462 / 627
462 寄り道
しおりを挟む
陽は大きく傾いていたが、フヨヨンの要望でルキアス一行はラナファーベの町より前にダンジョンの前に下りた。メイナーダが木々を焼いて直ぐには熱気で近寄れなかったこの場所も、今はもう冷めていて降りられる。積もる灰が足を踏み出した拍子に激しく舞った。
ダンジョンの入口前に立てば洞窟内の様子がはっきりと見えた。ベクロテのダンジョンのような人工物っぽさは無いが、壁は凸凹しながらも滑らかな表面をしていて光ってもいる。昼間の陽の光の下で覗き込むのでもない限りは暗く感じることは無いだろう。
「これは確かにダンジョンだね。こんなのが在ると判っていたならどうして最初からボクを誘ってくれなかったんだい?」
ルキアスは道すがらフヨヨンにここを目指した理由を説明しているが、人選は説明の範囲外だった。
「ぼくは始め、独りで来るつもりだったから……」
メイナーダに「一緒に行く」と迫られれば、魔物の大発生時にメイナーダにはメリットの無い頼みをしてしまった手前もあって、心情的に断り切れなかったのだ。後はもう済し崩し増えた。フヨヨンを始めとした深層滞在者を、説明を兼ねた会食に呼ばなかったのはこのダンジョンに来たがるとは思えなかったためだ。
「……そう聞くと怒るに怒れないね。むしろ一人だけ感付いて抜け駆けしようとしたタイラクを問い質すべきかも知れないね」
「おいおい、ルキアスの怪しい様子くらい自分で気付けよ。面倒を見てやる義理は無いぜ」
「……ったく、反論できないから困ったものだよ」
フヨヨンは矛先を引っ込めた。探索者が頼りにするのは自らの眼力だけなのだ。
「しかしこのダンジョンが忘れ去られた理由は容易に想像できてしまうね」
「どう言うことだ?」
「考えてもみたまえよ。この湿地が大雨で増水したらどうなるかい?」
「あっ!」
「ルキアス君は判ったようだね」
「水没しますよね?」
「そうさ。そうなったらダンジョンから出られなくなる。もしもそれでダンジョンが全て水没するような事態になってみたまえ。一巻の終わりだよ」
「うへぇ……」
ロマが嫌そうな声を出した。いつかのダンジョンタワー地下の水没を思い出したようだ。
「それじゃ、ここの探索は諦めた方がいいんでしょうか?」
「一概には言えないね。水没するまでには猶予がある筈だから、晴れた日に日帰りや精々一泊の探索なら大丈夫だろうね。危ないのは長期間の滞在さ」
フヨヨンはここで息を継いだ。
「それよりもっといいのは、ベクロテのダンジョンタワーのように周りを囲んで水が入らないようにすることだね」
「そんな事できるのか?」
「可能か不可能かなら可能だよ。『土魔法』の使い手を動員しても一朝一夕に出来るものじゃないけどね。出資者を募って時間とお金を投入してやっとってところかな」
「まあ、どの道当分は日帰り探索だから、その間にどうにかして貰やいいさ」
「そうですね……」
ルキアスはタイラクの意見に生返事しつつ、出資者の心当たりを思い浮かべた。
ダンジョンの入口前に立てば洞窟内の様子がはっきりと見えた。ベクロテのダンジョンのような人工物っぽさは無いが、壁は凸凹しながらも滑らかな表面をしていて光ってもいる。昼間の陽の光の下で覗き込むのでもない限りは暗く感じることは無いだろう。
「これは確かにダンジョンだね。こんなのが在ると判っていたならどうして最初からボクを誘ってくれなかったんだい?」
ルキアスは道すがらフヨヨンにここを目指した理由を説明しているが、人選は説明の範囲外だった。
「ぼくは始め、独りで来るつもりだったから……」
メイナーダに「一緒に行く」と迫られれば、魔物の大発生時にメイナーダにはメリットの無い頼みをしてしまった手前もあって、心情的に断り切れなかったのだ。後はもう済し崩し増えた。フヨヨンを始めとした深層滞在者を、説明を兼ねた会食に呼ばなかったのはこのダンジョンに来たがるとは思えなかったためだ。
「……そう聞くと怒るに怒れないね。むしろ一人だけ感付いて抜け駆けしようとしたタイラクを問い質すべきかも知れないね」
「おいおい、ルキアスの怪しい様子くらい自分で気付けよ。面倒を見てやる義理は無いぜ」
「……ったく、反論できないから困ったものだよ」
フヨヨンは矛先を引っ込めた。探索者が頼りにするのは自らの眼力だけなのだ。
「しかしこのダンジョンが忘れ去られた理由は容易に想像できてしまうね」
「どう言うことだ?」
「考えてもみたまえよ。この湿地が大雨で増水したらどうなるかい?」
「あっ!」
「ルキアス君は判ったようだね」
「水没しますよね?」
「そうさ。そうなったらダンジョンから出られなくなる。もしもそれでダンジョンが全て水没するような事態になってみたまえ。一巻の終わりだよ」
「うへぇ……」
ロマが嫌そうな声を出した。いつかのダンジョンタワー地下の水没を思い出したようだ。
「それじゃ、ここの探索は諦めた方がいいんでしょうか?」
「一概には言えないね。水没するまでには猶予がある筈だから、晴れた日に日帰りや精々一泊の探索なら大丈夫だろうね。危ないのは長期間の滞在さ」
フヨヨンはここで息を継いだ。
「それよりもっといいのは、ベクロテのダンジョンタワーのように周りを囲んで水が入らないようにすることだね」
「そんな事できるのか?」
「可能か不可能かなら可能だよ。『土魔法』の使い手を動員しても一朝一夕に出来るものじゃないけどね。出資者を募って時間とお金を投入してやっとってところかな」
「まあ、どの道当分は日帰り探索だから、その間にどうにかして貰やいいさ」
「そうですね……」
ルキアスはタイラクの意見に生返事しつつ、出資者の心当たりを思い浮かべた。
19
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる