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16 収束
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「これが私・・・」
キャナリィからの嫌がらせというドレスの箱を見ると、ストロベリーは自分には流行のドレスなど似合わない。それが苦痛で男装をしていたのだと白状した。
そんなストロベリーにクラレットは心底分からないと言った風に声を掛けた。
「カーマイン様にはストロベリー・カーマインという名のブランドがあるのに、何故わざわざ巷の流行に乗る必要があるのですか?」
「?」
「仕事のしやすさからパンツスタイルを望まれるのであれば構いませんが、敢えて男物を身につける必要は無いでしょう。自分に似合うスタイルを作ってしまえば良いのです」
ストロベリーは何を言われているのか分からなかった。
令嬢は母のように誰からも望まれるような可愛らしく儚げな美しさを持つことこそが求められるのでは?
そんなストロベリーの想いを知ってか知らずか、クラレットは続ける。
「どこかの貴族家に嫁入るする必要があるのならともかく、あなたは次期公爵家当主。誰の好みに合わせ、媚びる必要があるというのですか?」
──あなたは、選ぶ側なのです。
クラレットの言葉に、ストロベリーは目が覚める思いだった。
「カーマイン様は背が高く中性的な顔立ちですもの。カーマイン様の本国ではプリンセスラインやベルラインなどの可愛らしいご令嬢に好まれる型のドレスが流行っているようですが、公爵令嬢が流行りを気にする必要などありませんわ」
「カーマイン様にはスタイルが良いですし、より縦を強調するエンパイアやマーメイドラインの方がお似合いですわ」
「ビスチェやシアー素材でデコルテを見せるデザインがお似合いになられるかと・・・」
などと言われながら、採寸の時と同じ女性従業員たちにあっという間に整えられたのだ。
皆に勧められて嫌々前に立った姿見の中には、今まで似合わないのを分かっていながらも可愛らしい流行のドレスを着て自信なさげにしていた令嬢の姿は無かった。
束ねていた髪は緩く巻かれ、スレンダーラインのおかげかドレスを着る際に身長を気にして丸めていた背筋を伸ばしても何の違和感も無い。それどころか今まで嫌いだった父に似た中性的な容姿のおかげで凜とした──神秘的な印象すら受ける仕上がりとなっていた。
目標にしていた母に少しでも近付きたいとの想いが強く、流行ばかり追い求めていた自分に、周りの物は何も言えなかったのかも知れない。
「ありがとう──」
込み上げるものを必死に押さえ、その場にいる者たちへお礼を言うストロベリーに、クラレットは良い笑顔でいった。
「いずれカーマイン様の祖国に進出する予定ですの。またご利用いただければ嬉しいですわ」と。
その後、ストロベリーが一番に向かったのはローズの元だった。
二人が何を話したのかは一足先に会場に戻ったクラレットには分からない──。
ストロベリー・カーマイン公爵令嬢は一人で会場へ戻ってきた。
スレンダーなシルエットのデイドレスを纏ったその姿に、その場にいた全員が見とれ、ため息をついた。
ストロベリーはその視線を気にすることもなく真っ直ぐキャナリィの待つテーブルへと向かうと、席に着いた。
「詳しいお話は後日で宜しいかしら」
キャナリィはそう言うと言葉を続けた。
「あの日、あなたの採寸を待つ間に注文したドレスですわ。ドレスを好まない様だったから嫌がらせになるかと思ったのですが残念──よく似合っていらっしゃるわ」
それを聞いたストロベリーは目を見開き驚いた後、とても美しく微笑んだ。
そしてガーデンパーティーの数日後、ストロベリー・カーマイン公爵令嬢は本来の留学先である国に旅だった。
キャナリィからの嫌がらせというドレスの箱を見ると、ストロベリーは自分には流行のドレスなど似合わない。それが苦痛で男装をしていたのだと白状した。
そんなストロベリーにクラレットは心底分からないと言った風に声を掛けた。
「カーマイン様にはストロベリー・カーマインという名のブランドがあるのに、何故わざわざ巷の流行に乗る必要があるのですか?」
「?」
「仕事のしやすさからパンツスタイルを望まれるのであれば構いませんが、敢えて男物を身につける必要は無いでしょう。自分に似合うスタイルを作ってしまえば良いのです」
ストロベリーは何を言われているのか分からなかった。
令嬢は母のように誰からも望まれるような可愛らしく儚げな美しさを持つことこそが求められるのでは?
そんなストロベリーの想いを知ってか知らずか、クラレットは続ける。
「どこかの貴族家に嫁入るする必要があるのならともかく、あなたは次期公爵家当主。誰の好みに合わせ、媚びる必要があるというのですか?」
──あなたは、選ぶ側なのです。
クラレットの言葉に、ストロベリーは目が覚める思いだった。
「カーマイン様は背が高く中性的な顔立ちですもの。カーマイン様の本国ではプリンセスラインやベルラインなどの可愛らしいご令嬢に好まれる型のドレスが流行っているようですが、公爵令嬢が流行りを気にする必要などありませんわ」
「カーマイン様にはスタイルが良いですし、より縦を強調するエンパイアやマーメイドラインの方がお似合いですわ」
「ビスチェやシアー素材でデコルテを見せるデザインがお似合いになられるかと・・・」
などと言われながら、採寸の時と同じ女性従業員たちにあっという間に整えられたのだ。
皆に勧められて嫌々前に立った姿見の中には、今まで似合わないのを分かっていながらも可愛らしい流行のドレスを着て自信なさげにしていた令嬢の姿は無かった。
束ねていた髪は緩く巻かれ、スレンダーラインのおかげかドレスを着る際に身長を気にして丸めていた背筋を伸ばしても何の違和感も無い。それどころか今まで嫌いだった父に似た中性的な容姿のおかげで凜とした──神秘的な印象すら受ける仕上がりとなっていた。
目標にしていた母に少しでも近付きたいとの想いが強く、流行ばかり追い求めていた自分に、周りの物は何も言えなかったのかも知れない。
「ありがとう──」
込み上げるものを必死に押さえ、その場にいる者たちへお礼を言うストロベリーに、クラレットは良い笑顔でいった。
「いずれカーマイン様の祖国に進出する予定ですの。またご利用いただければ嬉しいですわ」と。
その後、ストロベリーが一番に向かったのはローズの元だった。
二人が何を話したのかは一足先に会場に戻ったクラレットには分からない──。
ストロベリー・カーマイン公爵令嬢は一人で会場へ戻ってきた。
スレンダーなシルエットのデイドレスを纏ったその姿に、その場にいた全員が見とれ、ため息をついた。
ストロベリーはその視線を気にすることもなく真っ直ぐキャナリィの待つテーブルへと向かうと、席に着いた。
「詳しいお話は後日で宜しいかしら」
キャナリィはそう言うと言葉を続けた。
「あの日、あなたの採寸を待つ間に注文したドレスですわ。ドレスを好まない様だったから嫌がらせになるかと思ったのですが残念──よく似合っていらっしゃるわ」
それを聞いたストロベリーは目を見開き驚いた後、とても美しく微笑んだ。
そしてガーデンパーティーの数日後、ストロベリー・カーマイン公爵令嬢は本来の留学先である国に旅だった。
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