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六幕 アジトを探れ!(6)
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「そっちへ行ったぞ、気をつけろウィー!!」
ルパートが叫びながら連絡係っぽい男の後を追ったが、男の脚は恐ろしく速かった。あっという間に私達の側まで来てしまったのだ。30歳ちょいの見た目をした男は嫌な笑みを浮かべて、見つけた私に近付いた。きっと人質にする気だ!
バァンッ!!
伸ばした男の手は見えない壁によって弾かれた。キースの障壁魔法だ。防御しかできないが相手を怯ませるには充分だ。その隙に私の鞭がうなった。
バシュッ!
男の頬に赤い横線が引かれた。鞭の先が彼の皮膚を切り裂いたのだ。私を非戦闘員だと思って舐めていたでしょう? 出動時はお豆扱いだけど、訓練ではルパートにもセスにも時々マスターにもしごかれているんだぞ。
「このっ……小娘が!!」
激昂して私に双剣の切っ先を向けた男に、マキアが短く呪文を唱えて応戦した。
「炎の球よ、彼の者を撃て!」
二つの火球が空中で生まれて、連続で男を目がけて飛んでいった。
「あちっ」
ファイヤーボールは男の肌を掠めて大地に落ち、草木を燃やした。マキアとしたら我慢していたのにチンピラに火を放たれたので、もういいや俺もやっちゃえという心境になったのだろう。あちあちあち。火に触れていないのに熱い。至近距離での炎は凶器です。
男の背後を捉えたルパートが剣を振ったが、これもかわして男は再び逃走した。身のこなしはSランクだな。
ルパートは私の元に留まり、エンが走って男を追跡した。エリアスは火炎瓶を投げたチンピラに当て身を入れて気絶させた後、小屋の中にまだ人が居ないか探っていた。
「ウィー、斬られてないか!?」
引っ張って炎から遠ざけ、まず私の身を案じてくれたルパートにドギマギした。
「は、はい、無傷です。キース先輩が護ってくれて、マキアが追い払ってくれたので」
ふうっと安堵の息を吐いたルパートに、ありがとうを言うべきだろうか? 彼が私を妹のように慕ってくれているのは事実みたいだ。でも今までの経緯が有るから素直にお礼を言うのは照れ臭いんだよね。
あーだこーだ迷っているところに、肩を落としてエンが戻ってきた。
「すみません引き離されました。俺が走り負けるなんて……」
「それでいい、深追いは危険だ。奴さんの脚は世界大会上位ランクだ。あの脚が有るからアンドラの連絡係に選ばれたんだろうから」
やっぱり連絡係で間違いなかったか。どう呼ぼうか苦労していたんだよね。奴を取り逃がしてしまったことは痛手になるな。
「おまえ達はエリアスさんに合流してくれ。キースさん、俺とアンタで火を消そう」
「ですね。これ以上火が広がる前に魔法で何とかしましょう」
私達は指示通りエリアスの元へ行った。気を失っているチンピラ達の傷を止血した上で、後ろ手を縛って戦闘力を奪った。彼らは歩かせてフィースノーの街まで連れていき、駐留している王国兵に引き渡す。
ルパートは風魔法で、キースは障壁魔法で、炎の周囲の空気を遮断して消火活動に勤しんだ。可燃性の空気は温度を下げないと大きな爆発が起きるらしく、二人はとても慎重に作業していた。
「魔法はあんな風にも使えるんだな……」
「まぁな。補助系の魔法は攻撃力が低いけど、利便性は高いって魔法学校の先生が言ってた。まー賢さが無いと使いこなせないから、俺は単純な火魔法を選んだけど」
エンとマキアの会話を聞き流しながら、私は縛ったチンピラを見下ろして愚痴た。
「下っ端の構成員だけでは、また大した情報は手に入らないでしょうね」
あと少しだったのに。あそこで火炎瓶を投げる馬鹿さえ居なければ大物を捕まえられたのに。
嘆いた私にエリアスが優しく言った。
「そうとは限らないぞ? コイツらは本拠地の場所を知らないだろうが、知っているであろう連絡係と接触していた。奴の情報を引き出せれば一歩前進だ」
「ああ、そうですね!」
直結はしないかもしれないけれど、連絡係の素性を調べていくことで本拠地に近付ける可能性が有る。
「何はともあれ、今日もお互い無事で良かった」
グイっとエリアスは私を引き寄せた。完全に油断していた私はもちろん彼に抱きしめられた。今度は力加減をしてくれたらしく息苦しくなかった。でも気を遣うところはそこじゃない。
「おおぃ! 何してやがる!?」
十メートル先で消火活動をしていたルパートが怒鳴った。エリアスはしれっと答えた。
「友人同士の抱擁だ。気を散らせると魔法のコントロールを失って暴発するぞ」
「だったら俺の前でイチャつくんじゃねぇ!! いや、隠れてイチャつくのはもっと駄目だ!!」
「いやらしい表現はよせ。ただのフレンドリーシップだ」
ヤバイヤバイヤバイ。力加減が絶妙なので心地良い。このままエリアスに全てを委ねてしまいそうだ。足元がフワフワしてきた。
「フレンドリーシップ……。じゃあロックウィーナと友達になれた俺もやっていいのかな?」
「いい訳がないだろう」
便乗しようとしたマキアにエンが冷静に突っ込んだ。良かった、まともな感覚の人が居たよ!
四人のチンピラが倒れて火が燻りルパートの怒号が響く林の中、エリアスはなかなか私を放してくれなかった。
ルパートが叫びながら連絡係っぽい男の後を追ったが、男の脚は恐ろしく速かった。あっという間に私達の側まで来てしまったのだ。30歳ちょいの見た目をした男は嫌な笑みを浮かべて、見つけた私に近付いた。きっと人質にする気だ!
バァンッ!!
伸ばした男の手は見えない壁によって弾かれた。キースの障壁魔法だ。防御しかできないが相手を怯ませるには充分だ。その隙に私の鞭がうなった。
バシュッ!
男の頬に赤い横線が引かれた。鞭の先が彼の皮膚を切り裂いたのだ。私を非戦闘員だと思って舐めていたでしょう? 出動時はお豆扱いだけど、訓練ではルパートにもセスにも時々マスターにもしごかれているんだぞ。
「このっ……小娘が!!」
激昂して私に双剣の切っ先を向けた男に、マキアが短く呪文を唱えて応戦した。
「炎の球よ、彼の者を撃て!」
二つの火球が空中で生まれて、連続で男を目がけて飛んでいった。
「あちっ」
ファイヤーボールは男の肌を掠めて大地に落ち、草木を燃やした。マキアとしたら我慢していたのにチンピラに火を放たれたので、もういいや俺もやっちゃえという心境になったのだろう。あちあちあち。火に触れていないのに熱い。至近距離での炎は凶器です。
男の背後を捉えたルパートが剣を振ったが、これもかわして男は再び逃走した。身のこなしはSランクだな。
ルパートは私の元に留まり、エンが走って男を追跡した。エリアスは火炎瓶を投げたチンピラに当て身を入れて気絶させた後、小屋の中にまだ人が居ないか探っていた。
「ウィー、斬られてないか!?」
引っ張って炎から遠ざけ、まず私の身を案じてくれたルパートにドギマギした。
「は、はい、無傷です。キース先輩が護ってくれて、マキアが追い払ってくれたので」
ふうっと安堵の息を吐いたルパートに、ありがとうを言うべきだろうか? 彼が私を妹のように慕ってくれているのは事実みたいだ。でも今までの経緯が有るから素直にお礼を言うのは照れ臭いんだよね。
あーだこーだ迷っているところに、肩を落としてエンが戻ってきた。
「すみません引き離されました。俺が走り負けるなんて……」
「それでいい、深追いは危険だ。奴さんの脚は世界大会上位ランクだ。あの脚が有るからアンドラの連絡係に選ばれたんだろうから」
やっぱり連絡係で間違いなかったか。どう呼ぼうか苦労していたんだよね。奴を取り逃がしてしまったことは痛手になるな。
「おまえ達はエリアスさんに合流してくれ。キースさん、俺とアンタで火を消そう」
「ですね。これ以上火が広がる前に魔法で何とかしましょう」
私達は指示通りエリアスの元へ行った。気を失っているチンピラ達の傷を止血した上で、後ろ手を縛って戦闘力を奪った。彼らは歩かせてフィースノーの街まで連れていき、駐留している王国兵に引き渡す。
ルパートは風魔法で、キースは障壁魔法で、炎の周囲の空気を遮断して消火活動に勤しんだ。可燃性の空気は温度を下げないと大きな爆発が起きるらしく、二人はとても慎重に作業していた。
「魔法はあんな風にも使えるんだな……」
「まぁな。補助系の魔法は攻撃力が低いけど、利便性は高いって魔法学校の先生が言ってた。まー賢さが無いと使いこなせないから、俺は単純な火魔法を選んだけど」
エンとマキアの会話を聞き流しながら、私は縛ったチンピラを見下ろして愚痴た。
「下っ端の構成員だけでは、また大した情報は手に入らないでしょうね」
あと少しだったのに。あそこで火炎瓶を投げる馬鹿さえ居なければ大物を捕まえられたのに。
嘆いた私にエリアスが優しく言った。
「そうとは限らないぞ? コイツらは本拠地の場所を知らないだろうが、知っているであろう連絡係と接触していた。奴の情報を引き出せれば一歩前進だ」
「ああ、そうですね!」
直結はしないかもしれないけれど、連絡係の素性を調べていくことで本拠地に近付ける可能性が有る。
「何はともあれ、今日もお互い無事で良かった」
グイっとエリアスは私を引き寄せた。完全に油断していた私はもちろん彼に抱きしめられた。今度は力加減をしてくれたらしく息苦しくなかった。でも気を遣うところはそこじゃない。
「おおぃ! 何してやがる!?」
十メートル先で消火活動をしていたルパートが怒鳴った。エリアスはしれっと答えた。
「友人同士の抱擁だ。気を散らせると魔法のコントロールを失って暴発するぞ」
「だったら俺の前でイチャつくんじゃねぇ!! いや、隠れてイチャつくのはもっと駄目だ!!」
「いやらしい表現はよせ。ただのフレンドリーシップだ」
ヤバイヤバイヤバイ。力加減が絶妙なので心地良い。このままエリアスに全てを委ねてしまいそうだ。足元がフワフワしてきた。
「フレンドリーシップ……。じゃあロックウィーナと友達になれた俺もやっていいのかな?」
「いい訳がないだろう」
便乗しようとしたマキアにエンが冷静に突っ込んだ。良かった、まともな感覚の人が居たよ!
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