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諦めるには程良い
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いつかはこんな日が来ると思ってた。
「すまない!お医者様を呼んで来てくれ!」
「ちょ、ちょっと、大袈裟だってば…っ」
ある日、ジグがマリン様をお姫様を扱うように大事に抱えて帰って来た。
魔物の襲撃中に怪我をしたらしい。侍女さんと兵士さんたちが大慌てしている。
本当にこの旅に同行してから「らしい」って情報しかないな、あたし。
怪我をしたなんて一大事なのに、壊れ物を扱うかのようにジグに痛む個所を確認されて、顔を赤くしてるマリン様を見ていられなくて目を逸らす。
いつの間に人の心配もできなくなったのだろう。
魔物の毒が足首にかかってしまったという話だけど、お医者様が言うには数日被れる程度だと塗るお薬を渡されたが、あたしが体力・魔力を分けたらすぐに完治した。
聖女は元々病気や毒に強い体質のため、魔力が満たされてその優れた自己治癒能力が迅速に働いたのだろうと。
「良かった…あなたにもしもの事があったら、俺は俺が許せない」
「だから大袈裟だって。いつもちゃんと守ってくれてるでしょ」
「……ちゃんとじゃない。マリン様に怪我をさせてしまった」
「あーのーねーっモンスターが襲ってくるんだから危険は当たり前なの!怪我だってある程度は覚悟してる!ジグたちのお陰で死ななくて済んでるの、わかる?」
マリン様に叱られて、ジグがたじろいだ。
ジグは悪くないって言ってるのに、聞き分けない子ね!って子供のように諭されて、俺成人してるんですがって苦笑いしてる。
叱って、叱られて、気まずそうにして、目が合って笑ってる。
つられて周りの人たちも笑い出して…。
ああもう、ダメかもしれない。
あたしが居ない時に育んだ絆を見せられて、身体が冷たくなっていく。
「アンヌ様、顔色が優れないようですが」
女騎士のサーニャさんが心配そうにこちらを伺っていてはっとした。
皆賑やかな中であたしだけが黙っていた。
サーニャさんに顔色が優れないと言われて皆があたしの方を見る。
「あ…ごめんなさい。なんだかぼうっとして」
「アンヌ?もしかして私に魔力分けたせい…?」
「毎日だったもんな。頼りっぱなしで悪かった」
「え、いえ、そんなことは…」
さっきまでの明るい雰囲気を壊してしまったようで居心地が悪くなる。
あたしは聖女様の心配しなかったのに、皆はあたしの心配をしてくれる。
もう嫉妬とか罪悪感で心がばらばらになりそうだった。
「お部屋に戻られますか?温かいスープでも飲んで休まれた方が宜しいかと」
サーニャさんの提案に乗って、あたしは宿屋の自室に戻ることにした。
またあの輪から外れてしまう不安感、入り切れない雰囲気から逃げ出せた安心感がぐるぐる回る。
もう自分の感情すら掴めなかった。
「…聖女様と勇者様のことでお悩みでしょうか」
部屋まで送ってくれる途中、サーニャさんに尋ねられた。
「私の立場では何も申せませんが、話を聞くことくらいは出来ます。よければ……」
言い終わる前に、あたしはサーニャさんの胸に飛び込んで泣きじゃくった。
サーニャさんはあたしの肩を優しく抱きながら、ゆっくり部屋まで誘導してくれ、家鍵まで掛けてくれた。
話を聞いてくれると言われても、何も話せることが無い。
だってだって、全部あたしの我が儘だ。
ジグが危ない目に遭わないか心配で、聖女様とか他の村や街の女の子に取られたりしないか不安で、半分くだらない理由で無理やり旅に付いて来たのは自分なのに。
皆とちゃんと仲良くなれてないとか、聖地まで一緒に行けないとか、いつもあたしは置いていかれて話に入れないとか、そんな恥知らずなこと誰にも言える訳がない。
言える訳がないから、サーニャさんには迷惑だけどただただ泣きまくった。
――お父さんお母さんに会いたい。村の人たちに会いたい。
