13 / 15
嬉しいよりも困惑(マリン視点)
しおりを挟む
耳を疑ったわ。
聖地の全てに力を注ぎ終わった瞬間。
皆で達成した喜びを分かち合っている時に、ジグが私の手を取った。
「マリン様…俺、あなたが好きです。この旅が終わっても、ずっとそばに居させて下さい」
はあ!?って叫びそうになって、さすがにそれはジグに対して失礼すぎるから飲み込むのが大変だった。
護衛が聞き耳を立ててる中、私は慌てまくって変な汗が出た。
「ちょ、きゅ、急にそんな…ごめん、そういう風に見た事無かったから…少し、考えさせて…」
「はい。いくらだって待ちます。ただ俺がマリン様を好きだって気持ちだけ知っていて貰いたかったんです。自分勝手ですみません」
自分を卑下した言い回しのわりに爽やかな笑顔で、なんだかくらくらした。
かっこいい人からの告白に浮かれそうになると同時に浮かんだのはアンヌの顔。
なんだか友達を裏切ったような気持ち悪さに、頬に上がってきた熱がすっと冷める。
「ねえ、こんなこと聞くの失礼だけど……アンヌはいいの?」
「アンヌ?」
ジグがきょとんとして、少し悩む仕草をする。
「多分………勇者に選ばれず、村で一緒に過ごしてたら、アンヌと結婚してたんだと思います。お互いの家族も仲が良かったし」
きゅっと下腹の内臓を掴まれるような気分になった。
この痛みは嫉妬なのだろうか、それとも罪悪感なのだろうか。
「でもそんな多分はもう無いんです。俺は勇者としてマリン様と旅をして、あなたを好きになった。それにアンヌには…大切な友達以上の感情は抱いたことがないので」
聖地に力を取り戻すことに成功して喜んでいる皆の声が遠ざかったような気分だった。
どうやって宿に帰ったのか覚えてない。
アンヌの顔を見てからようやく意識がはっきりした。
どうしよう、って。
素直に伝えるべき?
あなたが危険な旅に同行してまで傍にいたかった男が私に告白して来たのよって?
もし黙っていて後でアンヌにバレたりしたらどうなる?
後々の方がダメージ大きくなるんじゃないの。
なんでみんな黙ってたのってならない?
アンヌだって凄く頑張ってくれたのに。
アンヌのおかげで体調はいつも万全だったから、この旅も歴代の人たちよりもずっと早く完遂できた。
それなのに。
「マリン様、なにかありました?」
アンヌの顔を見たまま硬直していたみたい。
心配そうに声を掛けられて泣きそうになる。
「ああ、うん、これでやっと帰れる!って思ったらさすがに疲れ出ちゃったみたい」
結局誤魔化す方を選んでしまった。
でもアンヌには通じなかったみたいで、悲しそうに笑った。
「マリン様、お疲れの所ごめんなさい。少しだけ時間貰えますか」
アンネの部屋に連れられ、扉に鍵を付けていいか聞かれたので肯定する意味で頷く。
それから私は椅子、アンヌはベッドに座って向き合った。
「ジグとなにかあったんですね」
直球で聞かれて俯く。
何を言っていいかわからない。
けどアンネは辛抱強く私の返事を待つので、沈黙に耐えかねて口を開いた。
「うん。好きだって言われた」
瞬間、アンヌくしゃっと今にも泣きそうな表情になる。
「ごめんなさい」
自分の口から出てしまったのかと思ったけど、謝ったのはアンヌの方だった。
「あたしが……いえ、マリン。これ、誰も悪くないんだよ。考えてみて。あたしがジグを心配で付いて来たのも、普通なら心配して当たり前。ジグはあたしと付き合ってた訳じゃ無いんだから誰を好きになったって自由。マリン様がジグに好かれたのだって、」
ぐっと下唇を噛んだのが見えた。
それでなんでか、アンネにばかり言わせちゃいけないと思った。
「うんそうだよ。誰も悪くない。勿論、アンヌも」
「……ん。悩ませてごめん。後はあたしのマリンの気持ちの問題で…それに、マリンは別世界に帰らなきゃ行けないんだから、そっちも考えなきゃ」
「そうだよね。ジグって私にこの世界に残って欲しかったのかな。混乱してそこ聞いてなかった」
「マリンはマリンの気持ちで動いて良いんだよ。あたしの気持ちはあたしのものだから。自分のことだけ悩んでて」
「やだ、いい女ね」
「でしょ?」
出会ってから初めて砕けた口調で話してくれたアンヌ。
いつの間にか二人とも泣いていて、晩御飯で呼ばれるまで顔をぐしゃぐしゃにしながら色々話した。
今後の事、お互いの故郷の事、ジグの事、この後祝杯を上げる時に出るであろうご馳走の事。
