王立辺境警備隊にがお絵屋へようこそ!

小津カヲル

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番外小話 3

帰還~文句のひとつも言ってやります。①

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 ただいまセレスフィアから王都に向けての順調な二人旅。……いえいえ大事なあなたを忘れてはなりませんね、なんと言っても今回の功労者、ハデュロイも入れねばなりません。彼を入れての三人? 旅の真っ最中なのです。
 南の港街セレスフィアを出て、私たちは真っ直ぐ北、王都へと向かいました。
 結衣さんたちが陸路で向かうことになったせいで、私たちはと~っても久しぶりに、なんていうのかな……二人きりなのです。
 だって……うふふ。嬉しいのは何といっても旅のご馳走。アルベリックさんのご飯でーす。
 これまで本当に素晴らしかったのです。たとえば昨日の昼食は私の大好物、干し肉と香草が奏でるハーモニー……ごほん、塩味の効いたスープとパン。そして今日は干し魚のあぶりに、干し果物を添えたサンド。塩味の効いた魚から出る油が干し果物を柔らかくし、ほどよい甘味がパンに染みて……ああアルベリックさんてば、最後に新作を出してくるだなんて反則です。
 そろそろ旅飯を手伝えるようになったんじゃないかって? いいえ! 満面の笑みで頬張る私を、アルベリックさんも満足そうに眺めていたので、大丈夫です。たぶん……

「カズハ、寒くはなかったか?」
「だ、大丈夫です」

 気づけば日が傾きかけ、そろそろ目的地へと到着したようです。
 ええと、私たちは今、宿を取る予定の町に来ています。さほど大きくはないのですが、王都へ着く手前、最後の宿場街。そんなわけでグリフォンの旅人も多くて、同じように旋回を繰り返して降りていくグリフォンが何頭も見かけました。
 そして私たちが降り立った場所もまた、一般の宿の厩舎。警備隊の宿舎ではないからといってですね……ええと近いですアルベリックさん。
 地面に足が着きましたので、もう腰を支えてくれなくても立てますよ? いえ、あの、それを享受している自分もいるわけで。恥ずかしさと嬉しさと、それに慣れずに抵抗したい気持ちとで固まってしまった自分。

「……ふ」

 ふいに解放され、離れていったアルベリックさんの肩が揺れています。笑ってるんですか?
 肩越しに振り向く彼の顔は、私をのぼせ上がらせるには十分過ぎるほどに、甘いのです。

「からかってたんですね、酷いです!」
「そんなことはない」

 それから宿に入ると、あらかじめ知らせておいたせいでしょうか、王都からの手紙が届いていたようです。それをアルベリックさんが受け取り、私たちは客室へ。
 さっそく手紙の封を切るアルベリックさんの横で荷物を整理していると、彼は手紙をすぐに封筒に戻してしまいました。

「あれ、読まないんですか?」
「いや読んだが……一行だけだった」
「へ? 誰からですか?」
「ヴィクトールからだ」

 ヴィクトールさんからの手紙が一行? 思わずありえないと笑いが込み上げたのは、義理の兄の饒舌で社交的な性格をよく知っているから。それにここ最近ノエリアで受け取っていた手紙には、いかに我が子たちが可愛いかをこれでもかと書いてあったのですよね。

「なんて書いてあったんですか?」
「……到着後すぐに陛下への謁見となる、と」
「すぐに? 私もですか?」
「ああ恐らく、用件は今回カズハが利用された件の後始末についてだろうな」
「後始末……って?」
「ヴィクトール、いや父が首謀者を締め上げたんだろう」
「首謀者……え、まさか」

