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7の扉 グロッシュラー
扉を開けて
しおりを挟む「「お主、暫く黙っておれよ?」」
え?どうして?
「「面白いものが観られようよ。お前の欲しいものが降ってくるやも知れん。」」
うん?
それなら、いいけど。
大丈夫かな?
どこへ、行くんだろう。
「では、私はこれで。」
「「ご苦労だった。」」
「「どうした?」」
「いや、……………あの、娘は?」
「「ふん、寝ておるわ。固く、閉ざされた部屋へ入ってしまったぞ?もう出て来ぬかもしれんのう。」」
あっ。
気焔だ。
うん?でも黙ってろって、言ってたよね?
てか、この人、誰………?
まだ、辺りは真っ暗。
多分、女の人が私の側で話しているのは、解る。
でも気焔の側に来たから大丈夫か………。
とりあえず、黙ってればいいんだよね?
うん……………。
「………?!何を…。」
「「うん?私のものに何をしようが勝手であろう?お前も望む事と違うか?」」
「否。」
「「ふぅん。「外側」は同じであろうに。まぁ良い。あの子に免じてこの位にしてやろうぞ。」」
?
静かだ。
まだ、周りは見えない。
でも、あの人の声がしなくなった。
気焔の声もしないし………。
大丈夫かな?私、ここから出られるのかな………。
そもそも何でここに居るんだっけ?
確か………
気焔が
何か「違うもの」を見るような………
目をした?
あの時の、眼。
私を「畏れた」眼。
そうだ。
それで心がギュッとなってそこから覚えてないんだ。
どうしてだろう。
でも、怖い。
また、あの眼をされたら?
まだ、あの眼だったら?
大丈夫かな、私。
生きていけるかな………。
いや、死ぬっていう選択肢は無いんだけど。
そうじゃなくて気持ち的に………
最近フワフワしてたからなぁ。
バチが当たったのかな………。
みんな大変なのに私だけフワフワ癒されてたから?
もっと、もっと、出来る事あったんじゃない?
いやでもな。
みんなが癒されてないのと私が癒されるのは別問題で無問題だよな。
何だこの「みんな一緒に不幸でなきゃダメ」みたいなやつ。
たまにそういう事言う奴いるけど、そんなんブタにでも喰わしとけばいいわ。
いや、ブタもそんなの迷惑でしょ。
危ない危ない。
暗闇は私を違う方に引っ張って行こうとしている。
駄目駄目。
私はもりもり癒されて、みんなをもりもり癒せば、いい。
それだけよ。
間違えないで?
でも。
あの瞳が戻らなかったら?
あの、優しい金の瞳はもう無くて、あの眼しか、無かったら?
そうか。
それでも、いいんだ。
だって、私はあの瞳が優しい色を宿したから好きになった訳じゃ、無い。
あの、怖い「あの瞳」を見た後でも、彼が私とは違う生を生きるものでも、やっぱり私のものにならないとしても。
好きな事、想う事は自由だし、誰にもそれを止める権利はないんだ。
そうだよ。
歌ったじゃん。
「好きでいていい」んだって。
私の気持ち、持ってて、いいんだって。
もし。
要らないって言われても。
誰にも歓迎されるものじゃ無くても。
私がちゃんと、可愛がってあげればいいよね?
大切にしなきゃ。
折角、生まれた「気持ち」なんだから。
いい子いい子、してあげよう。
ここで撫で撫で、可愛がってあげよう。
何だか、誰もいないみたいだし?
暗いし、何も見えないし、気焔は何処行ったんだろ?
ナデナデしてたら迎えに来るかな?
大丈夫。あの眼のままでも、可愛がってあげるからね。私の「想い」ちゃん。
しかし誰も来てくれなかったら嫌だな………。
怖いけど、少しは進んでみようか?
とりあえず、落ちたりしないか足を延ばして………。うん…………?
それから暫く。
どの位か、分からないけど私は進んでいた。
暗闇の中を、もしかしたら1メートルも進んで無かったかも知れない。
でも、自分の足で確かめて、少しずつ、少しずつ、進んでいたんだ。
「…………る。依る?」
「聞こえるか?」
「依る。…………依る………。」
何だ?
めっちゃ呼ばれてるな。
気焔の、声。
最早懐かしいな。
はーい、今頑張ってますよ~。全然進んでないかもしんないけど。とりあえず、「真っ直ぐ」進んでまーす。
しかし、声は出せない。
私はまだ、暗闇に囚われているようだ。
「依る。」
えっ。
大丈夫かな?
…………泣いて…ないか。あの人、泣くの?
どうかな…………。
「依る。吾輩の対よ。」
うん?
対?
何処かで聞いたな…………。
何処だった?
何処かで………強く、想った筈だ。
あれは
何処だった?
いつだった?
わたしは
だれだった?
………………………………
そう言えばさっきの人、誰だったんだろう?
何だか「混じりもの」って。
言ってたよね?
「懐かしい」とも。
気焔の、あの眼。
…………。
いや、まさか。まさかね。うん。きっと違う。
そうそう、それなら誰か教えて…………。
(くれようとしてなかった?)
(何度か、私が「聞かなくていい」と言った事が、無かったか?)
ある。
いやいや。でも。
えっ。なんで?
だから?
だからなの?
どっち?
私はどっちなの???
あなたはどっちを呼んでいるの????
「依る。」
「吾輩、必要としているのは「お前」だけだ。」
ホントに?
「依る。」
「何度でも言おう。帰って来い。大丈夫だ。吾輩もう、迷わんよ。」
やっぱり迷ったんじゃん…………。
「依る。」
「然らば。行くぞ?」
そう、気焔が堪り兼ねた様に言うと急に暗闇に暖かさが宿る。
ふんわりとした気配。
少しずつ、少しずつ浸み込んできたそれは遠くに見える紅い何かになってきた。
何だか、それが解る。
あれだ。
きっと、あそこが出口。
あまり動かない身体を引き摺って、灯り目掛けて進む。
そのうち、堪り兼ねた様にまた灯りが迎えに来た。
橙の、灯りだ。
それはくるくると周りながら火の粉を撒き散らし、私の処まで来ると旋回しまた光を撒き散らす。
光なのか 火の粉なのか。
その中の小さな金色が一瞬弾けて、私の口に「スポン」と入った。
「えっ。」
ングっ。あったかい。
ん?何だこれちょっと甘いな………。
美味しい。
もっと。
舐めちゃお。
お腹空いてたのかな………。
もっと?
もっと、頂戴?
少しずつ体の感覚が戻り始めた。
目を瞑っていても辺りが暗闇では無くなったのが判る。
身体は、ふんわりと抱えられている様だ。
いつもの、感じ。
ただ、腕のチカラが少し、強い。
痛くはないが、力の籠った腕に全体の感覚が戻って来るのを感じる。
うん?
あったかくて、柔らかい。
甘い。
暖かい………風?
身体に、流れ込んできて気持ちいい。
もっと。
もっといっぱい、頂戴?
うん、そのくらい。それを、もっとずっと。
うっ。苦しいよ、そんなにギュッとしないで。
もう少し、優しく、優しく…………。
えっ?
何かおかしな事に気が付いて、目をパチクリ開く。
見える。
見えるけど、何コレ!!!
私の眼前にあるのは、金色の、睫毛。
凛々しい、眉。
目は、閉じられている。
えっ!近っ!なに?なんで?
まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか!?
そう、私は気焔に喰べられていた。
多分、暖かいと思っていたのはこの、口から入ってくる「チカラ」か、何か。
もしかしたらさっき飛んで来た光かも知れない。
いやいや、そんな、そんな事じゃなくて!!
それどころじゃなくて!!!
ちょ、ちょっと?気焔さん?!
これ、私のファーストキスなんですけど!!?!
気が付いた所で腕の力が強くて全く、動けない。
そして、少しは戻って来たが私の身体は何故だか力が入らないのだ。
もしかしたら、さっきの「あの人」が何かしたのかも知れない。
ちょ、ちょっと!
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい…………!
恥ずか死ぬから!!
えっ?ちょっと待って?
私さっき「もっと、もっと」言ってなかった??
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
えっ。
ちょ、初心者にはそのキス難易度高いから!
待って!
コラ~~~~~~ーーーーーーーーーー!!!!
私の反応が変化した事に気が付いたのか、目を開けた気焔。
「ああ、あの、瞳だ」あの、見ちゃダメなやつ。
動けないやつ。
私と目が合ったのに、そのまま私を縛る気焔。
有無を言わさず、多分、彼の気の済む迄、私は喰べられた。
ああああああああああああああああああ…………
多分、チカラを注ぎ込まれた、私。
でもさ。
あのさ。その。あの、アレが。
私の乙女心が。もう、大変なんですよ。
そこの、金色の人。
それと同じか、寧ろマイナスになる位のこの疲労感?いや、ドキドキ疲れ?
嫌じゃないよ?嫌じゃないんだけど、嫌じゃないからこそ心臓と心とついでに身体もドキドキし疲れたって言うか、なんて言うか、その、あの、ん?
あれ?
なんで?
「バチン」って、ならなくない?
そうして現実に戻ってきた私は、改めて状況を把握する。
どうやら、まだここはオルガンの部屋だ。
そして多分、私は椅子に座る気焔に抱えられている。だから、そっちを見れない。
私達の他には、誰もいないみたいだけど?
あれ?最初からそうだったっけ?
誰か、居なかった??気の所為かな?
えっ。どうしよう。
これ、上見たら、見てるかな………。見てるよね………?
私が一人、脳内でまごまごしている間に話声が聞こえてきた。
多分、あれは朝とレシフェだ。
ベイルートさんも、いるのかな?
扉が開く、音がする。
何となく気恥ずかしくなってパッと目を閉じた。
「そろそろいいかと思って来たんだけど………?大丈夫、それ。」
「ああ。問題無い。」
「なら良かったけど。ちゃんと、言ったんでしょうね?ハッキリさせないからいけないのよ?」
「ああ。すまなかった。きちんと、チカラも流し込んでおいた。大丈夫な筈だが。」
「ん?「チカラを流し込んだ」?どうやって?」
「お前まさか………。」
「いやいや、そこまで出来ないでしょ。あの子相手よ?」
「そうだな。」
「そりゃそうだろうが、何をどうしたんだよ。」
「まぁねぇ?それにしても…。」
もう、無理。
「ちょ、ストップ。駄目。もう、無理。」
暴かれていくドキドキにまたドキドキして、限界が来た。
あまり身体は動かないけれど、目は開く。
くるりと目を動かすとみんなが、私を見ていた。
レシフェは何だかしょっぱい顔をしているし、朝は澄まして座っている。
ベイルートさんは、光ってる。うん。
観念して、上を見上げるとそこにはちゃんと優しい金色を湛えた、瞳があった。
「とりあえず、行くぞ?」
先に飛び立つ、ベイルート。
そういえば今、何時だろう?
どの位、ここにいた?
「もう、夕方よ。因みにあんた達のお弁当は美味しく頂きました。」
それなら、テトゥアンも喜ぶかな………?
レシフェと朝もベイルートに続き、部屋を出た。
少し私を下ろし木の床に足を着ける、気焔。
心許無かったのか、そのまままた抱えて部屋を出る。
もう大分薄暗い神殿の廊下を抜け、太陽の踊り場を抜ける。
回廊へ出ると天井は落ちているので、幾分明るくなった。抱えられている私からは、額縁の雲が、よく見える。
少し夕方の橙の気配を感じた気がして、金の髪を見た。
あの時、また橙に変化した髪、取り込まれた光。
もしかして?
「光の、所為?」
そう、少し前にも瞼に触れられた。その時も、弾かれなかった気焔。
あの時も私の光を取り込んでいた筈だ。
「言ったろう、「チカラ」になると。」
確かに。気焔は「お前が信じればチカラになる」と言った。
そっか。
ん?でも弾かれないって事は?
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや
あんなんしょっちゅうされたら心臓保たんわ!
熱くなってきた頬を手で挟みながら、金の瞳を見ない様気を付けて、揺られていた。
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