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嵐の前(2)
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「ありがとう、ロックウィーナ」
「ほえ?」
高官から突然礼を述べられて、私は気の抜けた返しをしてしまった。慌ててキリッとした表情に戻したが、ルービックの横でマシューが苦笑していた。恥ずかしい。
「ありがとうとは師団長、何のことでしょうか?」
「ルパートへ真摯に向き合ってくれたことへの感謝だよ」
ルービックは柔らかく微笑んだ。
「ルパートは感情で動いてしまう癖が有るが、とてもとても誇り高い男だ。ロックウィーナ、キミが同情で彼に抱かれていたら、ルパートはきっと後で酷く苦しむことになっていただろう。だから彼と距離を置いたキミの判断は正しかったんだ」
似たようなことをルパート自身にも言われた。
「私……私一人の判断ではありません。迂闊な行動を起こしそうだった私を、エドガー連隊長やマシュー中隊長が諭してくれたんです」
ルービックが意外そうに隣のマシューを見た。
「ん? マシュー、おまえロックウィーナとそんな話をする仲だったのか? エドガーも」
「はい。エドガー先輩はどうか判りませんが、俺とロックウィーナは友達になったんです」
いつの間に。
でもマシューとならいいか。時々彼の病んだ行動に振り回されるけど、反省も謝罪もできる青年だ。私にアドバイスしてくれるし悪人ではないと思う。何といっても話しやすい。
それに彼の心の中心にはサティーさんが居る。エンやマキアのように友達から恋心に発展することは無いだろう。
「そうだったのか……友達……。やはり同じチームだから親しくなりやすいのか?」
「まぁそれは大きいかもしれないですね。で、どうして師団長はションボリなさっておいでなのですか?」
「いや私も、ロックウィーナとはいろいろ話してみたかったんだ。だがなかなか機会に恵まれなくてな。マシュー……そうか、知らない間に先を越された気分だ」
「は!?」
ん?
「ちょっと待って下さい、聞き捨てならないんですが。師団長はロックウィーナをお好き……とか? まさか、娘ほど年の離れた女性に手を出すおつもりなんですか!?」
「なっ……邪推だマシュー、そんな訳があるか。彼女はルパートの想い人だぞ!? 性的な意味合いは全く無い。強く潔い彼女に同じ戦士として興味が有るだけだ!」
ルービックは即座に右手を振って否定した。だよね。ちょっと驚いたけど。
しかしマシューは追及の手を緩めなかった。
「じゃあどうして先を越されたという発想が出てくるんです? 師団長は師団長でロックウィーナと交流を持てばいい話でしょう? 先も後も無いですよ」
「そ……うだよな?」
「何でそこで疑問形になるんですか! 怖いんですけど!?」
「いやだから別に変な意味は無いって。おまえに抜け駆けされたなーってちょっと悔しかっただけで」
「うわあぁぁヤベェ、その考え方ヤベェですって! 抜け駆けとか悔しいとか!!」
「違うから。彼女は魅力的な女性だが私には若過ぎる。いくら独身期間が長いからって、そのくらいの節操は持ち合わせているぞ?」
「そんなこと言って、ウチのメイドを全員師団長のファンにしちゃったじゃないですか! 下は16から上は54歳まで! 俺を推してくれていたコも!!」
凄い。社交的なのは知っていたけど、ルービックさんたら女ったらしだったの?
引き気味な私へルービックは弁明した。
「違う、私は誰にも手を出してないぞ? 誤解をしないでくれロックウィーナ!」
第三者がこの場面だけ見たら、完全に浮気を問い詰められて言い訳をする恋人達の図だ。私達の間には何も無いんだが。
「マシューの家に滞在させてもらっているから……。世話になった人達へ礼を述べたり、立派な仕事ぶりを讃えるのはおかしなことではないだろう? 言っておくが男性の従業員にも同じ態度で接しているからな?」
「師団長は無駄に笑顔が爽やかなんですってば!」
マシューが吐き捨てるように反論した。実際に上司相手に舌打ちしてた。
「無駄にって……」
「あと褒め上手って要らん特技が有るんです! イケメンの高官にキミが淹れてくれた紅茶で疲れが取れたなんて言われたら、メイドがポ~ッとなるのは当たり前でしょ!? 男の俺だって抱かれてもいいって思えちゃいますもん!」
そこまでか。
「そ、それは私が悪いのか……?」
「完っ全に師団長のせいです!!」
「えええ…………?」
納得できない表情でルービックはコーヒーをすすった。マシューが身を乗り出して、テーブルを挟んで対面に座る私へ忠告した、
「気をつけてよロックウィーナ。師団長は社交スキルがとにかく高くて、気づかない内にドンドン心の奥へ入ってくるから。特にキミのことを気に入っているようだしね」
「だーかーらー、違うって。私はロックウィーナがキースへ告白した時、おまえ達と一緒に拍手で応援していただろう?」
「あっ、馬鹿」
マシューが上司にハッキリ馬鹿と言った。流石にそれはマズイだろうと諌めようとしたのだが、言葉が出ず代わりに涙が滲んだ。
キース。その名前に反応してしまったのだ。
