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いざ、競技会!
第160話 プランB
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光太朗の一手が、アルスのシールドによって阻まれる。
完璧な一手だった。属性さえ間違っていなければ、あそこで勝敗は決まっていたはずだ。
そしてリーリュイは、光太朗の手に握られている短剣が、彼の物ではない事に気付いた。
(……! なんだあの鈍らは! まさか……)
光太朗の両太腿には、短剣をしまうホルダーが巻きつけてある。そのホルダーには何も刺さっていない。
光太朗は、短剣を何本も使う戦い方を好む。1本で戦いに臨むなど、考えられない事だった。
眉根を寄せたリーリュイの後ろから、下賤な笑い声が響く。第一皇子のエイダンと、その弟マシューだ。
「あ~あ、見てみろよ。魔法が使えないやつなんか出場させるから。お前の大事なフェンデ、死ぬかもなぁ?」
リーリュイが鋭い目線で振り向くと、2人は驚いたように身を引いた。
いつも能面のようなリーリュイが、憤りを露わにしている。その身体からは殺気にも似た空気が放たれていた。
エイダンは思わず喉を鳴らし、リーリュイを見据える。
「……っなんだその目は! 俺に逆らう気か!?」
「……これは、兄上の指示ですか? 騎士が自前の武器以外で戦うことなど、あり得ない」
「さぁな、俺は知らないぞ。お前の戦い方が派手過ぎるのが悪いんだよ。軍司令部が動いたんじゃないのか?」
複数の破裂音がして、歓声が上がる。
闘技場へ目を遣ると、アルスの水魔法が光太朗に襲い掛かっていた。魔法攻撃は、シールドがないと回避が難しい。
特に水魔法は、雨のように礫を降らせるものが多いのだ。動きが素早い光太朗でも、全て回避する事は不可能だ。
リーリュイの背中が、恐怖と憤りでちりちりと粟立つ。
競技会は、軍司令部で厳格に管理されていると思っていた。こうした不正が起こることも、過去には無かったのだ。
背後に立つマシューが、リーリュイに向けて吐き捨てる。
「大体お前が大人しくしておかないから、こうして大事なものが標的になるんじゃないのか? 王座には関心が無いと言っていただろう!」
光太朗の腕に礫が掠め、血飛沫が散る。一瞬息を止めたリーリュイの肩を、エイダンが掴んだ。
「聞いてるのか、リーリュイ!」
「喧しい!!」
リーリュイは振り向きざまに一喝し、エイダンの手を叩き落とした。
怒りのあまり、リーリュイの身体の周りに雷気が立ち昇る。バチバチと青いスパークを身に纏い、リーリュイはエイダンとマシュー鬼神のごとく睨みつけた。
そして怒りに任せたまま、有らん限りの声で、愛しい人の声を呼ぶ。
「光太朗!!」
名前を呼ばれ、光太朗は腕を押さえながら、声の元を見た。王族側の観覧席に、青い光が見える。
ぼんやりした輪郭でも、それがリーリュイだと分かった。怒りの感情がビリビリとここまで伝わってくる。
(うわぁ……! ほら見ろ! リュウめっちゃ怒ってるじゃん! こっわ!!)
光太朗が口を引き結んだまま観覧席を見上げていると、またリーリュイから怒りの声が降ってくる。
「あれを使え!! もう遠慮などするな!!」
「……えぇ……いいのか?」
リーリュイに聞こえないほどの声で、光太朗は呟く。
あれの練習はキースと何度もしてきた。しかし最終手段として使う予定だったのだ。
「コウ!! プランB!」
後方から、後押しのようにキースの声が聞こえる。
「いえっさー、団長殿、班長……」
光太朗は頷いて、しゃがみ込んだ。地面に手をつくと、慣れた感覚が手の平に伝わってくる。
アルスが詠唱を始め、水の玉が空中へ浮かぶ。それらが一斉にこちらへ飛来するのを見ながら、光太朗は晄露を引き出した。
引き出した晄露は意志を持ったように形を成し、光太朗の前に盾を形成する。アルスの水魔法は晄露の盾によって全て阻まれた。
晄露に触れた礫は蒸発し、霧散して行く。光太朗の盾には傷一つ付いていない。
観覧席にどよめきが広がった。
アルスも目を見開き、光太朗の黄金のシールドを見据える。
「お、黄金のシールド……?」
アルスは一歩引き、戸惑いながらも再度詠唱を始める。光太朗の出した盾の属性が分からないのだろう。
(これに属性は無いんだよ。ごめんな、アルス)
光太朗がまた地面に手をつけると、アルスの炎の魔法が盾を襲った。しかしその魔法も、晄露の盾の前では霧散してしまう。
キースと何度も練習して分かったことは、晄露が使いようによっては最強の武具になる事だった。晄露には属性が無く、全ての魔法攻撃が無効だからだ。
キースが力を込めて撃った魔法でも、光太朗の盾には傷一つ付けられない。
頭の中でイメージを固め、光太朗はまた新たに晄露を引き出す。現れたそれは、既に求める姿になっていた。
(刀身は2尺4寸。反りは先反り……。よしっ、巧く出来たな!)
地面から引き出された『日本刀』を手に取り、光太朗は振って感触を確かめた。そしてアルスを見て、申し訳なさそうに笑みを作る。
「ごめんなぁ。うちの団長がご立腹みたいだから……こっちの武器使うね?」
見たことの無い武器に戸惑うアルスに向けて、光太朗は駆けだした。
光太朗の一手が、アルスのシールドによって阻まれる。
完璧な一手だった。属性さえ間違っていなければ、あそこで勝敗は決まっていたはずだ。
そしてリーリュイは、光太朗の手に握られている短剣が、彼の物ではない事に気付いた。
(……! なんだあの鈍らは! まさか……)
光太朗の両太腿には、短剣をしまうホルダーが巻きつけてある。そのホルダーには何も刺さっていない。
光太朗は、短剣を何本も使う戦い方を好む。1本で戦いに臨むなど、考えられない事だった。
眉根を寄せたリーリュイの後ろから、下賤な笑い声が響く。第一皇子のエイダンと、その弟マシューだ。
「あ~あ、見てみろよ。魔法が使えないやつなんか出場させるから。お前の大事なフェンデ、死ぬかもなぁ?」
リーリュイが鋭い目線で振り向くと、2人は驚いたように身を引いた。
いつも能面のようなリーリュイが、憤りを露わにしている。その身体からは殺気にも似た空気が放たれていた。
エイダンは思わず喉を鳴らし、リーリュイを見据える。
「……っなんだその目は! 俺に逆らう気か!?」
「……これは、兄上の指示ですか? 騎士が自前の武器以外で戦うことなど、あり得ない」
「さぁな、俺は知らないぞ。お前の戦い方が派手過ぎるのが悪いんだよ。軍司令部が動いたんじゃないのか?」
複数の破裂音がして、歓声が上がる。
闘技場へ目を遣ると、アルスの水魔法が光太朗に襲い掛かっていた。魔法攻撃は、シールドがないと回避が難しい。
特に水魔法は、雨のように礫を降らせるものが多いのだ。動きが素早い光太朗でも、全て回避する事は不可能だ。
リーリュイの背中が、恐怖と憤りでちりちりと粟立つ。
競技会は、軍司令部で厳格に管理されていると思っていた。こうした不正が起こることも、過去には無かったのだ。
背後に立つマシューが、リーリュイに向けて吐き捨てる。
「大体お前が大人しくしておかないから、こうして大事なものが標的になるんじゃないのか? 王座には関心が無いと言っていただろう!」
光太朗の腕に礫が掠め、血飛沫が散る。一瞬息を止めたリーリュイの肩を、エイダンが掴んだ。
「聞いてるのか、リーリュイ!」
「喧しい!!」
リーリュイは振り向きざまに一喝し、エイダンの手を叩き落とした。
怒りのあまり、リーリュイの身体の周りに雷気が立ち昇る。バチバチと青いスパークを身に纏い、リーリュイはエイダンとマシュー鬼神のごとく睨みつけた。
そして怒りに任せたまま、有らん限りの声で、愛しい人の声を呼ぶ。
「光太朗!!」
名前を呼ばれ、光太朗は腕を押さえながら、声の元を見た。王族側の観覧席に、青い光が見える。
ぼんやりした輪郭でも、それがリーリュイだと分かった。怒りの感情がビリビリとここまで伝わってくる。
(うわぁ……! ほら見ろ! リュウめっちゃ怒ってるじゃん! こっわ!!)
光太朗が口を引き結んだまま観覧席を見上げていると、またリーリュイから怒りの声が降ってくる。
「あれを使え!! もう遠慮などするな!!」
「……えぇ……いいのか?」
リーリュイに聞こえないほどの声で、光太朗は呟く。
あれの練習はキースと何度もしてきた。しかし最終手段として使う予定だったのだ。
「コウ!! プランB!」
後方から、後押しのようにキースの声が聞こえる。
「いえっさー、団長殿、班長……」
光太朗は頷いて、しゃがみ込んだ。地面に手をつくと、慣れた感覚が手の平に伝わってくる。
アルスが詠唱を始め、水の玉が空中へ浮かぶ。それらが一斉にこちらへ飛来するのを見ながら、光太朗は晄露を引き出した。
引き出した晄露は意志を持ったように形を成し、光太朗の前に盾を形成する。アルスの水魔法は晄露の盾によって全て阻まれた。
晄露に触れた礫は蒸発し、霧散して行く。光太朗の盾には傷一つ付いていない。
観覧席にどよめきが広がった。
アルスも目を見開き、光太朗の黄金のシールドを見据える。
「お、黄金のシールド……?」
アルスは一歩引き、戸惑いながらも再度詠唱を始める。光太朗の出した盾の属性が分からないのだろう。
(これに属性は無いんだよ。ごめんな、アルス)
光太朗がまた地面に手をつけると、アルスの炎の魔法が盾を襲った。しかしその魔法も、晄露の盾の前では霧散してしまう。
キースと何度も練習して分かったことは、晄露が使いようによっては最強の武具になる事だった。晄露には属性が無く、全ての魔法攻撃が無効だからだ。
キースが力を込めて撃った魔法でも、光太朗の盾には傷一つ付けられない。
頭の中でイメージを固め、光太朗はまた新たに晄露を引き出す。現れたそれは、既に求める姿になっていた。
(刀身は2尺4寸。反りは先反り……。よしっ、巧く出来たな!)
地面から引き出された『日本刀』を手に取り、光太朗は振って感触を確かめた。そしてアルスを見て、申し訳なさそうに笑みを作る。
「ごめんなぁ。うちの団長がご立腹みたいだから……こっちの武器使うね?」
見たことの無い武器に戸惑うアルスに向けて、光太朗は駆けだした。
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