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6の扉 シャット
レナと手紙
しおりを挟むある、昼下がり。
私はレナと今後の相談をしていた。
今日はシュツットガルトにアポを取っていて、その時間まで休憩室で相談する事にしたのだ。
結局、グロッシュラーでどのようにして店を運営していくのか。レシフェからの宿題がまだ未解決だからだ。
シュツットガルトの所には、畑のハーブ使用許可と私はこっそり長老の事を聞こうと思っていた。
あの、フローレスの件だ。あの後フローレスにちゃんと想い人の名前は「ファルスター」だという事も聞いたし、ちょこっと聞けば判るだろう。
長老が「シュツットガルトの薬箱」の事も言ってたし、ちょっと覗いてみたいのもある。きっと、長老の薬箱には楽しそうなものが詰まっているに違いない。
あとはもしかしてルシアから手紙が来てリールやティラナの様子なんか書いてたりとかしないかな…………。
あ。
お茶の支度をしながら考え事をしていたので、ヤカンがカンカン言い出した。本当に「カンカン言って」いるのだ。
このヤカン、私も欲しいんだよね…。お湯が沸くと、「カンカン」ウルサイなんて面白過ぎる。これもウイントフークかな…。
何となくラピスの面々が懐かしくなった所で、レナが痺れを切らし声を掛けてきた。
「ちょっと。考え事してるでしょう?」
はい。バレてた。
レナに背中を向けている私は、しまったの顔をして苦笑する。
「ごめん、もう出来てる。」
そう言ってトレーに全部載せて、レナの向かいに座る。今日は久しぶりに糞ブレンドにした。なんだかんだ沢山持ってきたつもりだけど、もう少なくなってきたな…………。
「で?あれから何か思い付いた?」
レナに言われてまた我に返る。いかんいかん。
ちょっとホームシックなのかしら?そんな事を思いつつお茶を注ぐ。うーん。
お菓子が無いのがイタイんだよなぁ、シャットは。
「とびきりのお茶と、お菓子は必要だと思う。」
「は?」
そのまま欲望を口に出したら、レナの口がポカンと開いた。
うーん。あの美味しさ、私じゃ再現出来ないしな…………。どこかで一度帰って、イオスのお菓子を調達する必要があるね…。レナにも一度食べて貰えば、イチコロなんだけどな?
「まず、お茶出すでしょ?ちょっとつまめる、甘い物があるといいんだよ。」
「甘いもの?ふーん。とりあえずお茶は要るでしょうね。オリジナルで作るのもアリよね。」
「だね。今日畑に行くし、ハーブティーもアリじゃない?」
うんうん、お茶はいいでしょう。
でも、必要な物はすぐに思い付くんだけど多分問題はそこじゃないんだよね…。
じっと、レナを見ながら考える。今日も可愛いな…この髪、結局巻いてるのかな?なんだかんだで聞いてないんだよね、まだ。
レナの綺麗に波打つ青い髪を見ながら考える。
私がじっとレナを見つめて考え出したので、レナも何か真剣に考え出した。
そして、珍しく私に相談事を持ちかけてきたのだ。レナに相談されるなんて、私もグレードアップした気分。早速分かった風なフリをして、聞く。足を組んじゃったりして。
「ねぇ。ちょっと、聞いてくれる?」
「うん?どうしたの?」
「手紙をね、貰ったのよ。」
ほうほう、うん、手紙ね、手紙。…………え?
「え?手紙?………もしかして、ラブレター??」
てっきり、店の話だと思ってたのに、そんな展開?!
思ってもみなかったレナの言葉に、私のテンションは急激に上がった。
え?レナに?誰だろう?気になる!やっぱり!可愛いもんね?今迄貰った事無かったのかな??モテモテ!
「ウルサイ。」
ぜんぶ、心の中で思っていた事だったがダダ漏れだったらしく、しかも私は滅茶苦茶、ソワソワしていた。もしかしたら、動きが煩かったのかもしれない。
「すいません。…で?なに?誰?」
私の動きがきっとまだ煩かったのだろう、レナは顔をしかめながら、こう答えた。
「あいつよ。」
「え?あいつ?誰?」
「…………ベオグラード。」
「!!」
ええ…………。がっくし。
何だか嬉しくなさそうな、言いたくなさそうなレナの理由が判った。
おかしいなぁと思ってたんだよ…ラブレター貰ったのに全然嬉しそうじゃ無いし…そっか…あいつか…………ん?あいつ?
私に散々気を付けろと注意していたレナが、目を付けられてしまった。なんだか急に心配になった私はすぐに手紙の内容を聞く。
もしかして、ラブレターじゃ無いかもだしね??
「で?内容は?」
「これよ。」
そう言ってレナがポケットから出したのは、ラブレターとしては不向きであろう、豪奢な封筒。
縁は金で加工されているし紋章入りのグレーっぽい紙。勿論、中身の便箋も同じくで金縁の中をゴテゴテした縁取りの紋様が更に囲んでいてその中に気取った文字が並んでいる。
「うざっ。」
レナは「ウザい」の意味は分からなかったろうが、私の意図する事は伝わったようで「だよね。」と言って、内容を読むように促す。
なになに?
「僕の「青の女神」。君は唯一、特別だ。」
…………言葉にならない…。
「え?これだけ?いや、これだけでもキモいけど…………?」
私は裏返したり、二枚目が無いか、確認したりしたがやはり見当たらない。
レナの顔を見ると心底嫌そうな顔をして、チラリと私の持つ便箋に目をやり「シッシッ」としまう様に示した。
「ていうか、これ大丈夫?かなり、怖くない?」
「まぁね。」
文章だけ見ると、かなり怖い。いや、実物もある意味怖いんだけど。
「何かされたとか無いの?大丈夫?」
「うん…。今の所は、無いわ。ただ、やたらと見られてる感はあるけどね…………。」
えーーーーーー。ストーカーじゃん、それ。
レナに?ストーカー?
うーん。許せん。しかも「青の女神」。
まさか…………だよね?
私はとりあえず今できる事をぐるぐる考える。
そしてポケットから臙脂の袋を取り出すと、「目耳」を出して、言い聞かせる。
「レナを見てて。おかしな奴が近づいたら、知らせてね?あいつよ、あいつ。」
そう言って頭の中にあいつの顔を思い浮かべる。うげっ。
でも、これで多分あいつの顔は「目耳」も分かる筈だ。「ごめんね、気にならない様に付いて行かせるから。」レナにそう断って「目耳」を見えない様にすると、飛ばす。
これでとりあえずはくるくる見守ってくれるだろう。
オッケー。それで、何の話をしてたんだっけ?
「何かいやぁね。あれ、いるんでしょう?」
「仕方ないよ。危険があるよりいいもん。危ないよ?ストーカーだよ??」
ストーカーという言葉の意味は分かっていないだろうレナもやはり怖かったのだろう、あまり反対する事なく「目耳」を了承してくれた。
良かった、キモいからやだ、って言われると思ってたから。
でも、それだけレナもやっぱり怖かったのだ。普段気丈なレナからはその様子が全く感じられなかったので、これからは気を付けていなければ。見過ごさないように。
そう決心すると、また「目耳」に「ちゃんと見守るんだよ~」と念じておく。うん、これでとりあえずは大丈夫かな………?
とりあえず、キモい手紙の話は一旦終わりにして(私はラブレターと言うことすらやめる事にした)、さっき思いついた事を提案する事にした。
何だかシャクだけど、あいつのキモい手紙、その「特別」というワードで閃いたのだ。
「ねえ。いい事思い付いたんだけど。」
「なに?」
まだちょっと変な顔をしているレナに、安心させるようニッコリ笑いかけて、私は言った。
「貴石のさ、お姉さん達に利用してもらおうよ?」
「…………は?」
全く意味が分からない、という顔をしているレナにきちんと説明する事にした。
まぁさっき思いついたから、ザックリとだけどね。
「別に、男性に限った事じゃ無い訳でしょ?癒されたいのは。女性に流行れば男性も釣られて来るんじゃないかな?話題の場所、みたいな感じでさ。それとも「女の行く所」みたいになっちゃう?」
「…………そうね…。」
私の言葉を聞いて何か考え出したレナ。
私は正直、提案は出来るけど、それが現実的かどうかの判断をするのはやっぱりレナだ。女性が沢山来る事で、逆に男性が来れなくても困るし逆も然り。どうバランスを取るのがいいか、考えているのだろう。思ったよりレナの考えている時間が長いので、その間私はいつもの様に絵を眺めていた。
何だかおかしい、と思って見ていたが多分それは今日の絵が夜の風景だからだと気が付く。
いつも、その見ている時間と同じ時刻で景色だけが変わると思っていたが、どうやら違う時もあるらしい。
なんか意味あるのかな…………。
丁度、ラピスの夜景の様な星空に街の灯り、という懐かしい風景に変化している窓。修復室の窓と合わせて、なんだか懐かしい風景に触れる機会が増え私はちょっと寂しい気持ちになっていた。
うーん。
前にイルクも帰ってたし、里帰り?はしてもいいんだよね?でもまだ来たばかりと言えば、そうだしな…。早いかな。
「ヨル?」
「ん?ああ、…。」
そうだった、休憩室だ。
再び我に返った私を見ていたのは、さっきと打って変わってキラキラした瞳のレナだ。
「多分、イケると思う。」
そう宣言したレナは、何だか自信に満ち溢れていた。うん、美人度が三割程増してるよ………。
そんなキラキラのレナ曰く、貴石自体にもピンからキリまであってピンの方のお姉さん達を顧客に出来れば勝算があると言う。
グロッシュラー自体、女性が少ないそうで、その中でも希少とされる、力の強い姉さん達を味方に付ければかなり「イケる」筈だ、と。
「特別感ね。それを上手く出せれば、勝てると思う。」
誰と勝負してるんだろう?とちょっと思ったけど、余計な事は言わずにおく。
折角やる気になってるんだから、このまま詰めちゃおう。
そうして、私達はお店のコンセプトや何をするか等等、具体的な事を順にどんどん書き出していく。整理するのは後でいい。アイディアをどんどん出して、いらない物は省いていけばいいのだ。
集中しているうちに、実はシュツットガルトの所に行く時間を過ぎていた事に全く気が付かなかった私達の目の前に「目耳」が飛んできたのはその時だった。
「全く。あの呼び出し方は止めて欲しいわね!」
遅れたのは私達だが、「目耳」に慣れていないレナにはかなり心臓に悪かったようでプリプリしている。私はそれを横目で見つつ、エレベーターさんを待っていた。まじないで、いつでも乗れる筈なのに「ちょっと待ってて」と言われてしまったのだ。何でだろう?そう思いつつも、大人しく待つ。
でも、待ったのは多分ほんの数十秒だ。
すぐに「どうぞ?」と開いたエレベーターさんに乗り込み、私達はシュツットガルトの所へ向かった。
ポン
「B5」
B5がお家で、B7が畑ならB6はもしかして空?
そんな訳ないか…………?
そんな事を考えながら、シュツットガルトの家の扉を叩く。
「どうぞ」
いつものごちゃごちゃした部屋の扉を開けると、予想通りシュツットガルトとレシフェがいた。
「目耳」が来た時点で、居るのは確定だもんね…。
別にレシフェが居ても何の不都合も無いので、私達はそのまま部屋に入る。
今日はレナもいるので奥へ通された。確かにこのごちゃごちゃは女の子には不向きだ。何故だか私の時は、気にしてないっぽいけど。
「遅れてごめんなさい。」
「すみませんでした。すっかり話し込んでて…。」
二人で謝りつつ座ると、レシフェが何の話をしていたのか察した様で早速質問してきた。結構気にしてくれていたようだ。
「話はこの前の内容か?」
「そう。大体、いい感じに決まってきたわよ?」
「で?どうした、結局…………。」
基本的にはレナ主体なので、レシフェへの説明をレナに任せた私は用意されたお茶を飲んでいた。グロッシュラー同士の二人の方が話の通りも早いだろう。私は丁度よかったとばかりにシュツットガルトへ向かう。
そう言えばシュツットガルトさんと話すのも、久しぶりだな?
そう思いつつ、とりあえずは畑について、きちんと許可を取る事にした。
「あの、畑のハーブの使用許可はシュツットガルトさんでいいですか?」
「ん?ああ、大丈夫だ。なんだ、その事だったのか?」
「え?他に何かありました?」
「いや。…………いや、うむ。」
え?なんだろう。シュツットガルトさんが私に言い澱む事?
全く心当たりが無い。
私が考え込んでいると、ため息を吐きつつも話す事に決めたようだ。下を向いていた目線が、私に戻る。
なになに?悩み事?でもそんなの私に相談しないよね??
「あの、橙の像だ。」
ああ。
その彼の一言で、合点がいった。
「あれ…イスファですよね?」
「そうだ。いつの間にか、わしのデザイン画を見ていたらしくてな。まあ別段秘密な訳では無いから、見ていた事はいいんだが………多分、あれがお前さんだとは、気が付いていると思う。」
「…………。はい。」
「ここには青の石も、染料も無い。とりあえず造りやすい色で造ったのだと思うが、まだあの子の技術力では考えられない出来だ。………何かが引っかかる。」
「…と言うと?」
「まるで、何か乗り移ったような………いや、それは無いと思うが。一応気をつけて見てはいるが、今の所は普段変わった所はないのだ。とりあえず、気にしておいてくれ。それだけだ。」
「わかりました。何だか………心配ですね。最近あんまり会ってないけど、注意して見ておきますね。」
私はそうシュツットガルトに約束すると、それと一緒に畑の使用許可も取り付けた。
あとは…………。
「あの。シュツットガルトさん、長老の薬箱持ってますよね?」
「長老?とは?」
「あの、以前ここで先生だったんですけど、薬学の先生に追い出されてラピスに行った…………」
「ああ!ファルスターか!」
そう言って懐かしそうに「長老か、確かに!」と笑っている。
珍しく朗らかに笑っているシュツットガルトを見つつ、レナ達の方に目をやるとまだ何だか話し合いが白熱していた。ん?いい案だから、すぐオッケー出ると思ってたけど大丈夫かな?
いや、とりあえずは長老、長老。
くるりと向き直って、要望を伝える。オッケーしてくれるかな?
「私がここに来る前、森で話をした時に「困ったら薬箱」みたいな事言ってたんです。いや、困ってないんですけどね?どんな物なのか、見てみたいなぁ、なんて…………。」
「あれか…。別にいいが。だが、他の者には見せられん。こっちへ…。」
シュツットガルトは許可してくれたものの、やっぱり秘密らしいその箱を取りに、そして他の二人に見られないよう、手前の作業部屋へ移動する。
勿論、私もついて行ってシュツットガルトが机の下の方をゴソゴソしているのを眺めていた。
あんな所に隠してあったら、私は絶対見つけられないわ………。
ただでさえ、その辺に置いてある物を不用意に触ると崩れそうなのに。
ガチャ
重い扉が開く音に、二人ともすぐに振り向いた。
そこに立っていたのは、イスファだった。
いや、自分の家だからね?帰ってくるのは普通なのよね??
さっきまで「気を付けよう」という話をしていたので、反射的にビクッとしてしまった私。気付かれただろうか。
シュツットガルトは薬箱を探すのを止めて、さり気なく机の上にあったキラキラを手に取り私に見せてくれる。
まるで、始めからその予定だったかの様に、説明しながら作業を始めるシュツットガルト。
そこに置いてあったのはもうすぐ完成しそうな、泉の模型の様な置物。それにそのキラキラを手際良く貼り付けていく。
それは前回机の上にあって私が気になっていたキラキラだった。それを使って、多分泉だろう、大きな作品を作っているのだ。
私の胸位まである高さの、一枚の壁。その壁の下に泉があって、中庭の一部を再現したものだと判る。
泉の水をそのキラキラを使って表現していて、キラキラは半透明なのでその下の水草や魚が素晴らしく表現されているのも見える。
これはまた凄いものを作ってるな…………。
青の像といい、この泉といい、シュツットガルトの感性は物凄く私と波長が合うと改めて思う。
どうしたら、こういう風な完成形を思い付いて、更にこのレベルで仕上げられるんだろう?
でも、それがこの人の職人の腕と、それにぴったりな石って事なんだよね…。改めて感心する。
完成したら欲しいけど、無理だよな…………そんな事を考えていたら、「そういえば。」と思い付く。
教えてあげなきゃ、滝が出来たって。
絶対、見たいに決まっている。善は急げだ。
きっと、またこの作品もグレードアップするに違いない。
「シュツットガルトさん!そういえば、滝が出来たんですよ!」
「滝?滝とは?」
なんですと?滝を知らない?!…………ああ、でも確かに滝は無いな、どこにも。
そうなれば、見に行くしかないよ!
「とりあえず中庭に行きましょう!」
「よし!…ああ、でもヨルはここで待ってなさい。すぐ戻る。レシフェも話があるだろう。」
「そうですか?…じゃあ仕方ないかな…。今度は一緒に行きましょうね?」
滝について語り合いたかった私は、残れと言われて少々不満だったものの確かに勝手に二人でいなくなるのもな…と思ったのでシュツットガルトの意見に従う事にした。また後できっと一緒に見れるよね。うん。
そうと決まると、さっさと扉を後にしたシュツットガルトにちょっと笑って、ふと、イスファを見た。
そういえば久しぶりなのに、中庭に見惚れて挨拶もしてないや…。
イスファはシュツットガルトの作業机の上のキラキラを手に取って、私に向けてキラッと光らせた。そして「これ、何だか覚えてる?」と言う。
んー?そういえば、確かイスファが教えてくれたよね…。なんだっけ?魚だよね…確か。
「キラキラの魚…………?」
「いや………幻の魚だよ。」
クスクス笑いながら教えてくれた。うん、ちょっと恥ずかしいけどそんな事言ってたね、確かに。
「この魚、ここの川にいるんだ。知ってる?」
「ウソ?え?ここってシャットの橙の川って事?」
この川、魚が住めるの?
「そう。橙の川は、夜暗くなると空より川が明るくなる。その時に泳いでいるのが見えるんだ。」
何それ。めちゃくちゃ見たい。
「見たい。え、イスファはどの辺にいるか、分かるの?」
「そうだね…大体は。僕は一応ここで育ったから。」
そうだ。…じゃあイスファはシャットにかなり詳しいって事だよね…。魚は見に連れて行ってもらうとして、畑の事とかも知ってるのかな?
でも、とりあえずは幻の魚だ。絶対見たいし、もしかして鱗があるという事は…?
「これ、釣れるの?」
「運が良ければ。見る事は、多分出来るけど釣るのはなかなか難しい。でもヨルなら釣れるかもしれないな?餌が、まじない力なんだ。」
「え?」
まじない力の餌?
面白いけど、ちょっと怖い。めちゃくちゃデカくて、私食べられちゃったりしないよね??
私がちょっと怖がっているのが分かったのだろう、イスファはまた楽しそうに笑って「大丈夫だよ」と言う。
「餌に力を込めるだけだから、大丈夫だよ。それにきっとヨル一人じゃ夜に出掛けられないだろう?」
「ああ…………それがあったね…。」
うーん。夜間外出許可。出るかな?
何だか不安な瞳をしてたし…でも、一緒に行くなら大丈夫だよね?とりあえず、聞いてみなきゃ!
「絶対、諦められないに決まってる…!」
あ、口に出てた。
「とりあえず許可が出たら教えてよ。」
「うん!絶対説得する!」
「何?どうしたの?」
「レナも行こうよ!幻の魚だよ?凄くない?」
「は?幻の魚?…これ?………でも確かにこの鱗は魅力的ね…アクセサリーにしたら綺麗よね?」
「それもいいね!ピアスとかめっちゃ可愛いよ、きっと。」
私が煩かったのか、隣の部屋にいたレナがやってきて話に加わる。どうせなら、みんなで行ったら楽しくない?
うん、その方がきっと許可も取りやすそうだし………フフ。
その目論見もあったが、私が気になっていたのはシャットの夜。夜外に出た事がないので、一度出てみたいと思っていたのだ。しかも、夜になると川の方が明るいなんてどんなのか物凄く気になる。明るい川に、キラキラ泳ぐ魚…………。
行くしか、ない。
そう決意した私が張り切っていると、丁度シュツットガルトが帰ってきた。
「凄い…………。」
そう言いながら、私たちに構わず制作の続きに入ってしまったので暗黙の了解で今日は解散だ。
ん?レシフェの話は何だったんだろう?
そう思ったけど、作業部屋に入ってきたレシフェの顔に話したそうな素振りは見えない。とりあえずはイスファにサヨナラを言い、みんなで廊下に出た。
帰り道、そのまま三人でグロッシュラーでの話になったから、また後日でいいだろう。急ぎだったら、きっと今言う筈だし?
そうしてお店の目処も立ち、幻の魚を見に行く事を喫緊の目標にした私はどう気焔を落とすかしか、考えていなかった。
そんな私をちょっと呆れた目で二人は見ていたけど、そんなのは些細な事。
絶対、釣ってやるもんね!
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