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第一話 追憶-8
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処刑場では宰相の口上が朗々と述べられている。
エカテリーナは初めてハイデルフトに対する裏切りについて聞いた時にはどこまで真実か判断できなかったが、今はもうポチ一号の言葉の殆どが真実だったのだと理解している。裏切った中には比較的親しくしていた者の実家も含まれる。彼らは友人の振りをしていただけなのだ。そのことに気付かなかった過去の自分さえ腹立たしい。一三段の階段から見える元友人達のニヤニヤと嘲笑うかのような表情に対して湧き上がるのは憎悪のみだ。彼らの行いを忘れることは無く、彼らが報いを受けるのを願ってやまない。
階段を上り終えて処刑台の上に立った後、暫し周囲に視線を彷徨わせる。
正面に当たる西側の広場には一般民衆が見物に詰め掛けている。その他の方角は建屋に囲まれている。監獄が有ったのは東の建屋だ。南北の建屋には貴族用の観覧部屋が有る。
エカテリーナからはその北側観覧部屋の一つで王太子とゲームヒロインが情事を営んでいるのが見える。一般民衆からは部屋の中が見えない造りになっているのを幸いとして、エカテリーナに見せ付けているようでもある。
処刑を観覧しつつの行為としてはあまりに倒錯的で退廃的。恐らくはこの国の未来の象徴である。
エカテリーナに危惧が残るとするなら、人々の安寧か。
口上の中で罪状が語られる。その内容にエカテリーナは我が耳を疑った。叛乱の混乱に乗じた押し込み強盗が多発し、住民に多数の犠牲者が発生したと言う。そこでの窃盗や殺戮の全てがハイデルフト軍の仕業とされている。冤罪まで被せてくるのかと憤怒が湧き上がる。事実は知らなくても、父のハイデルフト候が自軍にそんな行為を許すはずがないのだ。
事実はエカテリーナの想像を超え、殆どが国軍、とりわけ近衛兵の手によるものであった。
長々と続いていた宰相による口上が終わる。
その頃にはエカテリーナの突き抜けた憤怒は感情をむしろ平坦にした。
エカテリーナはふと、空を見上げる。広がる澄み渡った青空。ピクニックをするときっと楽しいだろうと場違いにも考える。
そして昔に家族で行ったピクニックに思いを馳せる中、衝撃と強い圧力とで空を見ることが叶わなくなった。叛乱の首謀者の一人としてギロチンに繋がれたのだ。
計画に加わっていない叛乱の首謀者の一人に数えられるのは光栄なことなのかも知れないと、エカテリーナは自嘲気味に考えた。
続くのは国王による演説。先まで宰相が口上を述べていたのと同じ南側建屋のバルコニーで始まった。何時の世でも権威を誇ろうとする者の話は長く、聴衆は上の空だ。民の生活が苦しいのは全てハイデルフトのせいだと語られた時にだけざわめきが広がった程度である。
聞くとはなしに聞いていたエカテリーナから零れたのは失笑だ。自らが為したことを他人の所為にする国王にも、その国王の言葉を鵜呑みにしているらしい群衆にも幻滅するばかりである。
そんな中、突然の叫び声と共に国王の声が途切れた。巻き起こる喧騒。エカテリーナが不自由な状態の首を巡らせて国王の方を見ると、近衛兵が集まっている。誰かが倒れている様子だ。周りの声から、それが国王だと容易に知れた。既に事切れていることも。
暗殺だ。
父である国王が暗殺された王太子の心情はいかばかりかと、エカテリーナは国王とは反対側、北側観覧部屋へと視線を移す。
王太子は口角を吊り上げていた。
エカテリーナは初めてハイデルフトに対する裏切りについて聞いた時にはどこまで真実か判断できなかったが、今はもうポチ一号の言葉の殆どが真実だったのだと理解している。裏切った中には比較的親しくしていた者の実家も含まれる。彼らは友人の振りをしていただけなのだ。そのことに気付かなかった過去の自分さえ腹立たしい。一三段の階段から見える元友人達のニヤニヤと嘲笑うかのような表情に対して湧き上がるのは憎悪のみだ。彼らの行いを忘れることは無く、彼らが報いを受けるのを願ってやまない。
階段を上り終えて処刑台の上に立った後、暫し周囲に視線を彷徨わせる。
正面に当たる西側の広場には一般民衆が見物に詰め掛けている。その他の方角は建屋に囲まれている。監獄が有ったのは東の建屋だ。南北の建屋には貴族用の観覧部屋が有る。
エカテリーナからはその北側観覧部屋の一つで王太子とゲームヒロインが情事を営んでいるのが見える。一般民衆からは部屋の中が見えない造りになっているのを幸いとして、エカテリーナに見せ付けているようでもある。
処刑を観覧しつつの行為としてはあまりに倒錯的で退廃的。恐らくはこの国の未来の象徴である。
エカテリーナに危惧が残るとするなら、人々の安寧か。
口上の中で罪状が語られる。その内容にエカテリーナは我が耳を疑った。叛乱の混乱に乗じた押し込み強盗が多発し、住民に多数の犠牲者が発生したと言う。そこでの窃盗や殺戮の全てがハイデルフト軍の仕業とされている。冤罪まで被せてくるのかと憤怒が湧き上がる。事実は知らなくても、父のハイデルフト候が自軍にそんな行為を許すはずがないのだ。
事実はエカテリーナの想像を超え、殆どが国軍、とりわけ近衛兵の手によるものであった。
長々と続いていた宰相による口上が終わる。
その頃にはエカテリーナの突き抜けた憤怒は感情をむしろ平坦にした。
エカテリーナはふと、空を見上げる。広がる澄み渡った青空。ピクニックをするときっと楽しいだろうと場違いにも考える。
そして昔に家族で行ったピクニックに思いを馳せる中、衝撃と強い圧力とで空を見ることが叶わなくなった。叛乱の首謀者の一人としてギロチンに繋がれたのだ。
計画に加わっていない叛乱の首謀者の一人に数えられるのは光栄なことなのかも知れないと、エカテリーナは自嘲気味に考えた。
続くのは国王による演説。先まで宰相が口上を述べていたのと同じ南側建屋のバルコニーで始まった。何時の世でも権威を誇ろうとする者の話は長く、聴衆は上の空だ。民の生活が苦しいのは全てハイデルフトのせいだと語られた時にだけざわめきが広がった程度である。
聞くとはなしに聞いていたエカテリーナから零れたのは失笑だ。自らが為したことを他人の所為にする国王にも、その国王の言葉を鵜呑みにしているらしい群衆にも幻滅するばかりである。
そんな中、突然の叫び声と共に国王の声が途切れた。巻き起こる喧騒。エカテリーナが不自由な状態の首を巡らせて国王の方を見ると、近衛兵が集まっている。誰かが倒れている様子だ。周りの声から、それが国王だと容易に知れた。既に事切れていることも。
暗殺だ。
父である国王が暗殺された王太子の心情はいかばかりかと、エカテリーナは国王とは反対側、北側観覧部屋へと視線を移す。
王太子は口角を吊り上げていた。
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