【完結】憧れの異世界転移が現実になったのですが何か思ってたのと違います

Debby

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第四章 憧れないからヤってしまおうと思います・編

4-6

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「コーヒーに砂糖はいる?」

 そう言ってにっこり笑うのは、黒髪碧眼のアステリオン・プレイアデス第二王子殿下だ。
 襟足で髪を伸ばし、後ろで束ねている。久しぶりに真っ黒な髪色をみたが、懐かしさは感じても、好感は持てない。
 ハンサムだけど細身でタイプじゃないからか、性格が悪そうだからか。
 それとも──

(『鑑定』)

 ----------
 コーヒー(毒入り)
 美味しいが、飲むと死んでしまうかもしれない
 ----------

 それとも力技?で私からピヨさんを奪おうとする汚いヤツだからか。
 ピヨさんが捕まらないから、ピヨさんの主を殺して新たな主になるつもりらしい。

「僕の前だからって緊張しなくていいよ。遠慮せず飲んでくれ」

(いや、遠慮します)

 その時、ピヨさんがピョコピョコと私の頭に移動してきた。ピヨさんの動きに合わせて第二王子の視線も動く。

 何だろう。
 分かりやす過ぎて、この人王様に向いてないのでは?と思う。
 そもそもその高位魔獣を従魔に出来る実力?のある私を簡単に亡き者に出来ると思っているのもどうかと思うし、そうしてまで欲している高位魔獣が、主の命を脅かそうとする悪意──毒ごときに気付かないと思っているこの矛盾・・・

「いただきます」

 私は第二王子の視線が愛くるしいピヨさんに釘付けになっているその隙に、コーヒーを飲むと見せかけて収納に入れた。
 これは一般的な異世界で危機を回避する方法だ。

──さて、星良どうする?ヤるか?

 え、それは何かするって意味の「やる」ですか?それとも物騒『殺』な方の意味ですか?
 私は穏便に王宮を出たいんですよ。旅に出るにしても、国に追われる身ってのはちょっとね。
 それにまだ国のトップが食べる極上の宮廷料理を味わっていないし。
 やるにしてもるにしても、それは食事会の後だ。

 第二王子がじっとこっちをみている。
 このコーヒーを入れたのは第二王子ではない。侍女、でもなく、侍従のハダルだ。さっき紹介された。
 しかしこの様子から、第二王子も知っているに違いない。
 二人はコーヒーを飲んだハズの私に何も変化が見られないため、顔を見合わせている。

(だから、わかり易いって)
「それで、ご用件は?」

 にっこり笑っていう私に驚きはしたようだが、しっかり気持ちを建て直し、焦ることなく第二王子は言った。

「いや、妹の治療をしてくれたとのことで、そのお礼を言おうと思ってね」

 その後、当たり障りのない会話をして退席した。


 ★


 星良スピカの立ち去った部屋では第二王子と侍従のハダル、そしてピヨさんの件を報告していた男が話をしていた。

「何故効かなかったのでしょう」
「あの魔獣の力でしょうか」
「え?そんなことが?」

「こうなったら、あの娘ごと手元に置くしかないか。・・・好みではないが仕方がない」

 第二王子の浅はかな計画は次のステップに進むのであった。


 ★


 食事会当日。王族と食事をするという理由で着飾られたかわいい私(大人目線でね)は、会場の入り口で立ち尽くしていた。

 国王と側妃だけじゃなかったんかい。

 私は頭の中で盛大に突っ込みをいれた。
 異世界の王族と言えば、長テーブルに身分の順に座るのが普通だと思っていたが、目の前にはとても大きな丸テーブルが置いてあり、国王様に王妃様、側妃に第一王子のシリウス、第二王子のアステリオン、第一王女のベラトリックスらがズラリと座っていた。
 私的な席だからみんなの顔が見えるようにと配慮されとのことらしいが、余計なお世話だ。
 唯一の救いはテーブルが大きく、それぞれの席が離れているということくらいか。

 しかし、第一王子──流石メイン攻略対象なだけあって金髪碧眼、優しそうで、ザ・王子様って感じだ。
 これが乙女ゲームのメイン攻略対象か~とマジマジ観察していると、第一王子がにっこりと王子様スマイルで笑いかけてきた。

(うえっ)

 反射的に出た私の嫌そうな顔を見た第一王子は、気を悪くした風もなくさらに余裕のある大人の微笑みをかまし、畳みかけてくる。
 流石ヒロインと浮気するだけの事はあるな。軽そうだ。誰にでもこの感じなら悪役令嬢さんも気が気ではないだろう。それとも物語が変わってるからキャラも変わったとか?

