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世界の秘密(3)
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私は怒ったのだが、お母さんが悲しそうに笑った。
「意識の無いあなたの顔を見ていると、いろんなことを考えちゃってね……。私、鈴音の子供時代の思い出で気を紛らわしていたのよ」
「お母さん……」
心配させた罪悪感が凄い。親不孝して本当にごめんなさい。
でもアルバムは付き合ってもいない先輩に見せたらイカンやつ。
「あ、そうだ。あとね、これも衛藤くんに読んでもらったよ!」
お母さんが無邪気にトートバッグから取り出した、ポリプロピレンの樹脂製ファイル。私はそれを見て大げさではなく卒倒しそうになった。
【ギルド回収人は勇者をも背負う】
市販されている一般的な文房具であるファイルの表紙に、油性ペンでデカデカとそう書かれていた。
私はコレを知っている。だって書いたの私なんだもん。
【ギルド回収人は勇者をも背負う】
二度見したが現実は変わらなかった。ファイルには数十枚のルーズリーフが綴じられている。
そう、これは勇者エリアスとロックウィーナの恋を描いた異世界ファンタジー。あちらの世界の基礎となった、私の妄想が炸裂した中二病小説である。
読んでもらった……? 衛藤先輩にコレを!?
死んだ。本気でそう思った。
「ぎゃは────────!!!!!!!!」
断末魔を上げた私の肩をポンポンと叩いて、お母さんは笑顔でファイルを私に手渡した。
「そんな大きな声を出せるようになるなんて、本当に元気になったんだねぇ」
そうじゃねぇよマザー。そこじゃないんだよ──!!
「何てことしてくれたの! アルバムだけじゃなく、こんなものまで先輩に見せるなんて!!」
「あら衛藤くん、ずいぶんと熱心に読んでいたわよ?」
「ヒイィッ! お母さん、私の部屋を家探ししたの!?」
「いえ? しばらくあなたは家に帰れないだろうから、私が掃除してあげようと思って。ソレは机の上に普通に乗ってたよ。だから見てもいいものだと」
ぐあぁ、隠し忘れた!! 普段はお母さん、勝手に私の部屋へ入らないから油断していたよ!
「照れなくて大丈夫、お母さんも読んだけどすごく良い作品だったよ! 鈴音は文章の才能が有るのね! でも少しだけ独りよがりな展開が気になったかな? 作者には当たり前の世界観でも、読み手にとっては初めて触れる設定なんだから、解りやすく伝えることが今後の課題だね☆」
まるで編集者のようなアドバイスをして、お母さんは棚の上の花瓶を手にした。
「それじゃ私、花を活けてくるね」
そして灰と化した私を残して、鼻唄まじりに颯爽と病室から出ていったのだった。
ルディオが姿を現した。
『ねぇスズネ、もしかしてそれが僕達の世界の元になった小説なん? 見せて見せて!』
私は我に返った。冗談じゃない、恥の上塗りをしてたまるか。二次災害を阻止すべく、胸にしっかりとファイルを抱きしめた。
しかしニャンコが横から引っ張ろうとするのですよ。
「ちょっと駄目、駄目──!!」
『何でさ』
「コレ誰かに読ませる為に書いたんじゃないの! 私の自己満足用なの!!」
『僕達が住んでいた世界は素晴らしい所だったじゃないか』
「ありがとう、私もそう思う。でも元ネタは見せられないの。中二病全開なんだから!」
『中二病とは、思春期時代にしがちな背伸び行動のことだよね?』
うわぁコイツ、すっかり現実世界の雑学知識に馴染んでいる。
ルディオとファイルを引っ張り合っていると、ルーズリーフの間から一枚の紙がヒラヒラと落ちてきた。
『ん? 何ソレ』
ノートの切れ端だ。ルディオが拾ってひっくり返してみた。何か書いてあったようだ。
読んだ彼は眉を顰めた。
「……どうしたの?」
ルディオが何とも言えない表情を浮かべて、黙って私に紙片を差し出した。
受け取った私もソレを読み、しばし身体を硬直させた。
☆☆☆☆☆☆
面白かったです。テンポが良くて読みやすかった。
エリアスがカッコ良くて、こういう男になりたいと憧れました。
もし続編の予定が有るなら、俺は騎士が好きなので、ルパートの古巣である聖騎士達の活躍が見たいです。
あと動物も! 魔王の使い魔として猫のキャラクターなんてどうだろう?
キミが目覚めるのを待っています。頑張れ岩見ちゃん!
☆☆☆☆☆☆
『ねぇ、コレって……』
ルディオが私を窺う。でも私は彼へ反応してやれなかった。
何度も何度もメモを読み返した。
名前は書かれていなかった。でも私はこのメモを挟んだ人物が誰なのかすぐに解った。力強く温かい筆跡。
そしてあの世界で感じていた違和感の正体を知った。
「衛藤……先輩」
ループの後に登場した、私が設定していないキャラクター達。聖騎士三人組、魔王の使い魔として活躍した猫三兄弟。
宮殿に咲いていたオレンジ色のガーベラ。
そして先輩と同調していたエリアスさん。
「先輩…………」
メモを持つ手が震えた。
あの世界に干渉していたのは、女神の私だけではなかったのだ。
衛藤先輩はメモを仕込んだだけではなく、きっとお母さんが席を外した時に話しかけてくれた。眠っている私へ。
先輩だけではなくお父さんやお母さんも。みんなして私へ呼びかけていたんだろう。目覚めることを信じて。何度も根気よく。待ってるから頑張れって。
「お父さん……お母さん……」
あちらの世界に居る私に彼らの声は聞こえなかった。でも意識の奥には届いていたんだ。
それが精神世界に力を与えた。新たな命となった。
私が女神の力を失った後も、しばらく世界が存在し続けたのがその証拠だ。
衛藤先輩の言霊は、自分をモデルにしたキャラクターのエリアスさんと同調した。
時にエリアスさんとして、時に衛藤先輩として、彼らは世界と私を護ってくれたのだ。
私は泣いた。お母さんが戻ってきてまた心配されたけど泣き続けた。
花瓶に活けられたガーベラの花が揺れていた。向こうの世界の勇者が、笑顔で私に手を振ってくれているようだった。
「意識の無いあなたの顔を見ていると、いろんなことを考えちゃってね……。私、鈴音の子供時代の思い出で気を紛らわしていたのよ」
「お母さん……」
心配させた罪悪感が凄い。親不孝して本当にごめんなさい。
でもアルバムは付き合ってもいない先輩に見せたらイカンやつ。
「あ、そうだ。あとね、これも衛藤くんに読んでもらったよ!」
お母さんが無邪気にトートバッグから取り出した、ポリプロピレンの樹脂製ファイル。私はそれを見て大げさではなく卒倒しそうになった。
【ギルド回収人は勇者をも背負う】
市販されている一般的な文房具であるファイルの表紙に、油性ペンでデカデカとそう書かれていた。
私はコレを知っている。だって書いたの私なんだもん。
【ギルド回収人は勇者をも背負う】
二度見したが現実は変わらなかった。ファイルには数十枚のルーズリーフが綴じられている。
そう、これは勇者エリアスとロックウィーナの恋を描いた異世界ファンタジー。あちらの世界の基礎となった、私の妄想が炸裂した中二病小説である。
読んでもらった……? 衛藤先輩にコレを!?
死んだ。本気でそう思った。
「ぎゃは────────!!!!!!!!」
断末魔を上げた私の肩をポンポンと叩いて、お母さんは笑顔でファイルを私に手渡した。
「そんな大きな声を出せるようになるなんて、本当に元気になったんだねぇ」
そうじゃねぇよマザー。そこじゃないんだよ──!!
「何てことしてくれたの! アルバムだけじゃなく、こんなものまで先輩に見せるなんて!!」
「あら衛藤くん、ずいぶんと熱心に読んでいたわよ?」
「ヒイィッ! お母さん、私の部屋を家探ししたの!?」
「いえ? しばらくあなたは家に帰れないだろうから、私が掃除してあげようと思って。ソレは机の上に普通に乗ってたよ。だから見てもいいものだと」
ぐあぁ、隠し忘れた!! 普段はお母さん、勝手に私の部屋へ入らないから油断していたよ!