色々喋ってる間に体力と魔力を渡されていてびっくりした。
それを注意したらアンネは「今日は全力で美味しい者食べなきゃ損だし他の人たちががっかりするわよ。主役なんだから」って。
ジグって見る目無いのね。
聖地の全てに力を注ぎ終わった瞬間。
皆で達成した喜びを分かち合っている時に、ジグが私の手を取った。
「マリン様…俺、あなたが好きです。この旅が終わっても、ずっとそばに居させて下さい」
はあ!?って叫びそうになって、さすがにそれはジグに対して失礼すぎるから飲み込むのが大変だった。
護衛が聞き耳を立ててる中、私は慌てまくって変な汗が出た。
「ちょ、きゅ、急にそんな…ごめん、そういう風に見た事無かったから…少し、考えさせて…」
「はい。いくらだって待ちます。ただ俺がマリン様を好きだって気持ちだけ知っていて貰いたかったんです。自分勝手ですみません」
自分を卑下した言い回しのわりに爽やかな笑顔で、なんだかくらくらした。
かっこいい人からの告白に浮かれそうになると同時に浮かんだのはアンヌの顔。
なんだか友達を裏切ったような気持ち悪さに、頬に上がってきた熱がすっと冷める。
「ねえ、こんなこと聞くの失礼だけど……アンヌはいいの?」
「アンヌ?」
ジグがきょとんとして、少し悩む仕草をする。
「多分………勇者に選ばれず、村で一緒に過ごしてたら、アンヌと結婚してたんだと思います。お互いの家族も仲が良かったし」
きゅっと下腹の内臓を掴まれるような気分になった。
この痛みは嫉妬なのだろうか、それとも罪悪感なのだろうか。
「でもそんな多分はもう無いんです。俺は勇者としてマリン様と旅をして、あなたを好きになった。それにアンヌには…大切な友達以上の感情は抱いたことがないので」
聖地に力を取り戻すことに成功して喜んでいる皆の声が遠ざかったような気分だった。
どうやって宿に帰ったのか覚えてない。
アンヌの顔を見てからようやく意識がはっきりした。
どうしよう、って。
素直に伝えるべき?
あなたが危険な旅に同行してまで傍にいたかった男が私に告白して来たのよって?
もし黙っていて後でアンヌにバレたりしたらどうなる?
後々の方がダメージ大きくなるんじゃないの。
なんでみんな黙ってたのってならない?
アンヌだって凄く頑張ってくれたのに。
アンヌのおかげで体調はいつも万全だったから、この旅も歴代の人たちよりもずっと早く完遂できた。
それなのに。
「マリン様、なにかありました?」
アンヌの顔を見たまま硬直していたみたい。
心配そうに声を掛けられて泣きそうになる。
「ああ、うん、これでやっと帰れる!って思ったらさすがに疲れ出ちゃったみたい」
結局誤魔化す方を選んでしまった。
でもアンヌには通じなかったみたいで、悲しそうに笑った。
「マリン様、お疲れの所ごめんなさい。少しだけ時間貰えますか」
アンネの部屋に連れられ、扉に鍵を付けていいか聞かれたので肯定する意味で頷く。
それから私は椅子、アンヌはベッドに座って向き合った。
「ジグとなにかあったんですね」
直球で聞かれて俯く。
何を言っていいかわからない。
けどアンネは辛抱強く私の返事を待つので、沈黙に耐えかねて口を開いた。
「うん。好きだって言われた」
瞬間、アンヌくしゃっと今にも泣きそうな表情になる。
「ごめんなさい」
自分の口から出てしまったのかと思ったけど、謝ったのはアンヌの方だった。
「あたしが……いえ、マリン。これ、誰も悪くないんだよ。考えてみて。あたしがジグを心配で付いて来たのも、普通なら心配して当たり前。ジグはあたしと付き合ってた訳じゃ無いんだから誰を好きになったって自由。マリン様がジグに好かれたのだって、」
ぐっと下唇を噛んだのが見えた。
それでなんでか、アンネにばかり言わせちゃいけないと思った。
「うんそうだよ。誰も悪くない。勿論、アンヌも」
「……ん。悩ませてごめん。後はあたしのマリンの気持ちの問題で…それに、マリンは別世界に帰らなきゃ行けないんだから、そっちも考えなきゃ」
「そうだよね。ジグって私にこの世界に残って欲しかったのかな。混乱してそこ聞いてなかった」
「マリンはマリンの気持ちで動いて良いんだよ。あたしの気持ちはあたしのものだから。自分のことだけ悩んでて」
「やだ、いい女ね」
「でしょ?」
出会ってから初めて砕けた口調で話してくれたアンヌ。
いつの間にか二人とも泣いていて、晩御飯で呼ばれるまで顔をぐしゃぐしゃにしながら色々話した。
