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125 森の中
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改めてルキアスは銃をいつでも使えるように準備する。蒸気タンクに蒸気を常に溜めておくのだ。
この銃にはこれまでに幾つかの改良を施している。蒸気タンクには鉄のカバーを取り付けた。カバーの内側には指一本の幅くらいの出っ張りを多数設けて隙間が空く構造だ。その分それを覆う木製カバーのスペーサーを薄くしている。こうした方が蒸気タンクを『加熱』しやすく、木製カバーの消耗も抑えられる。
また、当初は蒸気タンクに近い場所にも繋いで固定していたトリガーガードをグリップ側のみでの固定に変えた。タンクの熱が伝わって火傷しかけたためだ。厚手の手袋でも間に合わなかった。同じ理由で引き金には布を巻き付けている。引き金を板バネから切り離しては発射できなくなるのでこれ以上の対処ができない。
ともあれ、蒸気を使うまでは良かったものの火傷対策には手を焼いている。蒸気タンクに入れる水を完全に蒸発させられる量に止めているのも火傷対策だ。
(タンクに水を多めに入れられればいいんだけどな……)
余分に入れれば蒸発しない熱湯が残り、発射時に意図せず熱湯も噴き出てしまう。それはあまりに危険だ。銃口から飛び出せば熱湯鉄砲か。いや既に蒸気鉄砲ではあるのか。
(あれ? 蒸気だって十分危険だよね……)
ここでルキアスはふと思い至った。
(魔物に蒸気を当てれば怯ませるくらいはできるんじゃ?)
一瞬だけでも怯ませられれば何か対策できるかも知れない。だから弾丸を籠めないままで試す。弾丸を籠めてしまうと発射しないままに蒸気を抜くのが困難だから、本当に発射するまで籠めないに越したことはない。
ともあれ準備は整った。
「じゃあ、行こう」
「おう」
ザネクに声を掛ければ、ザネクが先導して歩き出す。ルキアスも『鏡』を左右に出して後方も警戒しながら続く。『鏡』は後が広範囲で見えるよう凸面だ。
時折ルキアスを振り返るザネクが目を留めた。
「『鏡』か……。ルキアスはそんなところでほんとに器用だよな」
「生活魔法でできる事を何でも魔法でやってたら、誰でもできるようになるよ」
「できようになるまでにどんだけ時間を掛けるんだよ……」
「んーと、ザネクが剣に費やした時間くらい? どのくらいかは知らないけど」
「知らずに言ってるのかよ! 俺にも判らないけどな! って、でもまあ、確かにそう言うものかも知れないな」
ザネクは自身が剣の修行した代わりにルキアスが生活魔法の修行をしたと理解した。ルキアス自身は修行したつもりは無いが、日々の生活が実質的にその役割を果たしていたのもまた事実である。
それからまた暫く歩くがオークは見付からない。ゴブリンやコボルトが時たま襲って来るくらいのものだ。それらは当然のようにザネクが全て対処した。
まだ蒸気の出番は無い。
それはそれとして延々と歩いていれば、これがどこまで続くか気になるものだ。
「ところでダンジョンの階層ってどのくらいの広さなんだろう? 日帰りで狩りをする範囲じゃ全く端まで行かないんだけど」
「日帰りするのがギリギリの距離だな。今からじゃ到底行けそうにないから、行ってみるなら出直しだな」
「じゃあ一回行ってみたいなぁ」
ルキアスは漠然と興味だけで呟いた。
「おう。明日でもいいぜ」
ザネクは何の気負いも無く応えた。
この銃にはこれまでに幾つかの改良を施している。蒸気タンクには鉄のカバーを取り付けた。カバーの内側には指一本の幅くらいの出っ張りを多数設けて隙間が空く構造だ。その分それを覆う木製カバーのスペーサーを薄くしている。こうした方が蒸気タンクを『加熱』しやすく、木製カバーの消耗も抑えられる。
また、当初は蒸気タンクに近い場所にも繋いで固定していたトリガーガードをグリップ側のみでの固定に変えた。タンクの熱が伝わって火傷しかけたためだ。厚手の手袋でも間に合わなかった。同じ理由で引き金には布を巻き付けている。引き金を板バネから切り離しては発射できなくなるのでこれ以上の対処ができない。
ともあれ、蒸気を使うまでは良かったものの火傷対策には手を焼いている。蒸気タンクに入れる水を完全に蒸発させられる量に止めているのも火傷対策だ。
(タンクに水を多めに入れられればいいんだけどな……)
余分に入れれば蒸発しない熱湯が残り、発射時に意図せず熱湯も噴き出てしまう。それはあまりに危険だ。銃口から飛び出せば熱湯鉄砲か。いや既に蒸気鉄砲ではあるのか。
(あれ? 蒸気だって十分危険だよね……)
ここでルキアスはふと思い至った。
(魔物に蒸気を当てれば怯ませるくらいはできるんじゃ?)
一瞬だけでも怯ませられれば何か対策できるかも知れない。だから弾丸を籠めないままで試す。弾丸を籠めてしまうと発射しないままに蒸気を抜くのが困難だから、本当に発射するまで籠めないに越したことはない。
ともあれ準備は整った。
「じゃあ、行こう」
「おう」
ザネクに声を掛ければ、ザネクが先導して歩き出す。ルキアスも『鏡』を左右に出して後方も警戒しながら続く。『鏡』は後が広範囲で見えるよう凸面だ。
時折ルキアスを振り返るザネクが目を留めた。
「『鏡』か……。ルキアスはそんなところでほんとに器用だよな」
「生活魔法でできる事を何でも魔法でやってたら、誰でもできるようになるよ」
「できようになるまでにどんだけ時間を掛けるんだよ……」
「んーと、ザネクが剣に費やした時間くらい? どのくらいかは知らないけど」
「知らずに言ってるのかよ! 俺にも判らないけどな! って、でもまあ、確かにそう言うものかも知れないな」
ザネクは自身が剣の修行した代わりにルキアスが生活魔法の修行をしたと理解した。ルキアス自身は修行したつもりは無いが、日々の生活が実質的にその役割を果たしていたのもまた事実である。
それからまた暫く歩くがオークは見付からない。ゴブリンやコボルトが時たま襲って来るくらいのものだ。それらは当然のようにザネクが全て対処した。
まだ蒸気の出番は無い。
それはそれとして延々と歩いていれば、これがどこまで続くか気になるものだ。
「ところでダンジョンの階層ってどのくらいの広さなんだろう? 日帰りで狩りをする範囲じゃ全く端まで行かないんだけど」
「日帰りするのがギリギリの距離だな。今からじゃ到底行けそうにないから、行ってみるなら出直しだな」
「じゃあ一回行ってみたいなぁ」
ルキアスは漠然と興味だけで呟いた。
「おう。明日でもいいぜ」
ザネクは何の気負いも無く応えた。
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