勇者になった幼馴染は聖女様を選んだ〈完結〉

ヘルベ

文字の大きさ
11 / 15

やだテンプレ(マリン視点)

しおりを挟む
 異世界に聖女として呼ばれ勇者と共に世界を救うとか。
 成川真凛(17)、かんっぜんなるテンプレに巻き込まれ中。

 ただテンプレその2の召喚された先が最悪で酷い目に遭って虐待先をざまぁする~の方じゃなくて良かった。無理やり呼び出したのを除けばみんな親切。
 何日も食べさせて貰えない外にも出れないとか無理無理。

 そして勇者を選べと言われて、なぜか知らない村と人の名前がすらすらと出てきて直感のまま答えたら、なぜか可愛らしい女の子と一緒にお城に連れて来られた。

 勇者の事が好きな幼馴染付きかあ。残念。
 勇者とのロマンスをちょっと期待したけど、そうだよね。同じ村の好きな男の子が突然お城に連行されたら心配でたまらないよね。
 健気なその子…アンヌに、なんだか感動した。

 私が住んでる世界はもっと他人と距離があいていて、情に厚すぎるとうざがられるから、この一途さは新鮮だった。

 聖地の力を取り戻す旅は、思ってた以上に過酷。
 知ってたけど小説読んでるのと、実際におぞましい形のモンスターに遭遇するのとでは恐怖の度合いが違う。
 モンスターを初めて見た時は腰が抜けちゃって、兵士の人に抱えて貰いながら逃げ回っていた。

「きゃあああっいやああああっ!!!」
「聖女様!勇者様がモンスターを相手している内に力を注いでください!」
「マリン様落ち着いて!あなたには一匹たりとも近づかせません!」
「そそ、そんなこと言っても…!!」

 最初に巡った聖地では兵士に励まされジグに守られ、なんとかかんとか力を注ぐことに成功した。
 後から聞いたら、この世界もモンスターなんていないんだって。私以外の人も初めて相対してたんだ。
 なのに私ったらパニクって守ってもらうばかりで…護衛の人に怪我させて…情けない声上げて、スカートなのに滅茶苦茶に逃げ回って…ああこれお風呂とか寝る前とかに思い出して鬱々するやつ。

 私が剣に聖なる魔力を付与することで兵士もモンスターを退けることが出来る。
 勇者にはそんな必要なく、たった三か月の訓練で得たとは思えない剣捌きでモンスターを倒していく。
 
 けど聖地の力を取り戻さない事にはモンスターは無限に湧き出てくるので、結局私がどれだけ迅速に力を注げるかで皆の負担が違ってくるのだ。

「マリン様、あれ見て下さい」
「ん?あれって…あそこにある花のこと?」
「綺麗ですよね。さっきまで萎れていたのにマリン様が聖地に力を与えて下さってから元気を取り戻したんですよ」
「…………うん」
「花が咲くなんて普通の事なのに、そんな普通の事も聖女様がいなければ無くなっていたんです」
「……うん。もしかして励まそうとしてる?」
「はい。バレましたか?内緒のつもりだったんですが」

 旅の半ば、知らない世界で知らない町や村に移動してはモンスターを倒す毎日。
 疲れが出てるのを見抜かれて慰められたときは流石にときめいちゃった。
 
 だめだめ。ジグ君にはアンヌがいるんだから。
 守ってもらうたびに胸をぎゅっと掴まれるような気持になっても、私はこの旅が終わったら日本に帰るんだし。
 そこまで無責任なことはしたくない。

「お疲れさまです」
「わあ~んアンヌ~!お出迎えありがと~!」
「ちょっ、っと、抱き着くのは構いませんが、もっとゆるやかに…!」

 勢いよく飛びついたら怒られてしまった。
 アンヌにはほんとに助けられてる。
 アンヌが体力と魔力を譲ってくれる魔法を使えるお陰で、聖地に行く前は力が漲って、どんなに疲れて帰ってもスッキリ疲労が取れる。

 この旅にアンヌの存在がどれほど有難い存在か。
 日本生まれで文化部の体力雑魚人間の私はアンヌが居なかったら限界超えて死んでたかも。

「敬語辞めてって言ってるのにな~距離感じる~」
「怒られるのはあたしなんですよ。好きで同年代を恭しく扱ってると思います?」
「お、言ったな。護衛さ~ん!アンヌぐぅぁっ」
「言い付けるのは無しです!それは卑怯なやつです!」

 私とジグに体力と魔力を分けるためにいつも留守番になるアンヌ。
 見送ってくれるときに表情が曇ってるのに気づかない訳ない。
 ここまで付いて来たのだってジグのためなのに、一番危険な場所に一緒に行けないなんてどれだけもどかしいか。

 (私にできるのは旅を早く終わらせられるよう努力することだけ。アンヌ、もうちょっと我慢してね)
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

無愛想な婚約者の心の声を暴いてしまったら

雪嶺さとり
恋愛
「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」 「え?」 伯爵令嬢ルーシャの婚約者、ウィラードはいつも無愛想で無口だ。 しかしそんな彼に最近親しい令嬢がいるという。 その令嬢とウィラードは仲睦まじい様子で、ルーシャはウィラードが自分との婚約を解消したがっているのではないかと気がつく。 機会が無いので言い出せず、彼は困っているのだろう。 そこでルーシャは、友人の錬金術師ノーランに「本音を引き出せる薬」を用意してもらった。 しかし、それを使ったところ、なんだかウィラードの様子がおかしくて───────。 *他サイトでも公開しております。

結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?

宮永レン
恋愛
 没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。  ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。  仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……

全部私が悪いのです

久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。 姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。 世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。 *全18話完結となっています。 *大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。 *後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。 *この作品は他誌にも掲載中です。

好きな人ができたので婚約を解消して欲しいと言われました

鳴哉
恋愛
婚約を解消して欲しいと言われた令嬢 の話 短いので、サクッと読んでいただけると思います。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

ミュリエル・ブランシャールはそれでも彼を愛していた

玉菜きゃべつ
恋愛
 確かに愛し合っていた筈なのに、彼は学園を卒業してから私に冷たく当たるようになった。  なんでも、学園で私の悪行が噂されているのだという。勿論心当たりなど無い。 噂などを頭から信じ込むような人では無かったのに、何が彼を変えてしまったのだろう。 私を愛さない人なんか、嫌いになれたら良いのに。何度そう思っても、彼を愛することを辞められなかった。 ある時、遂に彼に婚約解消を迫られた私は、愛する彼に強く抵抗することも出来ずに言われるがまま書類に署名してしまう。私は貴方を愛することを辞められない。でも、もうこの苦しみには耐えられない。 なら、貴方が私の世界からいなくなればいい。◆全6話

恋人は笑う、私の知らない顔で

鳴哉
恋愛
優秀な職人の恋人を持つパン屋の娘 の話 短いのでサクッと読んでいただけると思います。 読みやすいように、5話に分けました。 毎日一話、予約投稿します。

処理中です...