 それにしてもたかが平民の私が何故簡単に第一王子と目が合ったのか。
 それは、さすがに王族との食事でフードを被るわけもいかないわけで・・・お陰さまで今、総勢六人の王族からの視線を独り占め状態だからだ。
 誰を見ても視線がかち合ってしまうのだ。
 それもそうか、貴族の庶子であろう平民の皆様は皆カラフルとはいえ暗い色味をしていた。
 そんな中こんな鮮やかな赤髪ガーネットを持つ平民が現れたのだ。そしてその色は公爵家の色──。まさか公爵が!?とマジマジと見たくなるというものだろう。

 ピヨさん情報によると、第二王子は王妃の実子で後の二人は側妃の子供らしい。
 王妃と側妃の仲は良好。
 貴族たちで構成された議会で話し合われ、総合的な判断から第一王子が王太子──次期国王に決まったとの事だった。

(そして、それに納得していないのが・・・)

──第二王子と言うわけだ。さすがに他の王族が食事を摂っている場で毒を盛ることはないだろうが、何かを仕掛けてくるのは間違いないだろう。気を付けろ。

 さすがに王族との食事の席に従魔で小鳥でシマエナガ可愛いとはいえ魔獣を同席させる訳にはいかないとのことで、現在ピヨさんは自身で姿を消して私の肩に乗っている。
 その事に気付いているのは、何故かこの場にいる壁際の(護衛かな?)騎士団長くらいだろう。

 国王から王女様の治療に関してのお礼を言われた後、食事会ははじまった。
 よく小説で「緊張して味がしない」という文言を目にするが、そんなことは全くなく、とても美味しく頂いた。美味しいものは美味しいのだ。
 何なら食事のお陰で緊張がとけた感じすらある。

 高校生の時に習ったテーブルマナーと、食べ方がわからないものに関しては王女様の所作を盗み見ることでなんとか凌ぎきったと安心して一息ついたそんな時、第二王子がぶっ込んできた。

「父上、スピカは長年苦しんできたベラの病を治せるほどの治癒魔法の使い手なのでしょう。
 ベラも仲良くしているようですし、この髪と瞳の色ガーネット。きっと高位貴族の血を継いでいるに違いありません。聖女認定して私の婚約者に据えてはいかがでしょうか」

 これにギョッとしたのは私だけらしい。恐ろしいことに国王も王妃も、王女様も満更でもなさそうなのだ。
 第二王子め。私ごとピヨさんを手に入れる事にしたのか──しかも婚約者だと?

「お断りします」

 ゾッとして、思わず口に出してしまった。

「ほう、そなたは第二王子を望まぬか。──令嬢からの人気はこの国一なのだが」

 私的な場だからだろうか。気を悪くした風もなく意外そうに国王は私に言った。
 そりゃ、貴族令嬢にとってはこの顔と地位があれば性格なんて二の次でしょうよ。

「私は冒険者として生計をたてている身、過去どのような血が入っていようと、聖女なんて・・・ましてや王族の婚約者なんて、務まるはずがありません。
 第二王子殿下も冗談は顔だけにしてくださいませ。おほほほほ」

 ん?なんか言葉選び間違えたかな?
 壁際の騎士団長が呆れたような顔をしていたが、第二王子自身は気にすることもなく続けた。

「それならば尚更だ!愛しい人に冒険者なんて危険なことをさせてはおけない。どうだろうスピカ、もしこの話を断るというのなら、に君が冒険者としてこの先やっていけるのか、僕に見せて安心させてくれないか?」
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