424 / 431
第14章 草原の風
第20話 フウイヌムの里
しおりを挟む
星明かりの中でクロキは遠くを見る。
「何? あの子は? 何者だろう?」
クロキは遠くからコウキの様子を眺めていて、遭遇した少女の事を考える。
一見人間の少女のようにみえるがそうではない。
鳥の化け物に変わったのだ。
それを遠くからクロキは見ていたのである。
もしもの時は動こうかと思ったが、彼女はコウキを襲うことなく飛んで行った。
クロキはその正体が気になった。
「戻ったぞ。クロキ」
黄金の馬を返すために少し別行動を取っていたクーナが戻ってくる。
「お帰り、クーナ」
クロキが言うとクーナは周囲を見る。
「むっ、あの馬男がいないようだが、どこか行ったのか?」
クーナは首を傾げて言う。
「ああ、サジュタリスはいないよ。フウイヌムの里に行ったみたいだ」
「フウイヌム?」
「知恵のある馬の事だよ。この近くに隠里があるんだ」
クロキは遠くを見て言う。
視線の先には賢馬フウイヌムの里がある。
フウイヌムは知恵があり、言葉を話す事ができる馬だ。
フウイヌムは馬の中で足が遅いが、強力な魔法を使う事ができ、儀式魔法で自分達の里を隠している。
その魔法は強力であり、グリフォンの目すら欺くことができる。
クロキもあらかじめ聞いていなければそこに里があるとは気付かなかっただろう。
それほどまでに巧妙に隠されているのだ。
里に入るには中にいるフウイヌムか彼らが信仰する馬の神が招き入れなければならず、基本的に多種族の者は入れない。
ただ、そこはこのレースの折り返し地点でもあり、レースに参加しているケンタウロスが近づくとフウイヌムが招き入れてくれる。
そこで、レース参加者はフウイヌム達からたどり着いた証をもらった後、スタート地点に戻るのである。
サジュタリスはそこでコウキを待つようだ。
その場所は綺麗な湧水があり、木々が生い茂っている。
場所には強力な結界が張られていて、そこに里があることを隠している。
「そうか、まああいつがいないのはどうでも良いか。それよりもクロキ。どうやらワルキアの地から死の鳥が来ているようだぞ。ケンタウロス共を襲っているようだ」
クーナが気になる事を言う。
ワルキアは死神ザルキシスが支配する地だ。
あの鳥の少女はそこから来たのかもしれない。
「死の鳥? 実は自分もそれらしいのを見かけたんだ。やっぱりそうなの?」
「クロキも見たのか? うむ、やっぱりワルキアで何かあったみたいだぞ」
クロキとクーナはワルキアの方角を見る。
「そう……。気になるね。もう一度ノースモール卿と合流しようか……」
ワルキアの近くでは暗黒騎士であるノースモールが調べているはずだった。
もう一度合流して状況を聞いておいた方が良いかもしれない。
クロキは風を感じながらそう思うのだった。
◆
コウキは草原を駆ける。
先ほどの泉では休めず、他に休息できそうな場所はなかったのでずっと走っている。
そうして夜の間ずっと走っているとやがて朝日が草原を照らす。
(うう、さすがに疲れたかな……。でも話によるとこの辺りに折り返し地点があるはずだ。それまで頑張ろう)
コウキは休むことなく走り続けたのでさすがに疲れる。
しかし、そろそろ折り返し地点にたどり着いてもおかしくない。
そこに行けば何かがあり、証を持って帰れば良いはずだった。
ただ、その折り返し地点がどんな場所かわからない。
行けばわかるとの事らしいが、コウキは不安であった。
そんな時だった頭の上のラシャが突然鳴き始める。
「ど、どうしたの? ラシャ? 急に鳴き始めて?」
ラシャはある方向に向かって鳴いている。
その時だった。
コウキはそちらから何かを感じ取る。
まるでコウキを呼んでいるようであった。
(何だろう? 罠だろうか?)
先ほどの少女の時も近づくまで危険に気付かなった。
ラシャの鳴く方向から危険な気配は感じない。
しかし、その感覚に自信はなかった。
(だけど、行ってみるか……)
コウキはとりあえず行ってみる事にする。
そして、途中まで進んだ時、奇妙な気配を感じる。
「こちらですよ」
「えっ?」
突然声がした時だった。
コウキの見るものが突然変わる。
先ほどまでただの草原だった場所に森が現れたのだ。
そして、コウキの目の前には1匹のケンタウロス。
だが、普通のケンタウロスとは違う。
金色の毛並みに気品のある顔。
そして、強い魔力を感じる。
そのケンタウロスは穏やかにコウキを見ている。
敵意は感じない。
「ええと、貴方は」
コウキはケンタウロスに聞く。
「私はサジュタリス。よく来ました。ここが折り返し地点です。貴方が1番最初ですよ」
「ここが折り返し地点? ……なのですか?」
コウキは周囲を見て言う。
何もない場所に突然現れた森。
その木々の間から馬達がコウキ達を見ている。
だが、馬にしては様子がおかしい。
まるで、コウキ達の話を理解しているようであった。
「ええ、そうです。ここはフウイヌムの里です。さて奥に行きましょうか」
そう言ってサジュタリスはコウキを奥へと誘う。
コウキは後についていく。
すると遠巻きに見ていた馬達も少し離れながら付いてくる。
「ああ、フウイヌムですか、彼らはとても賢いのですが、少し臆病なのです。竜の子を連れている貴方を警戒しているのですよ。彼らを許してあげてください」
しばらくすると広い場所に出る。
そこには1匹の馬が待っている。
「サジュタリス様。その者が一番なのですか?」
馬がコウキを見て喋る。
(えっ? 馬が喋るの?)
それを聞いてコウキは驚く。
これまでコウキは何度か馬を見て来た。
だけど喋る馬を見るのは初めてであった。
「そうですよ。長老。察しの通り、この者はケンタウロスではありません。ですが、正式な参加者です。証をあげてもらえますか」
サジュタリスがそう言うと長老の馬は溜息を吐く。
「わかりました。では差し上げましょう。この者に鬣を一房与えたい者はいるか?」
長老の馬は他の馬達を見て言う。
しかし、誰も名乗りでない。
「誰もいませんか……。困りましたね。ここにたどり着いた証はフウイヌムの鬣なのです。これでは証が立てらない事になります」
サジュタリスが困ったように言う。
馬達は顔を見合わせ、何かを相談している。
鬣をくれる者はいなさそうであった。
「待ってください! その者には僕の鬣を上げます!」
突然1匹の馬が前に出る。
その馬は足が少し悪いのか歩き方が変であった。
「ウカリか……。良いのか?」
「はい、僕ならば何があっても良いはずです。どのみち長くは生きられないでしょうから……」
ウカリと呼ばれた馬は顔を伏せて言う。
「そうか……。では最初にたどり着き者よ。ウカリの鬣を一房持っていくが良い」
長老の馬はコウキを見てそう促す。
「えっと、良いの?」
コウキはウカリの側に行く。
「うん、良いんだ。ところで君は何者なの? ケンタウロスじゃないみたいだけど」
ウカリはコウキを見て言う。
「うん、良くわかったね。その通りだよ魔法でこの姿になっているんだよ。元は人間なんだ」
「やっぱり、それにその頭に乗せているのは竜の子なの? みんながそう話をしているけど?」
次にウカリはコウキの頭にいるラシャを見て言う。
「それはちょっとわからないんだ。そうらしいんだけどね」
ラシャの正体はコウキには良くわからない。
だけどそう言われているのならきっとそうなのだろう。
「すごいね。竜の子に懐かれるなんて! もしかして、君は特別な人間なの? それとも外の世界にいる人間はみんな君みたいなの? 外の世界の話を聞かせてよ」
ウカリは目を輝かせて言う。
とても好奇心が強そうだ。
周りにいる馬とは大違いだ。
「良いけど……。でも自分は競争の途中なんだ。そんなに長くは話せないよ」
コウキは困った顔をして言う。
そう言うとウカリは悲しそうにする。
「竜の子を連れた者よ。このフウイヌムの里に来たものは一時休んで戻る事になっています。その間だけこの者の話に付き合ってもらえませんか?」
長老はそう言ってコウキに頭を下げる。
コウキはサジュタリスを見る。
「ええ、そうです。私の名において間違いはありませんよ。このサジュタリスの名において間違いはありません」
サジュタリスはそう言って頷く。
コウキには嘘を見抜く力はない。
だけど、本当の事を言っているように思えた。
「わかったよ。外の事を話してあげるよ」
コウキがそう言うとウカリは嬉しそうな顔をする。
「ありがとう。僕はこんな足だし……。外には出られないから。色々な事を知りたいんだ」
ウカリはそう言って悲しそうに笑う。
「ええと……」
コウキはウカリの足が気になるが聞いてよいものか迷う。
「僕の足が気になるの……。良いよ、遠慮しなくても。話してあげる。でもその前に移動しようか良い場所を教えてあげる」
ウカリはそう言ってコウキを誘う。
その間に話をしてくれる。
外に好奇心を持ったウカリはこっそり里を出たことがあった。
だが、外の世界は厳しくウカリは魔物に襲われてしまった。
何とか逃げ延びたが、ウカリは足に怪我を負ってしまった。
その後長老の癒しの魔法で何とか歩けるようになったが、走れなくなってしまったのである。
「そうなんだ……」
コウキは何とも言えなくなる。
「気にしなくても良いよ。僕がうっかりしていただけなんだ。長老が言うには僕には怖いって心が足りないらしいんだ。そんな者はすぐに死ぬらしいよ」
ウカリは笑いながら言う。
警戒心が弱い馬はこの草原では生きていけない。
そう長老が言っていたとウカリは言う。
「実際にみんな君の事が怖いみたいだけど、僕はあんまり君の事が怖くないんだ。何でだろうね」
ウカリはそう言ってコウキを見る。
確かにそうだろう。
他の馬と違いウカリから怯えは感じない。
怯えない馬に出会ったのは初めてであった。
「はは、自分も初めてかも……」
コウキも笑う。
「ここだよ。どう綺麗でしょ」
ウカリは前を見て言う。
そこには綺麗な泉があった。
周囲には木が生い茂り木の実を付けている。
温かい風が吹いていて、心地よい。
ここなら休めそうであった。
「うん、とても綺麗だ。草原で一番綺麗な場所かも」
「そうでしょ。ねえ、外の世界を聞かせてよ」
ウカリは座るとコウキを促す。
その目は何かを期待するようであった。
走ることができない馬はもはやこの里から出る事はできない。
それはとてもつらい事かもしれない。
コウキはウカリの横に座る。
「うん、良いよ。色々と話をしてあげる」
こうして、コウキはウカリにこれまであった事を話すのであった。
「何? あの子は? 何者だろう?」
クロキは遠くからコウキの様子を眺めていて、遭遇した少女の事を考える。
一見人間の少女のようにみえるがそうではない。
鳥の化け物に変わったのだ。
それを遠くからクロキは見ていたのである。
もしもの時は動こうかと思ったが、彼女はコウキを襲うことなく飛んで行った。
クロキはその正体が気になった。
「戻ったぞ。クロキ」
黄金の馬を返すために少し別行動を取っていたクーナが戻ってくる。
「お帰り、クーナ」
クロキが言うとクーナは周囲を見る。
「むっ、あの馬男がいないようだが、どこか行ったのか?」
クーナは首を傾げて言う。
「ああ、サジュタリスはいないよ。フウイヌムの里に行ったみたいだ」
「フウイヌム?」
「知恵のある馬の事だよ。この近くに隠里があるんだ」
クロキは遠くを見て言う。
視線の先には賢馬フウイヌムの里がある。
フウイヌムは知恵があり、言葉を話す事ができる馬だ。
フウイヌムは馬の中で足が遅いが、強力な魔法を使う事ができ、儀式魔法で自分達の里を隠している。
その魔法は強力であり、グリフォンの目すら欺くことができる。
クロキもあらかじめ聞いていなければそこに里があるとは気付かなかっただろう。
それほどまでに巧妙に隠されているのだ。
里に入るには中にいるフウイヌムか彼らが信仰する馬の神が招き入れなければならず、基本的に多種族の者は入れない。
ただ、そこはこのレースの折り返し地点でもあり、レースに参加しているケンタウロスが近づくとフウイヌムが招き入れてくれる。
そこで、レース参加者はフウイヌム達からたどり着いた証をもらった後、スタート地点に戻るのである。
サジュタリスはそこでコウキを待つようだ。
その場所は綺麗な湧水があり、木々が生い茂っている。
場所には強力な結界が張られていて、そこに里があることを隠している。
「そうか、まああいつがいないのはどうでも良いか。それよりもクロキ。どうやらワルキアの地から死の鳥が来ているようだぞ。ケンタウロス共を襲っているようだ」
クーナが気になる事を言う。
ワルキアは死神ザルキシスが支配する地だ。
あの鳥の少女はそこから来たのかもしれない。
「死の鳥? 実は自分もそれらしいのを見かけたんだ。やっぱりそうなの?」
「クロキも見たのか? うむ、やっぱりワルキアで何かあったみたいだぞ」
クロキとクーナはワルキアの方角を見る。
「そう……。気になるね。もう一度ノースモール卿と合流しようか……」
ワルキアの近くでは暗黒騎士であるノースモールが調べているはずだった。
もう一度合流して状況を聞いておいた方が良いかもしれない。
クロキは風を感じながらそう思うのだった。
◆
コウキは草原を駆ける。
先ほどの泉では休めず、他に休息できそうな場所はなかったのでずっと走っている。
そうして夜の間ずっと走っているとやがて朝日が草原を照らす。
(うう、さすがに疲れたかな……。でも話によるとこの辺りに折り返し地点があるはずだ。それまで頑張ろう)
コウキは休むことなく走り続けたのでさすがに疲れる。
しかし、そろそろ折り返し地点にたどり着いてもおかしくない。
そこに行けば何かがあり、証を持って帰れば良いはずだった。
ただ、その折り返し地点がどんな場所かわからない。
行けばわかるとの事らしいが、コウキは不安であった。
そんな時だった頭の上のラシャが突然鳴き始める。
「ど、どうしたの? ラシャ? 急に鳴き始めて?」
ラシャはある方向に向かって鳴いている。
その時だった。
コウキはそちらから何かを感じ取る。
まるでコウキを呼んでいるようであった。
(何だろう? 罠だろうか?)
先ほどの少女の時も近づくまで危険に気付かなった。
ラシャの鳴く方向から危険な気配は感じない。
しかし、その感覚に自信はなかった。
(だけど、行ってみるか……)
コウキはとりあえず行ってみる事にする。
そして、途中まで進んだ時、奇妙な気配を感じる。
「こちらですよ」
「えっ?」
突然声がした時だった。
コウキの見るものが突然変わる。
先ほどまでただの草原だった場所に森が現れたのだ。
そして、コウキの目の前には1匹のケンタウロス。
だが、普通のケンタウロスとは違う。
金色の毛並みに気品のある顔。
そして、強い魔力を感じる。
そのケンタウロスは穏やかにコウキを見ている。
敵意は感じない。
「ええと、貴方は」
コウキはケンタウロスに聞く。
「私はサジュタリス。よく来ました。ここが折り返し地点です。貴方が1番最初ですよ」
「ここが折り返し地点? ……なのですか?」
コウキは周囲を見て言う。
何もない場所に突然現れた森。
その木々の間から馬達がコウキ達を見ている。
だが、馬にしては様子がおかしい。
まるで、コウキ達の話を理解しているようであった。
「ええ、そうです。ここはフウイヌムの里です。さて奥に行きましょうか」
そう言ってサジュタリスはコウキを奥へと誘う。
コウキは後についていく。
すると遠巻きに見ていた馬達も少し離れながら付いてくる。
「ああ、フウイヌムですか、彼らはとても賢いのですが、少し臆病なのです。竜の子を連れている貴方を警戒しているのですよ。彼らを許してあげてください」
しばらくすると広い場所に出る。
そこには1匹の馬が待っている。
「サジュタリス様。その者が一番なのですか?」
馬がコウキを見て喋る。
(えっ? 馬が喋るの?)
それを聞いてコウキは驚く。
これまでコウキは何度か馬を見て来た。
だけど喋る馬を見るのは初めてであった。
「そうですよ。長老。察しの通り、この者はケンタウロスではありません。ですが、正式な参加者です。証をあげてもらえますか」
サジュタリスがそう言うと長老の馬は溜息を吐く。
「わかりました。では差し上げましょう。この者に鬣を一房与えたい者はいるか?」
長老の馬は他の馬達を見て言う。
しかし、誰も名乗りでない。
「誰もいませんか……。困りましたね。ここにたどり着いた証はフウイヌムの鬣なのです。これでは証が立てらない事になります」
サジュタリスが困ったように言う。
馬達は顔を見合わせ、何かを相談している。
鬣をくれる者はいなさそうであった。
「待ってください! その者には僕の鬣を上げます!」
突然1匹の馬が前に出る。
その馬は足が少し悪いのか歩き方が変であった。
「ウカリか……。良いのか?」
「はい、僕ならば何があっても良いはずです。どのみち長くは生きられないでしょうから……」
ウカリと呼ばれた馬は顔を伏せて言う。
「そうか……。では最初にたどり着き者よ。ウカリの鬣を一房持っていくが良い」
長老の馬はコウキを見てそう促す。
「えっと、良いの?」
コウキはウカリの側に行く。
「うん、良いんだ。ところで君は何者なの? ケンタウロスじゃないみたいだけど」
ウカリはコウキを見て言う。
「うん、良くわかったね。その通りだよ魔法でこの姿になっているんだよ。元は人間なんだ」
「やっぱり、それにその頭に乗せているのは竜の子なの? みんながそう話をしているけど?」
次にウカリはコウキの頭にいるラシャを見て言う。
「それはちょっとわからないんだ。そうらしいんだけどね」
ラシャの正体はコウキには良くわからない。
だけどそう言われているのならきっとそうなのだろう。
「すごいね。竜の子に懐かれるなんて! もしかして、君は特別な人間なの? それとも外の世界にいる人間はみんな君みたいなの? 外の世界の話を聞かせてよ」
ウカリは目を輝かせて言う。
とても好奇心が強そうだ。
周りにいる馬とは大違いだ。
「良いけど……。でも自分は競争の途中なんだ。そんなに長くは話せないよ」
コウキは困った顔をして言う。
そう言うとウカリは悲しそうにする。
「竜の子を連れた者よ。このフウイヌムの里に来たものは一時休んで戻る事になっています。その間だけこの者の話に付き合ってもらえませんか?」
長老はそう言ってコウキに頭を下げる。
コウキはサジュタリスを見る。
「ええ、そうです。私の名において間違いはありませんよ。このサジュタリスの名において間違いはありません」
サジュタリスはそう言って頷く。
コウキには嘘を見抜く力はない。
だけど、本当の事を言っているように思えた。
「わかったよ。外の事を話してあげるよ」
コウキがそう言うとウカリは嬉しそうな顔をする。
「ありがとう。僕はこんな足だし……。外には出られないから。色々な事を知りたいんだ」
ウカリはそう言って悲しそうに笑う。
「ええと……」
コウキはウカリの足が気になるが聞いてよいものか迷う。
「僕の足が気になるの……。良いよ、遠慮しなくても。話してあげる。でもその前に移動しようか良い場所を教えてあげる」
ウカリはそう言ってコウキを誘う。
その間に話をしてくれる。
外に好奇心を持ったウカリはこっそり里を出たことがあった。
だが、外の世界は厳しくウカリは魔物に襲われてしまった。
何とか逃げ延びたが、ウカリは足に怪我を負ってしまった。
その後長老の癒しの魔法で何とか歩けるようになったが、走れなくなってしまったのである。
「そうなんだ……」
コウキは何とも言えなくなる。
「気にしなくても良いよ。僕がうっかりしていただけなんだ。長老が言うには僕には怖いって心が足りないらしいんだ。そんな者はすぐに死ぬらしいよ」
ウカリは笑いながら言う。
警戒心が弱い馬はこの草原では生きていけない。
そう長老が言っていたとウカリは言う。
「実際にみんな君の事が怖いみたいだけど、僕はあんまり君の事が怖くないんだ。何でだろうね」
ウカリはそう言ってコウキを見る。
確かにそうだろう。
他の馬と違いウカリから怯えは感じない。
怯えない馬に出会ったのは初めてであった。
「はは、自分も初めてかも……」
コウキも笑う。
「ここだよ。どう綺麗でしょ」
ウカリは前を見て言う。
そこには綺麗な泉があった。
周囲には木が生い茂り木の実を付けている。
温かい風が吹いていて、心地よい。
ここなら休めそうであった。
「うん、とても綺麗だ。草原で一番綺麗な場所かも」
「そうでしょ。ねえ、外の世界を聞かせてよ」
ウカリは座るとコウキを促す。
その目は何かを期待するようであった。
走ることができない馬はもはやこの里から出る事はできない。
それはとてもつらい事かもしれない。
コウキはウカリの横に座る。
「うん、良いよ。色々と話をしてあげる」
こうして、コウキはウカリにこれまであった事を話すのであった。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる