【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

文字の大きさ
69 / 127
第1章

義妹は教えてくれた

しおりを挟む

 宮の外にはなるべく出るなとは言われた。

 だけど、アリスティナの所に行くのは別腹と捉えたテリアは今、瑠璃宮にいる。

 アレンとユラはもはや呆れた顔をして居た。あの手この手で此処へ来ようとして現在に至るので、結局2人がおれた。


  そこでテリアはこの間のセリウムの話をすると、アリスティナは話を聞き終わった後、静かにティーカップを置いた。


「……この話を、私の口からするべきでは無いのだと、思っていました。必要以上に怖がらせたくも無かった。
でも、テリア様はセリウムの目に止まってしまった。だから。お話します。

お兄様と、第2王子陣営にあったことを。」


「やはり、何かあるんですか?でも今まで言わなかったと言う事は、カルロ皇太子が知られたく無い話じゃ…」

「いえ、こうなっては知っておかなければなりません。二の舞にならないように。」

「二の舞?」

「……お兄様は2年前まで、腹心の部下が2人おりました。どちらも優秀な方々です。年齢はかなり上でしたが、ご学友でした。」

「2年前。まで?」

「はい、2年前、1人が絞首刑になり、1人は僻地へ追放となりました。」



  〝絞首刑〟その言葉が、テリアの脳の中にあの日の記憶を蘇らせる。

 アリスティナは話を続けた。

「2人とも、王族の暗殺計画を立てていた事が発覚しました。」

「….!」


(まさか……。)

 (あの時セリウムがした質問。『毒を飲むならどっちがいい?』っていう。あれはー…。)


「1人目の時は…あっという間でした。彼は身分が致命的に低かったせいです。きちんと調べられないまま…罪は確定して刑は執行されました。」

「……。」

「2人目も、絞首刑を言い渡されました。ですが、お兄様が…ずっと、皇帝の住う宮に向かって跪き、減刑を嘆願しました。
本来なら、関わってはいけなかった。
わかってはいても。
お兄様はなりふり構って居られなかったと思います。信用して居た者が立て続けに2人ですから。」

「……。」

「明らかに、何者かに嵌められたにしても。皇帝は嵌められる者が愚かである。

そう考えている人であると知りながら。
 
下手をしたら自分が、暗殺を支持した者だと疑われかねないと知りながら。

王宮にいる殆どの者が、そんなお兄様を、愚かで皇帝の器ではないと。判断しました。 

そこで哀れに思った皇妃様が提案したのです。被害にあった第2王子宮と皇太子宮を入れ替えてはどうかと。
そこまで誠意を見せたなら、第2王子派の溜飲は幾らか治るだろうと。

お兄様は迷わず承諾しました。」




「……。そんな。…。」

「第2王子派には目は光らせていたと言うのに、何があったのか、当時はわかりませんでしたが…テリア様の話を聞く限り、信じられませんが…当時もセリウムが、直接絡んでいたのでしょうね。」



  なんて…ことを。


 なんで、そんなことを出来てしまうと言うの。


 そんな事をされた側がどんな気持ちになるのか、全く考えもしない。


 私は、誰よりも。人に濡れ衣を着せる人間を赦せはしない。   


「赦せない、そんなの赦してはならないわ。
そんな奴が皇帝になるというの?却下!却下!絶対いや!
ならカルロ皇太子の方がまし!
愚か?人の命を惜しむのが愚かだというの?今の皇帝の方が愚か者よ!!!」



  アリスティナは、テリアの言葉に薄ら涙ぐんだ。その意見を言ってくれる者は、誰1人として此処には居なかったから。でもずっと、アリスティナが1人で抱えてきた想いだった。


「テリア様、だからテリア様には誤解をしないで欲しいのです。カルロお兄様の本質を。」

「誤解?」

「カルロお兄様は、本来とても、優しいんです。とてもわかりづらいのですが。

例えば、テリア様の事を決める権限はお兄様にあります。

今テリア様がいる宮を決めたのもお兄様です。一見はテリア様に意地悪をしているかのような、ひっそり目立たぬ奥地にありますが。

権力も何も無い、発言権の弱い皇太子の妃である者が余計な視線を受けぬようにする為です。セリウムも含めて。」


 「つまり。私が余計な人に目をつけられないためにあの宮を与えられたと?

まさか。考えすぎですよそれは。今はともかく。初期はとても私を嫌っていましたし。」


「否定はしません。でも初めから嫌われるようにしていたでしょう。 
お兄様は、意図的では無かったかもしれませんが、でも無意識下で理解していました。
権力のない者が今の自分と仲良くなればどうなるのか。お兄様はわかっていたから。」

「……。」

「気を許した者が、目の前で裁かれるのを今後見なくてはならない苦痛が待っている事を知っていたから。」

「……。」

「だから、2年前からずっと。お兄様は王宮内で私以外に親しい者を作ろうとしませんでした。とてもそれが痛々しくて。だけど、私も死を待つ人間だったからこそ何も出来なくて。

最近は、また。優しく笑う瞬間も見えてきました。雰囲気も、柔らかく…。  

だから。

お兄様はきっと、皇帝になります。その時はテリア様が側に。居てあげてください。」



     


 
しおりを挟む
感想 110

あなたにおすすめの小説

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...