2,009 / 2,079
23の扉 新世紀
ちぐはぐ
しおりを挟む実際、この家のキッチンはとても落ち着く空間だ。
朝早く起きて 二人で朝食の支度をしたこと
冬の朝 まだとても寒い時にホッと温まるスープを作っている時のいろ
眠れない夜にハーシェルが作ってくれたホットミルク
季節の飾りや 季節の野菜
季節の匂いと 瞬間の記憶。
そんな「いろいろ」が詰まった空間で
すっかりお姉さんになったティラナがお菓子を焼いて待っていてくれる。
「 こんな「素敵な瞬間」があって いいものだろうか。 いや、いい。」
「………お姉ちゃん。何言ってるの。こっちが新作だよ、これから食べてね。」
「 うん ありがとう。 」
ティラナのお菓子という贅沢を前に 私は
「思い出に浸っている」訳ではなくて。
「あの頃のいろんな私」を観ながら「瞬間を吟味している」のであり
そこにまた「今」が加わって「道が創られる」のを「観察している」、が近い。
そう それは
「観照」「静観して創るもの」だけれど
やはり「生きて」いるからには「彩られるもの」でもあって
やはり「存在とは鮮やかなものなのだ」。
「一線から引いても」「狭間であれど」
「ドラマに参加しなくとも」、現実は色鮮やかであるし
決して味気ないものでなく 寧ろ「本来のいろが視えるからより煌めいて美しい」。
それがわかる様になったのもやはり最近で、だから私は
こうして「実感できる瞬間」が好きだ。
「 うん、凄く美味しい。 でも、こっちも好き。 相変わらず上手いねぇ ティラナは。」
「フフッ、ありがとう。お茶も淹れるから待って。」
「 何から何まで うぅっ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
用意してあるティーセットの支度を待たずに
勧められた焼き菓子に手を伸ばしたのは私である。
しかし、喜んで「そんなお姉ちゃん」の為にお茶を淹れてくれるティラナは 一体どんな 話があるのだろうか。
こんな しっかりした子が 「悩み」
いや「悩み」 じゃないんだろうけど。
なんなんだろう
純粋に 気になる。
そうして「ふと手を止めた私」と
「お茶の支度をするカチャカチャという音」
「教会でハーシェルが誰かと話す遠い声」が
ふわりと重なって。
なんとなく「話し易い空気」が出来るから
世界は面白くて やはり興味深い。
だから
慣れた手つきでカップを扱う華奢な手を じっと見つめながら。
「その話」が始まるまで 大人しくクッキーを齧っていた。
う~ ん てか
やっぱりティラナって
お父さんより
レシフェに 似てるよね ?
それってやっぱり奥さん似ってことよね
だって髪色も瞳も「まんまレシフェ」だし
ハーシェルさんの灰色の髪でも可愛かっただろうけどね~
でもこのフワフワ感は やっぱり赤茶の方が
とっても 可愛い。
私が黙ってお菓子を堪能し始めると、
ティラナは 話をどう切り出したものか、考え始めている。
だから その様子を観つつもいろんな想像が廻るのだけど
確かあれから「ハーシェルのお許し」は 出ていない様な気がする。
ふむ。 どうだったっけな 。
ティラナはレシフェに会ったのか
まだ会っていないのか
私の記憶の中では確か 本部長の家でシャットに行く前に話して。
「これから協力するからその動き次第でティラナに会える」、
そんな内容だった気がする。
だがしかし それから「交流している」という話は聞いていないし
レシフェはもう向こうで主要人物となっていて、フットワークの軽い彼はどの扉間も自由に動いている筈だ。
そう、だから もしかすると。
知らぬ間にニアミスしているかもしれなくて
「その状況」を想像しながら、ひとりウンウン唸る。
まあ でも「その時」が来れば
それは「そうなる」し
それもまた「必然」
けどこの二人似てるからな~
普通に誰か気付きそうだよね うん
いや 実は
「もう会ってるけど」「私が知らないだけ」の可能性もアリ
実際「その場にいなかったから忘れてるだけ」という
「うっかり」も否めない
ふむ
てか今日は「その話」じゃなくて。
「ティラナの話」よ
そうそう
「 ん?」
「あのね、お姉ちゃん。」
うん、なんだい ティラナ。
つい、一人問答にハマっている間に。
憂いを含んだ茶色の瞳は じっと私を見つめていて
彼女の決心と話の纏まりがついたのが わかる。
実際 きっと
「いいたいこと」は 沢山あるのだろうけど。
ティラナ自身が混乱しない様に、要点を絞って話そうとしているのが視えるし
それにより「彼女が的確なアドバイスを欲している」のも、わかる。
そう、
実際「つらつら取り留めもなく話して」
「そのすべてに応えようとしたならば」。
肝心要の「芯の部分」は わかり難くなるだろうし
この年でそれを捉えこうしているのは 凄いと思う。
だから「そのティラナの意図」を きちんと汲み取り
更にその上から「この光景を観ながら」。
"この場のいろを的確に読む為に"
頭をまっさらにしたんだ。
「あのね、「言ったことを忘れる」とか。「約束を破る」とかって、普通は?ううん、普通のことなのかな?それで「ごめん」、っては言ってくれるけど、またおんなじなの。だから「ごめん」じゃないんだよね。それって普通なのかな?」
「 なるほど。うん、それで?」
「それに、あっちで私の悪口言ってた子が今度こっちに来て別の子の悪口言って、私に「そうだよね?」って言ってきたり。私の事嫌いなんじゃなかったの?って思うんだけど、そんな素振りはないし、なんで言ってる事がその場所によって違うんだろう?みんなの仲悪くさせたいのかな。」
「 ふむ 」
「なんか、いつも「なんでかな?」って思う事があるの。でも、次の日になるとみんな普通。あれ?昨日の事は?って思うんだけど、お姉ちゃん達みたいにみんな違う世界に行ってるのかな?それでまた帰って来て覚えてないとか??」
「 、それ 意外と言い得てるかも。」
だがしかし
「その説明」をすると事態がややこしくなるのは
間違いない。
「 なるほどね、ふむ。」
「うん、もっと言えば色々、あるんだけど。とりあえず内容は全部そんな感じで、だから私がおかしいのかなって。家にいる時は感じた事なかったし、ルシアやリールとはそんな事ないの。」
「 まあ、そうだろうね。 そうねぇ ちょっと 待ってね?」
「うん。お皿片付けちゃうね。」
「 ありがとう。」
私が 最適解を出す為の時間をしっかりと確保してくれる彼女はきっと
多少ややこしい話をしても わかってくれるに違いない。
いや しかし
実際それは「ややこしい話」ではなくて
「とてもシンプルな話」だ。
ただ 「それを どう捉えて」
「どう受け入れて」
「どう活用するか」の話
そして「目に見える世界が変わり得る話」。
だから「その切り口」を どう持っていけば最適か
「この場のいろ」を読んで。
素直な茶色の瞳を思い出しつつ、「それに合ういろ」を
抽出していった。
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