ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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世界の秘密(2)

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 目覚めた直後はあの世界のことは私の妄想、夢だったのかと思うことも有った。だけど凄いスピードで回復していく自分の身体。奇跡の一言では片付けられない。

(ルディオのおかげだ……)

 力強く脈打つ心臓。ほとんど死んでいた私の肉体へ、別れぎわにルディオが命を吹き込んでくれたのだ。
 ルディオだけじゃない。エリアスさん、ロックウィーナ、戦ってくれた全てのみんなが、私を押し上げてくれたから帰ってこられたんだと思う。

 ────頑張ろう、この世界で。
 そう決意を新たにする一方で、胸に穴が開いたような寂しさを抱いてしまう。もうこの先、彼らと直接触れ合うことができなくなったのだと。

「ルディオ……」

 私と一緒に現実世界へ向かった彼の姿が何処にも無い。
 私に持てる全ての力を与えて消滅してしまったのだろうか。
 そんなことって。

「馬鹿猫……」

 人の食事まで奪って食べてしまうふてぶてしい猫。自分を犠牲にするキャラクターじゃないでしょうよ、あなたは。
 どうして私が居てあなたが居ないの。

「……会いたいよ、ルディオ」

 ベッドに寝ている私が天井を見てしんみり呟くと、

『あい』

 すぐ横から声がした。割とあっさりと。

「…………へ?」
『僕のこと呼んだよね? 何か用事? 光学迷彩モード解除』

 何かロボットアニメに出てきそうな格好良さげな台詞せりふを吐いて、ベッドの横に少年姿のルディオが姿を現した。

『保護色って呼んでいたこの技ね、スズネの世界の知識によると光の屈折率を……」
「う……ひゃあぁっ!?」

 思春期の少女らしからぬ悲鳴を上げて、たまげた私はベッドの上でピョンピョン跳ねた。る、ルディオ!?
 呆れた視線を猫耳を付けた美少年から受けた。

『スズネ~……。あんま急に健康になると怪しまれるからさ、少し弱々しい演技しておいた方がいいよ?』

 幻覚? 幻聴? 
 ルディオは私のベッドに座った。ズシッと振動が伝わる。この幻ったら質量も有るよ?

『スズネの世界って、初めて見るいろんな物が有って退屈しないけど、ゴハンが激マズなのが残念』

 食事にケチつけてる。どうせつまみ食いしたくせに。この図々しさは正に私の知る三男猫だ。

「……病院だからね、薄味なんだよ。売店にはルディオが好きそうな、カロリーの高い美味しいものが売ってるよ?」
『マジか!! 行こうスズネ、すぐ行こう!』

 腕を引っ張られて認識した。痛い。これも夢じゃない。
 ルディオが居る! 食いしん坊猫が私の世界に存在している!!!!

『わっ!?』

 抱き付いた私にルディオが驚きの声を上げた。

『ど、どうしたスズネ!?』
「あなたに会えて嬉しいの! 馬鹿っ、今まで何処に居たのよ!!」
『え、ええ? ゴハンを探しに行く以外は基本、スズネと同じ部屋に居たよ? 他の人間に見られると面倒だから保護色になってただけで。……ちょ、泣かないでよ』

 ルディオは私の頭を撫でてくれた。あちらの世界でもこうしてくれていたな~と思い出し、余計に泣けた。

「あなた見えない壁に弾かれて消えちゃったからさ、現実世界には来れなかったと思ったんだよ~!」
『あー……そか。心配させてゴメン。でも弾かれたから実体化できたんだよ。あそこで受け入れられていたら、僕とスズネは一つの個体に同化しちゃっていたね』

 なんと。私は妖怪猫娘になる寸前だったのか。弾いた私ナイス。
 そしてふと思った。私、現実世界で男のコに抱き付いたのこれが初めてだ。衛藤先輩におんぶはしてもらったけれども。
 照れて離れようかとちょっとだけ考えたが、せっかくなのでそのまま引っ付いていた。いいよね? 正体は猫なんだし。これは決して男女の抱擁ではなく、動物をモフっているだけだ。

『……スズネ、人の来る気配がする』

 ルディオの猫耳がピョコピョコ動いていた。いちいち可愛いな。

『僕また消えるよ? でもちゃんと近くに居るから安心してね』

 私を安心させてから彼は保護色となり、その後すぐに病室のドアが開いた。

「鈴音? どうしたの、また具合が悪いの!?」

 お母さんだった。私の泣き顔を見て慌てる彼女は胸にオレンジ色の花をかかえ、肩からは大きなトートバッグを下げていた。
 あの花は……。

「ち、違うの、これは嬉し涙。元気になれたことが嬉しくて……」
「あぁそうよね、そうよねぇ……」

 お母さんも泣きそうだ。話題を変えた。

「お母さんそのお花、ガーベラだよね?」
「あらあなた、花に興味が無いと思ってたのに」
「それは特別なお花だから知ってるの」

 宮殿の庭に咲いていた、エリアスさんが好きな花。
 希望と前進、それにオレンジ色には我慢強さという意味が有るんだよね? 病魔と闘う相手に贈る花としてピッタリだ。お母さんはお花屋さんで薦められたのかな?

「私の為に買ってくれたんだね。ありがとう」
「違うのよ、これは衛藤って言う男のコがお見舞いでくれたの」
「…………え?」
「いやもうビックリ、あなたにあんなカッコイイ男のコの知り合いが居たなんて! お父さんに話したら嫉妬しちゃってね~……」

 私は驚愕した。

「待ってお母さん、衛藤先輩が病院へ来たの!?」
「うん。入院して……四日目だったかな? 次の日にあなたが集中治療室に入ることになったから、花はお父さんに一旦家に持って帰ってもらっていたの。少ししおれちゃったけど、まだまだ綺麗だからまた病室に飾ろうね」

 嘘でしょ。本当に先輩が? 一度しか言葉を交わしていない私の為に?
 お見舞いのオレンジ色のガーベラ……。宮殿の庭で見た同じ花……。これは偶然?

「私……その頃は意識無かったよね? 先輩は眠っている私のお見舞いに来てくれたの?」
「そうなのよ。退屈するだろうから、あなたの子供時代のアルバムを見てもらったわ」
「……はい!?」

 さらっと衝撃的なことを言われた。

「私のアルバムを先輩に見せたの!?」
「そうよ」
「何でそんな物が病室に有るのよ!?」
「私が家から持ち込んだから」
「な、な、な…………」

 イケメンの先輩に私なんぞの写真を見せるなんて。とんだお目汚しだろうて。
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