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122 覚悟
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ルキアスはどうにか間に合う程度に鉄屑が集まったところで直ぐに入口近くへと引き返し、加工に取り掛かる。
最初に自作の鉄のブラシで汚れや錆を擦り落とす。鉄屑が細かければこの作業に手間取るので、鉄屑は大きい方が楽だ。
ただ今回は念入りにはしない。期限が切られている以上、拙速さが尊ばれる。疲れた時には「俺も手伝う」と言うザネクに代わって貰いながら、どうにか夕方までに錆落としを終えた。
ダンジョンから出てザネクと別れ、夕食を摂った後はひたすら鉄屑を『捏ね』る。胸、腹、背中、二の腕、太股の各パーツ用に分割してこの日を終えた。
翌日は朝から成形だ。ザネクには昨日の別れしなにその旨を伝えているので独りで黙々と行う。
鉄塊を『伸し』てパーツそれぞれの形を作り、その『伸し』た鉄板を丸い石に当てながら更に『伸し』て曲面を作る。この曲線作りを怠ったら動きづらくなったり怪我の元になったりするので、パーツ毎に身体に当てて具合を確かめながら念入りに曲線を形作る。
出来上がった胸、腹、背中のパーツは紐で一列に繋げる。着用時は頭から被って脇腹で腰と背中のパーツを紐で結んで固定する。
太股のパーツは太股外側を守るよう太股に括り付けての着用だ。しかしこのままではずり下がるので半ば腰からぶら下げる。ここに防具を着けようと考えたのは咄嗟の防御姿勢でダメージを負いやすそうだったからだ。
問題は二の腕のパーツだった。腕や肘に括り付けるのでは片手で着用しなければならず、しっかりした固定が難しい。パーツがずり下がって邪魔になるばかりであった。だから服の袖に縫い付けるべく、鉄を『捏ね』て細く延ばし、折り曲げながら格子状に重ね、更に『捏ね』て一体化させた。こうして出来た網を腕の形に曲げ、縫い付けた。防御力は少し劣るが致し方ないと割り切る。
(ワンタッチで着け外しできればいいんだけどね……)
ワンタッチでの着け外しができるなら袖に縫い付ける必要も無い。作成が全く不可能とは言わないが、蝶番を必要とするので自力だけでは難しい。もっと稼げるようになってからの課題である。
こうしてルキアスは夕刻前に不格好ながら防具を作り終えた。
(それじゃ、今日の内に……)
自分自身に覚悟を示すため、これからカピバラを狩りに行く。
ダンジョンに入って林まで来た。暢気に草を食んでいるカピバラは容易に見付かった。
心を落ち着けつつ防具を着け、銃を構えて狙う。
「本当にそれで良いのか?」
「ひゃっ!」
ルキアスは突然の声にビクッと肩を震わせた。恐る恐る振り向けば、神を名乗る少女の姿。
「ヨーコ? 『良いのか』ってカピバラを倒すこと?」
「うむ。倒せば第一階層がおぬしにとって安全ではなくなるぞ?」
「でも覚悟を決めるならこうするしか……」
「はっ! 石橋を叩いて壊してどうしようと言うのじゃ。覚悟と言うならどうして第二階層に行かん?」
「だって、ぼく、オークなんて倒せないから!」
「おぬしの目は節穴か! おぬしはオークにどこで出会した? それはどうやってそこに行った?」
「それはダンジョンの入口で、探索者の誰かを追い掛けて来てて……、あっ!」
「気付いたか?」
「逃げようと思えば逃げられるんだね……。あ、でもやっぱりダメだよ。不意打ちされたら終わりだもん」
ヨーコはルキアスを胡乱げに見た。
「なあ、おぬし。おぬしは第二階層について誰かに聞いたことはないのじゃ?」
「あ、うん……」
「はあー、情けない。何と言うへたれじゃ。第二階層のことも知らずに『行けぬ』と申しておったか?」
「だってオークが……」
「オーク何ぞ殆どおらんわ!」
「へ?」
「見付ける方が大変なくらいじゃ。それに階層一つで魔物の強さはそこまで変わらんわい。大きくて目立つオークからくらい逃げるなりしてみせい」
「そう……、なんだ……」
ルキアスは慄いた。今までオークのイメージだけで怖がっていた自分にだ。
「判ったらカピバラなんぞ放って第二階層に行くのじゃ」