今後の事、お互いの故郷の事、ジグの事、この後祝杯を上げる時に出るであろうご馳走の事。
色々喋ってる間に体力と魔力を渡されていてびっくりした。
それを注意したらアンネは「今日は全力で美味しい者食べなきゃ損だし他の人たちががっかりするわよ。主役なんだから」って。
ジグって見る目無いのね。
144
あなたにおすすめの小説
不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら
柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。
「か・わ・い・い~っ!!」
これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。
出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
私の婚約者様には恋人がいるようです?
鳴哉
恋愛
自称潔い性格の子爵令嬢 と
勧められて彼女と婚約した伯爵 の話
短いのでサクッと読んでいただけると思います。
読みやすいように、5話に分けました。
毎日一話、予約投稿します。
身代わりーダイヤモンドのように
Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。
恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。
お互い好きあっていたが破れた恋の話。
一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)
婚約者に好きな人ができたらしい(※ただし事実とは異なります)
彗星
恋愛
主人公ミアと、婚約者リアムとのすれ違いもの。学園の人気者であるリアムを、婚約者を持つミアは、公爵家のご令嬢であるマリーナに「彼は私のことが好きだ」と言われる。その言葉が引っかかったことで、リアムと婚約解消した方がいいのではないかと考え始める。しかし、リアムの気持ちは、ミアが考えることとは違うらしく…。
愛しい人へ~愛しているから私を捨てて下さい~
ともどーも
恋愛
伯爵令嬢シャティアナは幼馴染みで五歳年上の侯爵子息ノーランドと兄妹のように育ち、必然的に恋仲になり、婚約目前と言われていた。
しかし、シャティアナの母親は二人の婚約を認めず、頑なに反対していた。
シャティアナの父は侯爵家との縁続きになるのを望んでいたため、母親の反対を押切り、シャティアナの誕生日パーティーでノーランドとの婚約を発表した。
みんなに祝福され、とても幸せだったその日の夜、ベッドで寝ていると母親が馬乗りになり、自分にナイフを突き刺そうとしていた。
母親がなぜノーランドとの婚約をあんなに反対したのか…。
母親の告白にシャティアナは絶望し、ノーランドとの婚約破棄の為に動き出す。
貴方を愛してる。
どうか私を捨てて下さい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全14話です。
楽しんで頂ければ幸いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の落ち度で投稿途中にデータが消えてしまい、ご心配をお掛けして申し訳ありません。
運営の許可をへて再投稿致しました。
今後このような事が無いように投稿していく所存です。
ご不快な思いをされた方には、この場にて謝罪させていただければと思います。
申し訳ありませんでした。
【完結】愛くるしい彼女。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。
2023.3.15
HOTランキング35位/24hランキング63位
ありがとうございました!
公爵令嬢「婚約者には好きな人がいるのに、その人と結婚できないなんて不憫」←好きな人ってあなたのことですよ?
ツキノトモリ
恋愛
ロベルタには優しい従姉・モニカがいる。そのモニカは侯爵令息のミハエルと婚約したが、ミハエルに好きな人がいると知り、「好きな人と結婚できないなんて不憫だ」と悩む。そんな中、ロベルタはミハエルの好きな人を知ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる