生活魔法は万能です

浜柔

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134 熱

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 ザネクは半ば左足を引き摺って歩く。当然の如く速さはいつもの半分くらい。おまけに散発的ながらホーンラビットが襲って来る。これを滞りなく片付けても相応に時間を取られ、遅れが膨らむ。
 日が暮れるまでに進めるのは精々出口までの半分の距離だと思われた。

(野宿だね……)

 ルキアスがこれまでダンジョンで夜を過ごしたのは入口に程近い場所で材木を乾かした一晩のみ。こんな階層の真っ只中で泊まるのは今回が初めだ。だから少し不安にもなる。
 だがそれ以上にザネクが心配だ。早く帰って治療を受けさせなければと心が焦る。しかしザネク自身に歩いて貰う以上に速く安全に進む術が無い。治り切っていない脚で無理をすると傷が悪化しかねないのにだ。
 そして日が暮れる。野宿できそうな草丈の低い場所を見付け、足を止める。

「今夜はここに泊まろう!」
「ああ……」

 ルキアスは極力元気に声を掛けるが、ザネクの反応は芳しくない。ここまで無理して歩いたせいで疲労困憊だ。
 ルキアスはそんなザネクを休ませる間に夕食を仕度する。手早く済ませるために甘薯をスライスして焼き、干し肉と野草のスープを作る。仕度を早くするだけならパンケーキの方が早いが、今のザネクには甘薯の方が食べやすいだろうと思ってこうした。

「さあ、食べて」
「ああ……」

 ザネクの反応はやはり芳しくない。もそもそと夕食を口に運んではいるが食べるだけで辛そうだ。少し無理をして食べているのだろう。『ランプ』の光に照らされた顔色が少し赤みがかって見える。
 ルキアスははたと気付いてザネクの額に手を伸ばす。

「ちょっとごめん。熱っ!」

 ルキアスはザネクの額に触れた途端、びっくりして離してしまった。
 ザネクは熱を出していた。それもかなり高い。反応が芳しくなかったのはこのためだったのだ。

(もっと早く気付いてたら!)

 早く気付いたところで何も変わらなかったかも知れない。それでも仲間の不調に気付かなかったのが自身で許し難い。
 とは言え今は反省する時間も惜しい。

「早く横にならないと! 直ぐにテントを用意するからね!」
「なあに、これくらい何とも……」

 話す途中でザネクの身体が傾いだ。手から零れた甘薯が地面に転がる。

「ザネク!」

 ルキアスは慌てて駆け寄るも、ザネクの倒れるのを阻止するのは叶わない。
 ザネクは苦しげに顔を歪めたまま気を失った。寒いのだろう、少し震えてもいる。
 ルキアスは手早くテントの骨組みを組み、敷物を敷いてザネクを寝かせ、毛布を掛ける。その後で骨組みのままのテントにテント布を被せる。
 しかしこれだけではまだ暖かくはならない。

「『加熱』!」

 ルキアスはテント布を『加熱』して暖める。
 草叢から草が擦れる音が聞こえた。
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