっていくと誓うよ。
「こんにちは、お呼びと伺ったのですが…。」
子供達に連れられて村の大人達が不安そうな表情で集まって来た。
「やあ、初めまして。
こちらは隣街の領主のタイラー様で、こちらは、婚約者のマリア様です。
僕達はこの村の領主であるディクソン公爵の依頼を受けて、この村に来ました。
少しお話をしたいのですが、時間をいただきたい。」
ロドルフが説明する。
「わかりました、ではどうぞ。」
村人達は僕達を小さな集会所に案内した。
「早速ですが、僕はディクソン公爵からこの村の領主にと依頼されている。
僕はこの村を隣街と繋げて、同じように整備していこうと考えています。
そのことについて、皆さんはどう考えますか?」
村人達は互いに視線を交わし、沈黙の後、一人の男性が手を挙げる。
「この村は長い間、領主様に見捨てられたようなものでした。
どんなに窮状を訴えても、領主様は動いてくれることはなかった。
それが、隣街のように美しく変わると言うことですか?」
「はい、その通りです。
僕はこの村を安全で住みやすい街にしたいと思っています。」
「隣街みたいに美しくするなら、費用がかかるから、私達の生活は今より苦しくなるのでしょうか?
納めるものが大幅に増えるとか?」
「その点については今と変えないと約束します。
ですから、後で一人ずつこちらのロドルフに、現在の領主に納めている物を教えてください。
その帳簿もあると助かる。」
「わかりました。
私は村長なので、私の方からお渡しします。」
「すみません、あまり村が変わってしまうのは、残念なのですが…。
もちろん、領主様に逆らうつもりはありません。」
子供を背負った女性が心配そうに話し、それを見たマリアは優しく話しかける。
「大丈夫ですよ。
こちらのタイラー様は、とても理解のある優しい方です。
あなた方から見ても、隣の街の人々は苦しい生活を強いられているようには見えないはずです。
同じような状態になると言うことですから、あまり心配しないでください。
それに、先ほどタイラー様と、この村は安全に配慮しつつも、子供達が自然で遊べる場所にしたいと話していたんですよ。
でもそれは、私達が考えていたことで、もし、皆さんの希望があれば、まとめてロドルフさんに話していただければ、タイラー様が検討してくれるはずです。」
マリアの言葉に少し安心したのか、先ほどまでの恐々とした表情から人々の顔つきが穏やかになる。
「では、これからよろしく。」
強い反対の意見などなく、僕達は村の者達に受け入れられた。
今までディクソン公爵が長年放置していたから、隣街で実績をあげている僕達に対して、受け入れ易いのだろう。
それに、僕とロドルフが二人で話すよりも、そこにマリアが加わることで、特に女性が安心感を覚えたようだ。
その領主によって、民の意見など必要ないと考える者もいる。
搾取するだけして、虐げる領主も。
でも、僕達は「領地はそこに住む民があってこそ。」だと考えている。
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