ヨーコはそれだけ言って消えた。
残されたルキアスは両手両膝を地に着いて項垂れるのだった。
最初に自作の鉄のブラシで汚れや錆を擦り落とす。鉄屑が細かければこの作業に手間取るので、鉄屑は大きい方が楽だ。
ただ今回は念入りにはしない。期限が切られている以上、拙速さが尊ばれる。疲れた時には「俺も手伝う」と言うザネクに代わって貰いながら、どうにか夕方までに錆落としを終えた。
ダンジョンから出てザネクと別れ、夕食を摂った後はひたすら鉄屑を『捏ね』る。胸、腹、背中、二の腕、太股の各パーツ用に分割してこの日を終えた。
翌日は朝から成形だ。ザネクには昨日の別れしなにその旨を伝えているので独りで黙々と行う。
鉄塊を『伸し』てパーツそれぞれの形を作り、その『伸し』た鉄板を丸い石に当てながら更に『伸し』て曲面を作る。この曲線作りを怠ったら動きづらくなったり怪我の元になったりするので、パーツ毎に身体に当てて具合を確かめながら念入りに曲線を形作る。
出来上がった胸、腹、背中のパーツは紐で一列に繋げる。着用時は頭から被って脇腹で腰と背中のパーツを紐で結んで固定する。
太股のパーツは太股外側を守るよう太股に括り付けての着用だ。しかしこのままではずり下がるので半ば腰からぶら下げる。ここに防具を着けようと考えたのは咄嗟の防御姿勢でダメージを負いやすそうだったからだ。
問題は二の腕のパーツだった。腕や肘に括り付けるのでは片手で着用しなければならず、しっかりした固定が難しい。パーツがずり下がって邪魔になるばかりであった。だから服の袖に縫い付けるべく、鉄を『捏ね』て細く延ばし、折り曲げながら格子状に重ね、更に『捏ね』て一体化させた。こうして出来た網を腕の形に曲げ、縫い付けた。防御力は少し劣るが致し方ないと割り切る。
(ワンタッチで着け外しできればいいんだけどね……)
ワンタッチでの着け外しができるなら袖に縫い付ける必要も無い。作成が全く不可能とは言わないが、蝶番を必要とするので自力だけでは難しい。もっと稼げるようになってからの課題である。
こうしてルキアスは夕刻前に不格好ながら防具を作り終えた。
(それじゃ、今日の内に……)
自分自身に覚悟を示すため、これからカピバラを狩りに行く。
ダンジョンに入って林まで来た。暢気に草を食んでいるカピバラは容易に見付かった。
心を落ち着けつつ防具を着け、銃を構えて狙う。
「本当にそれで良いのか?」
「ひゃっ!」
ルキアスは突然の声にビクッと肩を震わせた。恐る恐る振り向けば、神を名乗る少女の姿。
「ヨーコ? 『良いのか』ってカピバラを倒すこと?」
「うむ。倒せば第一階層がおぬしにとって安全ではなくなるぞ?」
「でも覚悟を決めるならこうするしか……」
「はっ! 石橋を叩いて壊してどうしようと言うのじゃ。覚悟と言うならどうして第二階層に行かん?」
「だって、ぼく、オークなんて倒せないから!」
「おぬしの目は節穴か! おぬしはオークにどこで出会した? それはどうやってそこに行った?」
「それはダンジョンの入口で、探索者の誰かを追い掛けて来てて……、あっ!」
「気付いたか?」
「逃げようと思えば逃げられるんだね……。あ、でもやっぱりダメだよ。不意打ちされたら終わりだもん」
ヨーコはルキアスを胡乱げに見た。
「なあ、おぬし。おぬしは第二階層について誰かに聞いたことはないのじゃ?」
「あ、うん……」
「はあー、情けない。何と言うへたれじゃ。第二階層のことも知らずに『行けぬ』と申しておったか?」
「だってオークが……」
「オーク何ぞ殆どおらんわ!」
「へ?」
「見付ける方が大変なくらいじゃ。それに階層一つで魔物の強さはそこまで変わらんわい。大きくて目立つオークからくらい逃げるなりしてみせい」
「そう……、なんだ……」
ルキアスは慄いた。今までオークのイメージだけで怖がっていた自分にだ。
「判ったらカピバラなんぞ放って第二階層に行くのじゃ」
ヨーコはそれだけ言って消えた。
残されたルキアスは両手両膝を地に着いて項垂れるのだった。
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