ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新三幕 ガロン荒野再び(6)

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「……は?」
「いや何その冗談。魔王様、笑えないッスよ」
「リリアナが女じゃないってどういう意味? 失礼よ!」

 彼女はどこからどう見ても可憐な女のコだ。女性にしては高身長で手が少し大きいけれど、それだって素敵な魅力の内だ。
 それなのにアルクナイトは更なる暴言を吐いた。

「下に付いてる」
「!」
「!」
「!」

 ついリリアナの下半身に目が行きかけて、男二人は慌てて視線をらした。紳士だな。

「アル、リリアナ嬢に謝罪しろ。それが女性に対して使う言葉か!」

 アルクナイトはヤレヤレと肩をすくめた。そのポーズ好きだよね。

「人間というものは愚かしいな、服を脱がさなければ雌雄の区別もつかんのか」
「何よ偉そうに。アンタは服の上からでも全てを見通せるとでも言うの?」

 私はつい魔王に喧嘩を売ってしまった。これがマズかった。

「見通せるとも。おまえは上から84・59・88だ」
「………………?」

 一瞬何のことか判らなかったが、やがて彼の言った意味が脳を刺激した。

「おいぃぃぃっ、それってウィーのスリーサイズかよ!?」
「なんと」
「ぎゃあぁぁぁ! このセクハラ魔王!!」

 エリアスが真剣な眼差しを私に向けた。

「ロックウィーナ、アルの言った数値は当たっているのか……?」
「ちょっとエリアスさん!? アンタまでしれっとエロトークに参加するのかよ!?」
「違うルパート、私はいやらしい気持ちで聞いているんじゃない。あくまで確認だ。アルが真実を言っているならば、今現在ロックウィーナにしがみ付いている受付嬢は男ということになる」
「あ」

 勇者と元聖騎士は、私にスリスリしているリリアナを改めて見た。

「ウィー……、どうなん? 合ってるのか?」
「そ、それは……」
「確認の後、数値は記憶から消すと約束する。だから答えてくれロックウィーナ」
「うう。一ヶ月前に服屋で採寸してもらった時、確かそのサイズでした……」

 あぁぁぁ。私の秘密のサイズがバレたぁ。恥ずかしいぃ。
 エリアスとルパートはニッコリと笑った後、それぞれリリアナの襟首と腕を掴んだ。

「ロックウィーナから離れろ、この不埒者ふらちものが!」
「今まで長らく騙してくれたな!!」
「キイ────ッ!!」

 金切り声を上げて抵抗していたが、リリアナは男二人によってベリッと私から引きがされた。私は呆然とした。

「リ、リリアナ……。あなた本当に男の人だったの?」

 私の数十倍可愛いのに。

「ごめんなさい、ウィーお姉様」

 観念したリリアナは普通に男の声だった。

「何で女の振りをしていたんだよ?」

 ルパートが詰め寄った。

「身分を隠す為に変装していたんです。僕は誘拐されやすいので」
「誘拐される? 貴族の子息とかか?」
「いえ……」

 リリアナは質問しているルパートではなく、私をじっと見た。

「お姉様、僕の本当の名前はリーベルト・シュタークです」
「!」
「シュタークとは、この国一番の商会の屋号だな?」

 エリアスは彼の名字に反応したが、私とルパートは違った。

「リーベルト!?」

 声が揃った私達にリーベルトは抜群の笑顔を向けた。

「あなたっ……、私とルパート先輩が五年前に保護した、リーベルト少年だったの!?」
「はい。その節はお世話になりました」
「どういうことだ?」

 状況を呑み込めていないエリアスとおまけの魔王に、リーベルト自身が詳しく説明した。
 五年前に義理の母と姉によって、モンスターが棲息するフィールドに置き去りにされて殺されたかけたこと。そこを私に救われたこと。

「そんな事が……。キミも苦労したんだな」
「死を意識したあの時、目の前に現れたお姉様はまさに聖女でした。僕を励まし、背負って街まで連れ帰ってくれたんです。運命を感じました」
「解る……解るぞっ!!」

 エリアスは何度も頷いてリーベルトに同意した。そう言われてみると、エリアスとリーベルトは同じ状況で私と出会っているんだな。
 おんぶすると相手は惚れるのか。知らなかった。恋愛小説にそんなシチュエーションは無かった。

「俺も居たんだけどな……」
「ああ、当時のルパートお兄様のこともよぉーっく覚えていますよ。家に帰りたくないと泣きわめいていたあわれな僕を、セス先輩とマスターと一緒にお姉様から引きがしましたよね? さっきみたいに」
「あ、あれは仕方が無かっただろ……。おまえ、ずっと恨みに思ってたのか?」
「いーえー、別にー?」
「恨んでるな……」

 本当に……本当にあの時のリーベルトなんだ…………!

「ちょ、お姉様? 何故泣いているんです? どこか痛いですか!?」
「……だって、リーベルトが元気なんだもん。あんな別れ方したから、今も泣いてるんじゃないかって、ずっと心配で……」

 私の中では不安がって震えていた少年のイメージが強いのだ。ダークストーカーの頭をぶっ飛ばせるほどに、たくましい青年に成長していて本当に良かった。

「お姉様……、そんな貴女だから僕はずっと……」

 またリーベルトは私に抱き付いた。すぐにエリアスとルパートにがされたが。

「そうだ魔王様、さっきお姉様のスリーサイズ当ててましたけど、あれって透視とかしたんですか!?」

 それは私も気になっていた。

「どうなんだ、アル!」
「安心しろ、目で見ている訳ではない。情報だけ頭に入ってくる感じだ」

 少しだけ安心した。恥ずかしいことには違いないが、モロに見られるよりはよっぽどマシだ。

「リリアナ……じゃなくてリーベルト、おまえ独りでここまで来たのか? よくマスターが許したな?」
「あ、お腹が痛いって噓いて、トイレに行く振りして出てきました」
「ええっ、無許可かよ!」
「結界石だけじゃ心配で。お姉様を護りたくて」
「おいおい……。マスター絶対怒ってんぞ?」
「帰ったら先輩がマスターにとりなして下さい」
「俺かよ! 自分で謝れや!」
「あ? お姉様を護り切れなかった騎士《ナイト》が何言ってんです? 僕があのモンスターを撃たなかったらお姉様がどうなっていたか」
「……………………」

 ルパートが神妙な顔つきで黙ってしまった。言い返してくることを予想していたリーベルトは拍子抜けした様子だった。

「……オルゴールが手に入ったし、戦闘訓練もそれなりにできた。今日はギルドへ戻ることにしよう」

 エリアスが仕切って、私達は帰路につくことになった。 
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