出動して気持ちを切り替えたつもりだったけど、振られた現状は何も変わっていない。さっきの食事でもキースは私と離れた席に着いた。確実に避けられている。
「ほえ?」
高官から突然礼を述べられて、私は気の抜けた返しをしてしまった。慌ててキリッとした表情に戻したが、ルービックの横でマシューが苦笑していた。恥ずかしい。
「ありがとうとは師団長、何のことでしょうか?」
「ルパートへ真摯に向き合ってくれたことへの感謝だよ」
ルービックは柔らかく微笑んだ。
「ルパートは感情で動いてしまう癖が有るが、とてもとても誇り高い男だ。ロックウィーナ、キミが同情で彼に抱かれていたら、ルパートはきっと後で酷く苦しむことになっていただろう。だから彼と距離を置いたキミの判断は正しかったんだ」
似たようなことをルパート自身にも言われた。
「私……私一人の判断ではありません。迂闊な行動を起こしそうだった私を、エドガー連隊長やマシュー中隊長が諭してくれたんです」
ルービックが意外そうに隣のマシューを見た。
「ん? マシュー、おまえロックウィーナとそんな話をする仲だったのか? エドガーも」
「はい。エドガー先輩はどうか判りませんが、俺とロックウィーナは友達になったんです」
いつの間に。
でもマシューとならいいか。時々彼の病んだ行動に振り回されるけど、反省も謝罪もできる青年だ。私にアドバイスしてくれるし悪人ではないと思う。何といっても話しやすい。
それに彼の心の中心にはサティーさんが居る。エンやマキアのように友達から恋心に発展することは無いだろう。
「そうだったのか……友達……。やはり同じチームだから親しくなりやすいのか?」
「まぁそれは大きいかもしれないですね。で、どうして師団長はションボリなさっておいでなのですか?」
「いや私も、ロックウィーナとはいろいろ話してみたかったんだ。だがなかなか機会に恵まれなくてな。マシュー……そうか、知らない間に先を越された気分だ」
「は!?」
ん?
「ちょっと待って下さい、聞き捨てならないんですが。師団長はロックウィーナをお好き……とか? まさか、娘ほど年の離れた女性に手を出すおつもりなんですか!?」
「なっ……邪推だマシュー、そんな訳があるか。彼女はルパートの想い人だぞ!? 性的な意味合いは全く無い。強く潔い彼女に同じ戦士として興味が有るだけだ!」
ルービックは即座に右手を振って否定した。だよね。ちょっと驚いたけど。
しかしマシューは追及の手を緩めなかった。
「じゃあどうして先を越されたという発想が出てくるんです? 師団長は師団長でロックウィーナと交流を持てばいい話でしょう? 先も後も無いですよ」
「そ……うだよな?」
「何でそこで疑問形になるんですか! 怖いんですけど!?」
「いやだから別に変な意味は無いって。おまえに抜け駆けされたなーってちょっと悔しかっただけで」
「うわあぁぁヤベェ、その考え方ヤベェですって! 抜け駆けとか悔しいとか!!」
「違うから。彼女は魅力的な女性だが私には若過ぎる。いくら独身期間が長いからって、そのくらいの節操は持ち合わせているぞ?」
「そんなこと言って、ウチのメイドを全員師団長のファンにしちゃったじゃないですか! 下は16から上は54歳まで! 俺を推してくれていたコも!!」
凄い。社交的なのは知っていたけど、ルービックさんたら女ったらしだったの?
引き気味な私へルービックは弁明した。
「違う、私は誰にも手を出してないぞ? 誤解をしないでくれロックウィーナ!」
第三者がこの場面だけ見たら、完全に浮気を問い詰められて言い訳をする恋人達の図だ。私達の間には何も無いんだが。
「マシューの家に滞在させてもらっているから……。世話になった人達へ礼を述べたり、立派な仕事ぶりを讃えるのはおかしなことではないだろう? 言っておくが男性の従業員にも同じ態度で接しているからな?」
「師団長は無駄に笑顔が爽やかなんですってば!」
マシューが吐き捨てるように反論した。実際に上司相手に舌打ちしてた。
「無駄にって……」
「あと褒め上手って要らん特技が有るんです! イケメンの高官にキミが淹れてくれた紅茶で疲れが取れたなんて言われたら、メイドがポ~ッとなるのは当たり前でしょ!? 男の俺だって抱かれてもいいって思えちゃいますもん!」
そこまでか。
「そ、それは私が悪いのか……?」
「完っ全に師団長のせいです!!」
「えええ…………?」
納得できない表情でルービックはコーヒーをすすった。マシューが身を乗り出して、テーブルを挟んで対面に座る私へ忠告した、
「気をつけてよロックウィーナ。師団長は社交スキルがとにかく高くて、気づかない内にドンドン心の奥へ入ってくるから。特にキミのことを気に入っているようだしね」
「だーかーらー、違うって。私はロックウィーナがキースへ告白した時、おまえ達と一緒に拍手で応援していただろう?」
「あっ、馬鹿」
マシューが上司にハッキリ馬鹿と言った。流石にそれはマズイだろうと諌めようとしたのだが、言葉が出ず代わりに涙が滲んだ。
キース。その名前に反応してしまったのだ。
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