【完結】異世界で出会った戦友が、ゼロ距離まで迫ってくる! ~異世界の堅物皇子は、不具合転移者を手放せない~

墨尽(ぼくじん)

文字の大きさ
241 / 248
最終章 そこに踏み入るには

第238話 切り札

しおりを挟む

 魔導騎士団を率いているのはキースだった。彼は馬を降りると、腰の後ろに両手を当てる。騎士がする敬礼の仕草だ。
 キースに続いて後ろの騎士らも、次々と馬を降り敬礼し始めた。

 深く息を吸ったキースは、真っ直ぐに通る声を放つ。

「我々魔導騎士団は、コウと共に生きると決めました。王妃が消したコウを、我々はまだ覚えています。彼と、皇太子殿下だけに、忠誠を誓います」
 
 キースの言葉の後、騎士ら全員が跪いた。立っているキースは、王妃に鋭い目線を送る。

「王都に残った国軍は、コウの指示で制圧した。……我々は、コウと皇太子以外の命令を聞くつもりはない!」
「……!! ……う、嘘よ……」

 王妃の喉からひゅっと悲鳴のような声が漏れる。騎士団から向けられた敵意に、彼女の身体は小刻みに震え始めた。
 リーリュイは光太朗へ視線を映し、顔をくしゃりと歪める。その視線を受けた光太朗の胸は、罪悪感に苛まれた。

(……あんたの魔導騎士団を、利用してごめんな……)

 ザキュリオの切り札である魔導騎士団は、絶対に掌握する必要があった。キースに指示を出し、彼らとは早くから連携していたのだ。
 リガレイア国にいた光太朗は、魔導騎士団に直接関わっていない。しかしキースを介して彼らを私有化したのは確かだ。

 胸の痛みをぐっと堪え、光太朗は口元に笑みを作る。

「あ~あ。じゃあこれで、ザキュリオの切り札は皇太子殿下だけになったわけだ?」
「……クジロ……君は……」
「よし、じゃあやる事は一つだ」

 リーリュイの言葉を遮り、光太朗は一色を振り返った。一色は心得たとばかりに頷くと、王妃へと口を開く。

「それではザキュリオに、最後の機会をやろう。……そこにいるうちの副将に、貴国の皇太子殿下が勝てば、この場は退くことにする。うちの副将が勝てば、ザキュリオはこちらの要望に応えてもらう」
「……っ!」

 リーリュイの顔が険しいものに変わった。眉根に深い縦皺を刻んだ彼は、小さく頭を横に振る。
 そんなリーリュイを見ないようにして、光太朗は両腿のホルダーから短剣を引き抜いた。そして剣先を王妃へ向けると、催促するように上下に動かす。

「どうするんです? 許可する?」
「……っするわ! あんたなんかに、リーリュイが負けるはずがない……!」

 絶望していた様子から一転、王妃はすっかり活気づいた。絶体絶命の状況を覆す好機だと捉えたのだろう。凶悪な表情が戻り、余裕の表情で光太朗を見やる。
 
 その一方で、光太朗の後方から、一色の不安そうな声がぼそぼそと耳に届いた。

「……お、おい峨龍、本当に大丈夫なんだろうな……。あっちの皇太子、どえらい強そうだが……」
「大丈夫だ。クジロは完璧に仕上がっている」

 2人のやり取りは、光太朗に筒抜けだ。ふすりと笑いを零して、光太朗は真新しい仮面に触れた。

 数日前、光太朗はカディールから新しい仮面を貰った。新しい仮面は見た目こそ同じだが、何と目の部分にレンズが埋め込んであるのだ。
 リガレイア国には高級だが眼鏡も流通している。カディールが職人と調整し、仮面とレンズを合わせてくれたのだ。

 目を細めなくとも、辺りの景色が滲まない。度数は低いが裸眼に比べると大分ましだった。
 目が良くなった状態で峨龍と手合わせしたが、身体の動かし易さが全く違う。今まで目に頼っていなかったからか、視力が特殊能力のように感じてしまうほどだ。
 

 今も、夜なのが勿体ないくらい視界が明るい。その反面、鮮明なリーリュイの姿を見て、光太朗は衝撃を受けていた。

(……おいおい……かっこよすぎんか、あいつ……。俺、あんなのの隣に居たわけ?)

 少し伸びた髪が襟足まで伸びて、篝火を受けてきらきらと輝いている。パーツの揃った顔に、手足の長い身体、すっと伸びた背筋。そして光太朗の大好きな、澄み切った緑色の瞳。
 どこをどう見ても、文句の付け所が無い。

 自身に呆れたように嘆息して、光太朗は短剣を構えた。くいっと顎を動かして、リーリュイの抜刀を促した。

「早く剣を抜けよ。勝負勝負」
「……私は、嫌だ」
「ああ? 嫌だとか関係あるか。この状況で拒否権なんてあると思うなよっ!」

 走り出すと、リーリュイがようやく剣を抜くのが見えた。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

処理中です...