 だって首謀者っていうか、私の加護を知りたいといったカロンさんに、その許可を与えたのはバルトロメ国王陛下で……まさか、いくらレヴィナス家が宰相を任されるほどの元侯爵とはいえ。締め上げるって……ははは。うん、まさか。
 いや、お義父さんならありえそうな気もしますけれど。
 そりゃあ、ですね。私だって一言申し上げたいことはありますよ、できることなら。アルベリックさんと引き離されるようにしてセレスフィアへ行くはめになり、そこでお家騒動に巻き込まれたのですから……
 アルベリックさんも同じ思いなのでしょうか、少しだけ考えを巡らせてから、肩をすくめました。
 賑やかで破天荒なレヴィナス家の面々を思い出し、私はそれ以上その件については聞くことを諦めます。考えたってどうしようもありません、明日にはもう会えるのですしね。

「ふふ、皆さんにまた会えるのが楽しみです」

 交易の町で別れたアンジェさんとニコラ君、それからすっかり双子ちゃんたちに骨抜きなヴィクトールさんと楽しい女主人ルイーズさん、それからヴィクトールさん以上に孫たちに心酔中と噂のお義父さん。
 クスリと笑っていると、アルベリックさんに引き寄せられました。
 セレスフィアで再会して以来、触れあう距離が近くなった私たち。ううん、私たちというより、アルベリックさんが意図的にそうしてくれているのだと思うのです。あの日、お母さんたちに別れを告げた私への、アルベリックさんらしい心遣い……寂しくないように。もう不安にしないように。

「また……滞在中は大変だとは思う」

 少しだけ眉を寄せるアルベリックさんに、私はついつい笑いがこぼれてしまいました。

「私は全然平気ですよ、レヴィナス家の皆さん大好きですから」
「……そうか。それと滞在中に、カズハに紹介したい人物がいる。ちょうど、会える時期が重なる」
「それはかまいませんけれど……親戚の方ですか?」
「ああ、そんなところだ」
「はい、楽しみです」

 私が思ったまま答えると、アルベリックさんの眉が下がります。どうしたの? そんな風に問いかけるつもりだったのですが……思い直します。明日はもう王都です、急ぐ必要はないのです。
 それから一晩ゆっくり休み、朝はやくには出発しました。
 たくさんの建物と人々。忙しいい往来に、活気溢れる商店の呼び声。なによりも、楽しいレヴィナス家の人々と再会することが、楽しみでなりません。
 そんな期待のなか、私たちはついに王都へと到着です。
 あらかじめ知らせてあったせいか、私たちを見つけたお城の使いが、城へと誘導してきました。アルベリックさんもそれに少しだけ驚いた様子でしたが、昨日のヴィクトールさんからの手紙もあり、促されるままに従うことに。
 すぐに謁見とは聞いていましたが、まさかレヴィナス家に寄ることなく直行とは、思いませんでした。
 白くて大きな城門の内側、王国軍が配備されている広場に降り立つと、私たちはハデュロイを荷物ごと預かってもらったまま、お城の中へ。
 長くて天井の高い通路を越え、ヴィクトールさんたちの仕事場がある方の棟へ入ったところで、思わぬ人物に出迎えられました。
「カズハ!」
 金髪をなびかせて駆け寄ってきたアンジェさんに、私は返事をする間も与えられないまま、思いきり抱き締められていました。
「心配してたのよ、無事に戻ってくれて本当に良かった」
「はい、ただいまですアンジェさん」
「ああ、よく顔を見せてちょうだい、本当にどこも何ともない? 元気なのね?」
「もちろんです」
 私たちは顔をつきあわせ、笑い合います。
 そうしてようやく安堵した様子のアンジェさんでしたが、そこはやはりアンジェさん。にやりと笑うと爆弾投下。
「さあすぐにでも謁見よ。陛下もお待ちだから、支度しましょうね」
「……え?」
「アルの制服もヴィクトールに用意させたから着替えてらっしゃい、カズハはこっち! 新しいドレス作ったからね、試着もかねてるの。ルイーズがまだ動けないでしょう、私が全部任されてるから安心してちょうだい」
 えええ……抵抗する間もなく、連れ去られました。
 アンジェさんも相変わらずのようで、何と言いますか、安心しましたよ……あはは。
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