いつも寝る前に両親宛ての手紙を書いて気持ちを切り替えていたけど、今日だけは帰りたいって情けない言葉を添えてしまいそうで書けなかった。
「すまない!お医者様を呼んで来てくれ!」
「ちょ、ちょっと、大袈裟だってば…っ」
ある日、ジグがマリン様をお姫様を扱うように大事に抱えて帰って来た。
魔物の襲撃中に怪我をしたらしい。侍女さんと兵士さんたちが大慌てしている。
本当にこの旅に同行してから「らしい」って情報しかないな、あたし。
怪我をしたなんて一大事なのに、壊れ物を扱うかのようにジグに痛む個所を確認されて、顔を赤くしてるマリン様を見ていられなくて目を逸らす。
いつの間に人の心配もできなくなったのだろう。
魔物の毒が足首にかかってしまったという話だけど、お医者様が言うには数日被れる程度だと塗るお薬を渡されたが、あたしが体力・魔力を分けたらすぐに完治した。
聖女は元々病気や毒に強い体質のため、魔力が満たされてその優れた自己治癒能力が迅速に働いたのだろうと。
「良かった…あなたにもしもの事があったら、俺は俺が許せない」
「だから大袈裟だって。いつもちゃんと守ってくれてるでしょ」
「……ちゃんとじゃない。マリン様に怪我をさせてしまった」
「あーのーねーっモンスターが襲ってくるんだから危険は当たり前なの!怪我だってある程度は覚悟してる!ジグたちのお陰で死ななくて済んでるの、わかる?」
マリン様に叱られて、ジグがたじろいだ。
ジグは悪くないって言ってるのに、聞き分けない子ね!って子供のように諭されて、俺成人してるんですがって苦笑いしてる。
叱って、叱られて、気まずそうにして、目が合って笑ってる。
つられて周りの人たちも笑い出して…。
ああもう、ダメかもしれない。
あたしが居ない時に育んだ絆を見せられて、身体が冷たくなっていく。
「アンヌ様、顔色が優れないようですが」
女騎士のサーニャさんが心配そうにこちらを伺っていてはっとした。
皆賑やかな中であたしだけが黙っていた。
サーニャさんに顔色が優れないと言われて皆があたしの方を見る。
「あ…ごめんなさい。なんだかぼうっとして」
「アンヌ?もしかして私に魔力分けたせい…?」
「毎日だったもんな。頼りっぱなしで悪かった」
「え、いえ、そんなことは…」
さっきまでの明るい雰囲気を壊してしまったようで居心地が悪くなる。
あたしは聖女様の心配しなかったのに、皆はあたしの心配をしてくれる。
もう嫉妬とか罪悪感で心がばらばらになりそうだった。
「お部屋に戻られますか?温かいスープでも飲んで休まれた方が宜しいかと」
サーニャさんの提案に乗って、あたしは宿屋の自室に戻ることにした。
またあの輪から外れてしまう不安感、入り切れない雰囲気から逃げ出せた安心感がぐるぐる回る。
もう自分の感情すら掴めなかった。
「…聖女様と勇者様のことでお悩みでしょうか」
部屋まで送ってくれる途中、サーニャさんに尋ねられた。
「私の立場では何も申せませんが、話を聞くことくらいは出来ます。よければ……」
言い終わる前に、あたしはサーニャさんの胸に飛び込んで泣きじゃくった。
サーニャさんはあたしの肩を優しく抱きながら、ゆっくり部屋まで誘導してくれ、家鍵まで掛けてくれた。
話を聞いてくれると言われても、何も話せることが無い。
だってだって、全部あたしの我が儘だ。
ジグが危ない目に遭わないか心配で、聖女様とか他の村や街の女の子に取られたりしないか不安で、半分くだらない理由で無理やり旅に付いて来たのは自分なのに。
皆とちゃんと仲良くなれてないとか、聖地まで一緒に行けないとか、いつもあたしは置いていかれて話に入れないとか、そんな恥知らずなこと誰にも言える訳がない。
言える訳がないから、サーニャさんには迷惑だけどただただ泣きまくった。
――お父さんお母さんに会いたい。村の人たちに会いたい。
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