【完結】憧れの異世界転移が現実になったのですが何か思ってたのと違います

Debby

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第四章 憧れないからヤってしまおうと思います・編

4-3

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 騎士団長が驚きの表情で私を見ていた。
 後ろの騎士二人は一瞬ぽかんとしたあと、私の発言を咎めるように睨んできた。二人のうちの一人は剣に手をかけていたから驚きだ。──そういえば昨日、前を通っただけで切られそうになったっけ。
 私は相手するぞと言わんばかりに騎士団長の後ろの騎士を睨み付けた。私の必殺!結界パンチをお見舞いしようか!?
 すると二人の騎士が「はっ、はっ」と何かに圧迫されているかのように短く息を荒くし始めた。
 騎士団長さんは私を見ると何かを感じ取ったように一瞬
 そして後ろを振り返らずに、「ビハム、退室しろ」と声を掛けた。
 おそらくビハムは剣に手をかけていた方の人らしく、驚いたような顔をすると「はっ」と短く答えて部屋を後にした。退室前に胸を押さえながらも私を一睨みするのを忘れなかったが、その瞬間「ビハムっ!」と短く名を呼ばれ、慌てて頭を下げると出て行ってしまった。
 なになに?騎士団長さんは頭の後ろに目があるの?
 彼が退出した瞬間、残った騎士が大きく息を吐いた。

(ピヨさん、もしかして威圧してました?)

 ──少しな。・・・必殺結界パンチとやらも当たらなくては意味がないぞ。騎士の相手ではな・・・

 私とピヨさんが脳内で会話をしていると、

「──すまない、騎士には治癒魔法の使い手を丁重に王宮まで連れてくるようにと指示していたのだが、何か騎士に問題が?」

 平民が貴族に話しかけるなとか言われたらどうしようかと思ったけど、騎士団長さんはそんな人ではないらしかった。昨日の騎士さんの態度と違いちょっと驚く。

「そうですね。治療院の中で整列するために人が座っている邪魔な椅子を蹴り飛ばしたようですし、そのせいで床にうずくまったお年寄りに声を掛けようとしたら殺されそうになりましたね。
 あとは『王女殿下の治療をさせてやるから王宮に連れていく。ありがたく思え』と言って殴りつけた上で問答無用で引きずり無理矢理連れて行こうとしてたし、そしてそれを止めようとする人を風魔法で壁に叩きつけて怪我を負わせてましたね。
 だからてっきり騎士を名乗る誘拐犯かと。なのに本当に王宮に着いた挙句に、あれが王女殿下流の召喚と知ってびっくりしてつい声に出してしまいました。すみません」
 あ、私は殴られた人ではなくて、殴った人ですけどね。
 そう続けようと思ったら、「貴様!」と後ろに立っていた騎士が前に出て剣を抜こうとした。それを騎士団長が手で制す──前に、騎士は胸を押さえて膝をつき、「はっ、はっ」と短く息を吐きだした。

 ──主よ冷静になれ。王女への不敬ととられ、面会出来なくなるぞ。それは本意ではあるまい。主は逃げれば終わりだが、王女をどうにかせねば犠牲は増えるばかりだ。

 ピヨさんにそう言われてしまった。
 そ、そうでした。おそらく王女様を治癒できるのは私と七星だけだ。
 私が王女様に会えずに治癒できなかったら犠牲は増えるのだ。
 私が一歩下がるとピヨさんが威圧を止めた。騎士団長も威圧の余波を受けていたのか、短い息を吐き私に問いかけた。

「疑っているわけではないが・・・本当に?」

 そういいながらも、目線が後ろの三人を見ている。

「エルナトの街に来た奴らは全員では無いかも知れませんが、酷かったですよ。
 あの調子じゃ他の所もそうなんじゃないですかね。あ、でも私以外の人に聞いても無駄ですよ。告げ口したと騎士団長様のいないところで報復されては命がいくつあっても足りませんから、聞かれても答えられません」

 そう騎士のヘイトは私に向けなくてはならない。
 騎士団長は話の分かる人のようで、「そうだな」と短く言った。
 大体こんな小さな子が目蓋を腫らして親の同伴なしでこんなところにいることで察して欲しいよね。

 その後、私たちは王女様の私室に案内された。
 部屋の前で騎士団長に付き従っていた騎士は立ち止まった。彼らはこの先には進めないらしい。
 ま、王女様の私室に若い騎士を入れる訳もないか。
 治癒魔法の使い手も「女性」を集めてるって言ってたし。

 部屋に入ると昼前なのにかなり暗かった。
 カーテンが閉められているからなのだが、香水?かなんかの匂いが充満していて、香水を使わない派の私にはちょっと臭く感じた。
 部屋を見渡すと続き部屋があり王女様はそっちにいるようで、侍女らしき女の人が出てきた。あっちは寝室なのかもしれない。

「ベラトリックス王女殿下の侍女カーラだ」

 騎士団長が女性を紹介してくれたが、カーラという人物は無言。
 平民に声をかけるつもりはないらしい。

「一人ずつこちらへ来て王女殿下に治癒魔法を掛けなさい」

 カーラがいきなりそう言うが、みんな無理だとわかっているので動けないでいる。

「王女殿下をお待たせするつもりか!?」

 カーラはイラついたのかそう言っておばあちゃんに手を伸ばそうとしたので、私はおばあちゃんとカーラの間に体を滑り込ませた。

「ちょっと待ってください。王女殿下は私が治します。ただし、条件があります」

「平民ごときが何を!──な、お、お前、王女殿下の御部屋で被りものとは何様のつもりだ!!」

 今まで目に入っていなかったのか、私がフードを被っているのを見たカーラが激昂し、私に手を上げようとしたので咄嗟に避ける。

「ジュノー騎士団長!何故止めるのですか!」

 カーラの声が聞こえ、顔を上げると騎士団長さんが、彼女の手を止めてくれていた。

「あ。」

 叩かれはしなかったけど、避けた時の動きでフードが脱げてしまった。

「「赤いの髪と瞳ガーネット!?」」

 こっちの三人は貴族を見る機会もそんなに無いでしょうから驚くのも分かるけど、あなた達がそんなに驚くことかな?見慣れているでしょうに・・・あ、そっか。ここまで鮮やかな色は攻略対象のお家だけでした。
 私の色を見て二人が戸惑っているのを良いことに、私はカーラとの距離をつめ彼女に耳打ちをした。

「何故それを!?」

 私は続けて二十代の女の人の手を取ると、治癒魔法で内出血を消して見せた。
 騎士団長とカーラ、三人が息を飲む。

「私には王女殿下を治す魔法があります。さあ、条件を飲むにしても飲まないにしても、あなたにそれを決めることは出来ないはずです」

 私がそう言うと、騎士団長はカーラを見て頷いた。
 カーラはしぶしぶといった感じで続き部屋に入っていった。

「あ、言っておきますが貴族公爵家とは無関係ですよ」

 私は何か言いたげな騎士団長を見上げると、聞かれる前にそう言っておいた。

 どれくらい待っただろう。
 しばらくすると続き部屋のドアが開き、金髪碧眼の美しい女性がカーラに手を引かれながら出てきた。王女様だ。
 騎士団長が最敬礼をしたので私たちもそれに倣う。
 王女様がソファーに腰かけると、「よい。頭を上げ、楽にしなさい」と、声がかかったので顔を上げる。
 暗くてよくわからないが、王女様は不健康そうだった。
 七星が言っていた感じよりつらそうだ。
 ゲームの画面からはこれが伝わらなかったのか、それとも七星がゲームを進めなかったため容態が変わったのだろうか。

「そなた、本当にわたくしの病を治せるのか?」

 不安そうに揺れる瞳──。私は王女様がかわいそうになって、軽く治癒魔法をかけた。
 王女様の体が光り、そして光が消える。

「お前!何を!!」
「待て!カーラ」

 突然の出来事にカーラが立ち上がるが、王女様がそれを止める。
 治癒魔法をかけるために呼んだくせにかけると責めるのか?おかしい人だな。

「痛みが・・・消えたのだ。──分かった、そなたの条件とやらを聞こう」

 王女様の瞳に希望が宿ったのが分かった。
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