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211 見違えたわ
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「おねーさんとお呼びなさい。おねーさんと」
メイナーダは脊髄反射的に反論した。しかし相手が判っていてではなかったようだ。改めてシャルウィを見、人差し指を顎に当てて小首を傾げる。意外と可愛らしい。
「あら? あなた……、どこかで会ったかしら?」
「メイおばちゃんったら、あたしよ、あたし」
自分の顔を指差しながらどこかの詐欺師のような台詞を吐くシャルウィをじっと見据えた後、メイナーダはポンと手を叩いた。
「もしかしてウィルミん家のシャーちゃん?」
「もう! そのお漏らししたような呼び方止めてーっ!」
シャルウィは耳を押さえて頭を振った。若干のトラウマのある呼び方のようだ。
そんなシャルウィにメイナーダは微笑み掛ける。
「あらあらすっかり大きくなっちゃって、見違えたわ」
「メイナーダさん、シャルウィと知り合いだったんですか?」
「シャルウィ?」
メイナーダは小首を傾げた。その額に冷や汗が一筋垂れる。
「あ、シャルウィちゃんね、シャルウィちゃん。そうよ。知り合いだったの」
合わせた手を右へと振り上げながら焦る姿は明らかに誤魔化しが入っている。
正確な名前を憶えていなかったのが容易に窺い知れる。愛称ばかりを聞き、呼んでいたらそうなってしまうのも致し方あるまい。
「だけど今まで会ってなかったんですか?」
メイナーダがこの町に来てからもう何ヶ月も経っている。それなのに今まで会わなかったのも奇妙なことだ。
「シャルウィちゃんが見違えちゃってるから、擦れ違ってても気付かなかったと思うわ。それにわたしってここをあまり通らないし、他の人と通る時間も違うのよね。ほら、ルキアスちゃんともあまり会わないでしょ?」
言われてみればメイナーダとあまり会っていないルキアスだ。
「それってどうして?」
「深い階層は日帰りだと殆ど移動時間になっちゃうから、泊まりがけで行くのよ。探索が終わった後の休みも二、三日纏めて取るからここを通るのは週に二回か三回かしらね」
日帰りでは魔物を一頭狩るだけになりかねないのだ。それではあまりに効率が悪い。だからと昼夜を問わず警戒が必要な場所に長期間滞在するのも消耗が激しい。二泊か三泊が無理の無い限界だ。
「ルキアスちゃんこそ、どうしてシャルウィちゃんと一緒に居るのかしら?」
「それは……」
ルキアスはシャルウィを見る。シャルウィの事情だから彼女が話す方が良いだろう。
シャルウィもそれを理解してか、軽く頷いた後にかくかくしかじかと事情を話す。
「そう、ウィルミが……。でも残念だわ。生憎今は神薬の持ち合わせが無いのよ」
メイナーダは頬に手を当てて溜め息を吐いた。
ルキアスはむしろ持ち合わせが有る時もあるらしいことに驚くばかり。
それからメイナーダとシャルウィが暫し再会を喜んだ後……。
「今度お見舞いに行くわね」
メイナーダはそう言い残して既にお眠のユアを抱えて帰宅した。話題がどうしてもシャルウィの小さい頃に偏るため、遂にシャルウィが悲鳴を上げた結果だ。
メイナーダは脊髄反射的に反論した。しかし相手が判っていてではなかったようだ。改めてシャルウィを見、人差し指を顎に当てて小首を傾げる。意外と可愛らしい。
「あら? あなた……、どこかで会ったかしら?」
「メイおばちゃんったら、あたしよ、あたし」
自分の顔を指差しながらどこかの詐欺師のような台詞を吐くシャルウィをじっと見据えた後、メイナーダはポンと手を叩いた。
「もしかしてウィルミん家のシャーちゃん?」
「もう! そのお漏らししたような呼び方止めてーっ!」
シャルウィは耳を押さえて頭を振った。若干のトラウマのある呼び方のようだ。
そんなシャルウィにメイナーダは微笑み掛ける。
「あらあらすっかり大きくなっちゃって、見違えたわ」
「メイナーダさん、シャルウィと知り合いだったんですか?」
「シャルウィ?」
メイナーダは小首を傾げた。その額に冷や汗が一筋垂れる。
「あ、シャルウィちゃんね、シャルウィちゃん。そうよ。知り合いだったの」
合わせた手を右へと振り上げながら焦る姿は明らかに誤魔化しが入っている。
正確な名前を憶えていなかったのが容易に窺い知れる。愛称ばかりを聞き、呼んでいたらそうなってしまうのも致し方あるまい。
「だけど今まで会ってなかったんですか?」
メイナーダがこの町に来てからもう何ヶ月も経っている。それなのに今まで会わなかったのも奇妙なことだ。
「シャルウィちゃんが見違えちゃってるから、擦れ違ってても気付かなかったと思うわ。それにわたしってここをあまり通らないし、他の人と通る時間も違うのよね。ほら、ルキアスちゃんともあまり会わないでしょ?」
言われてみればメイナーダとあまり会っていないルキアスだ。
「それってどうして?」
「深い階層は日帰りだと殆ど移動時間になっちゃうから、泊まりがけで行くのよ。探索が終わった後の休みも二、三日纏めて取るからここを通るのは週に二回か三回かしらね」
日帰りでは魔物を一頭狩るだけになりかねないのだ。それではあまりに効率が悪い。だからと昼夜を問わず警戒が必要な場所に長期間滞在するのも消耗が激しい。二泊か三泊が無理の無い限界だ。
「ルキアスちゃんこそ、どうしてシャルウィちゃんと一緒に居るのかしら?」
「それは……」
ルキアスはシャルウィを見る。シャルウィの事情だから彼女が話す方が良いだろう。
シャルウィもそれを理解してか、軽く頷いた後にかくかくしかじかと事情を話す。
「そう、ウィルミが……。でも残念だわ。生憎今は神薬の持ち合わせが無いのよ」
メイナーダは頬に手を当てて溜め息を吐いた。
ルキアスはむしろ持ち合わせが有る時もあるらしいことに驚くばかり。
それからメイナーダとシャルウィが暫し再会を喜んだ後……。
「今度お見舞いに行くわね」
メイナーダはそう言い残して既にお眠のユアを抱えて帰宅した。話題がどうしてもシャルウィの小さい頃に偏るため、遂にシャルウィが悲鳴を上げた結果だ。
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