【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜

マロン株式

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サブヒロインはナンパされる

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 勇者が旅に出て5日が経った。

 その間ユウフェは、繕い物をしたり、治癒師として診療をして稼いだり、野山で治癒薬の材料を集めたりして過ごしていた。 

 治癒薬の材料には、専門店で買えるものと、自分で採取しなければ手に入らないものがある。

 (今回の炎龍討伐は、きっと重症になるはず……。龍の鱗で負った傷は治りが遅いから、元の傷口も開くだろうから、できるだけ新鮮なミムの実を集めなきゃですね)

 髪をひとつに束ね、カゴを背負い、木の弓矢を持ち、森林へ向かおうとしたその時――。


「号外!号外だよ!勇者様一行がなんと昨夜、炎龍を討伐されたそうだ!!苦戦する事もなかったとか!」


    新聞を売る子供が街中を駆け抜けていく。
 その声に振り返ったユウフェの目に、新聞を片手に盛り上がる人々が映った。

 「見ろ、勇者様が抱えているのは龍の鱗だそうだ」

「どんな宝石よりも美しく値がはるんだろう?ほほう、これが…」

 と、あちこちから声が上がる。

 (えーーまだ五日しか経ってないのに? ヒロインと出会って、一度負傷してから挑戦するはずですが……)


「わ、私にも新聞をください!」

 腰につけている巾着から、小銭を出して新聞売りの人に渡す。其処には、確かに勇者の姿があり、しかも大怪我を負った様子もない。

(まだ、修行編の前なのに。苦戦した様子が見られない。幾ら万全な準備をしたと言っても…)  

「お嬢さんも勇者のファン?」


 憤り街中で新聞を熱心に見ながら佇むユウフェは後ろから、男に声をかけられた。


「…?えっと」


  顔立ちの良い茶髪の男はへらりと笑う。

 俗に言うナンパな訳だが、いつもお供を付けないで活動するのは自領(公爵家の護衛が隠れてついてた)でのみだった。

 ユウフェは何で話しかけられたのか分からずに、キョトンとする。

「…、かっわいい反応だね。こんなに美人さんなのにもしかしてこう言うの初めて?」

 馴れ馴れしく肩に手を回されて困惑してしまう。

「あの…?」

「一緒に食事をしようよ、実は俺も勇者のファンでさ。これを期にーー」


 ガシッ


 肩に回されていた手が退いたかと思うと、その男の腕が、形の良い、やや日焼けしている手に捕まれていた。

 男が「いたたっ」と声を上げるも、掴んだ手を離す気配がない。頭までフードを被り外套に身を包んだその人物は言った。

「彼女に触らないでくれないか?」

「…っ!?」

  フードから見えた横目で自分を見る目の光に、男は「ひっ」と声を上げて冷や汗をかき後ずさって走ってゆく。

 ユウフェは外套に身を包んだその人物を見上げて瞳を輝かせる。

「勇者様!」

「ただいま。帰るのが遅くなってごめん。ちょっと寄るところがあったから…」

「全然遅くないですよ!むしろ何日早いんだろう…。そうだ、お怪我は?」

「大した怪我はしなかったけど。強いて言うなら古傷が開いたかな?」

「それは大変です!直ぐお屋敷に帰って手当てをしましょう!」


  ユウフェは勇者の手を取って、急ぎながら屋敷の方に歩く。
 その様子に、笑みを浮かべた勇者が聞いてきた。

「ところで、お供もつけないで何処に行こうとしてたの?」

「薬材の調達に、森林へ!自領ではお供をつけずに、たまにこうして民に紛れて生活していたんですよ。
こちらでも同じ風に過ごそうと思っておりまして。その方が楽ですしね!」

「ううん…俺が居ない時は今度から絶対つけて。
自領だと皆ユウフェの顔を見知っているから、恐れ多い事する者も少なかっただろうけど。(邸宅出た時点で公爵家の護衛とかついてそうだし。)ここはそうもいかないから」

「ふふっ。勇者様は心配し過ぎですよ!」


 勇者が予想より早く帰ってきた嬉しさで、今日抱いた疑問などすっかり頭から飛んでいた。
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