「照れなくて大丈夫、お母さんも読んだけどすごく良い作品だったよ! 鈴音は文章の才能が有るのね! でも少しだけ独りよがりな展開が気になったかな? 作者には当たり前の世界観でも、読み手にとっては初めて触れる設定なんだから、解りやすく伝えることが今後の課題だね☆」
まるで編集者のようなアドバイスをして、お母さんは棚の上の花瓶を手にした。
「それじゃ私、花を活けてくるね」
そして灰と化した私を残して、鼻唄まじりに颯爽と病室から出ていったのだった。
ルディオが姿を現した。
『ねぇスズネ、もしかしてそれが僕達の世界の元になった小説なん? 見せて見せて!』
私は我に返った。冗談じゃない、恥の上塗りをしてたまるか。二次災害を阻止すべく、胸にしっかりとファイルを抱きしめた。
しかしニャンコが横から引っ張ろうとするのですよ。
「ちょっと駄目、駄目──!!」
『何でさ』
「コレ誰かに読ませる為に書いたんじゃないの! 私の自己満足用なの!!」
『僕達が住んでいた世界は素晴らしい所だったじゃないか』
「ありがとう、私もそう思う。でも元ネタは見せられないの。中二病全開なんだから!」
『中二病とは、思春期時代にしがちな背伸び行動のことだよね?』
うわぁコイツ、すっかり現実世界の雑学知識に馴染んでいる。
ルディオとファイルを引っ張り合っていると、ルーズリーフの間から一枚の紙がヒラヒラと落ちてきた。
『ん? 何ソレ』
ノートの切れ端だ。ルディオが拾ってひっくり返してみた。何か書いてあったようだ。
読んだ彼は眉を顰めた。
「……どうしたの?」
ルディオが何とも言えない表情を浮かべて、黙って私に紙片を差し出した。
受け取った私もソレを読み、しばし身体を硬直させた。
☆☆☆☆☆☆
面白かったです。テンポが良くて読みやすかった。
エリアスがカッコ良くて、こういう男になりたいと憧れました。
もし続編の予定が有るなら、俺は騎士が好きなので、ルパートの古巣である聖騎士達の活躍が見たいです。
あと動物も! 魔王の使い魔として猫のキャラクターなんてどうだろう?
キミが目覚めるのを待っています。頑張れ岩見ちゃん!
☆☆☆☆☆☆
『ねぇ、コレって……』
ルディオが私を窺う。でも私は彼へ反応してやれなかった。
何度も何度もメモを読み返した。
名前は書かれていなかった。でも私はこのメモを挟んだ人物が誰なのかすぐに解った。力強く温かい筆跡。
そしてあの世界で感じていた違和感の正体を知った。
「衛藤……先輩」
ループの後に登場した、私が設定していないキャラクター達。聖騎士三人組、魔王の使い魔として活躍した猫三兄弟。
宮殿に咲いていたオレンジ色のガーベラ。
そして先輩と同調していたエリアスさん。
「先輩…………」
メモを持つ手が震えた。
あの世界に干渉していたのは、女神の私だけではなかったのだ。
衛藤先輩はメモを仕込んだだけではなく、きっとお母さんが席を外した時に話しかけてくれた。眠っている私へ。
先輩だけではなくお父さんやお母さんも。みんなして私へ呼びかけていたんだろう。目覚めることを信じて。何度も根気よく。待ってるから頑張れって。
「お父さん……お母さん……」
あちらの世界に居る私に彼らの声は聞こえなかった。でも意識の奥には届いていたんだ。
それが精神世界に力を与えた。新たな命となった。
私が女神の力を失った後も、しばらく世界が存在し続けたのがその証拠だ。
衛藤先輩の言霊は、自分をモデルにしたキャラクターのエリアスさんと同調した。
時にエリアスさんとして、時に衛藤先輩として、彼らは世界と私を護ってくれたのだ。
私は泣いた。お母さんが戻ってきてまた心配されたけど泣き続けた。
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