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7の扉 グロッシュラー
不思議な、穴
しおりを挟む「先に行くぞ?」
「うん…………。」
旧い神殿に着くと、私が舐める様に地面を見渡し始めたのでレシフェはそう言って気焔を池に連れて行った。
多分、ここは滅多な人は来ないしレナもいる。
私達だけで大丈夫だと、思ったのだろう。
それに、ここはとても、静かだ。
水の流れる音以外、殆ど音がしないのもあるけれど、何かしら嫌なモノが近くに来たら気が付くのではないか、という清浄な空気が漂っている。
それも、私がここを気に入っている理由の一つだ。
レシフェは最初の頃見せていた躊躇いは何処へやら、スイスイと気焔を伴い奥へ消えて行った。
「ねえ、レナはここ来たことある?」
「無いわよ。勿論。なに、ここ?何か良いモノでもあるの?」
「まぁね…………。ある、かも?しれない…。」
「なにそれ。」というレナの声を聞きながらも私の視線は地面を這ったままだった。
土自体、はあった。
思っていたよりも、土っぽいのだけれどやはり色は灰色なので何となく土に栄養が無さそうなのである。
「肥料………?」
ブツブツ言いながらもそのまま瓦礫を避けつつ、少しずつ移動していた。
お堀の様になっている回廊の周りには、背後の池に行ける一筋の道があるだけで辺りは瓦礫しか、ない。
少し行くとすぐに断崖絶壁だ。
土を確かめながら、ソロリソロリと島の端ギリギリの瓦礫の山付近を確かめていた。
「そろそろ戻りなさいよ。危ないわよ!」
「はーい。」
お堀近くを歩いているレナが私を呼ぶ。
確かにギリギリだな。
グロッシュラーは殆ど風がないけれど、これで強風だったら私落ちるかもね。
そんな呑気な事を思いつつ、「この裏をちょっと見たら戻ろう」と思いヒョイと瓦礫を覗いた。
「…………?」
「どうしたの?」
私の様子を見に来た朝が、気が付いて先に前に出た。
その、瓦礫の小さな山。
その後ろには少し影になっている、穴の様なものがあった。
気の所為かと思って、よく見ようとしたが結構これが崖っぷちにあるのだ。
朝が来てくれて良かった。
きっと私がのこのこ行ったら怒られるに違いない。
「深いわね…………。」
頭を突っ込んでいる朝は言う。
「えっ?やっぱり穴なの??………どんな感じ?何か居たりしないよね?」
急に何かが飛び出てきて朝が落ちたりしても困る。
私は心配してそう言ったのだけれど、朝は「フン」と鼻を鳴らして「大丈夫だけど………何か匂うわね。」と言っている。
ん?なんの匂い?
「違うわよ。臭いとかじゃなくて、この穴は普通じゃないって、コト。」
なんで「臭いのかな?」って思ってるのがバレたんだろ………。
とりあえず、朝に気焔とレシフェを呼びに行ってもらう事にした。
「何があったの?」
朝が走って行ったので、レナが心配して様子を見に来る。
あまり端にいると怒られるので私も少し、お堀に向かい歩いた。
「うーん?穴?なんだろうね?秘密の穴だったりして…フフ。」
なんだかワクワクしてきた私は、前に来た時は全然気が付かなかった事を、思い出していた。
まぁ、こんなに端っこなかなか歩かないとは思うんだけど。
しかし、改めてその瓦礫を見ると少し崩れ方が新しい様な気もする。どの位の高さだったのかは分からないが、半分くらいからの割れ目が新しいのだ。
しげしげと見つめていると、三人が走ってくる足音が聞こえた。
「お前らはここで待ってろ。」
そう、レシフェが言っている間に気焔は瓦礫の周りを周る。
「ふん?」
「えっ。」
気焔がパッと消えたのと、私が驚いたのは同時だった。
「ウソ?!」
落ちたのかと思い駆け寄る私をレシフェが止める。
「ちょっと落ち着きなさい。多分、下りたのよ。」
ん?
朝の言葉にピタリと止まりレシフェの顔を見た。
しかしレシフェもまた疑問顔で、朝に訊いている。
「下りた、という事は下があるって事か?洞窟か、なんかか?」
「分かんない。だから、確かめに行ったんでしょ。とりあえず、待ってましょうよ。」
朝は多分、下に空間があるのは分かっていたのだろう。
言葉の雰囲気からして、そう危険な感じはしないのでとりあえずみんなで待つ事にした。
確かに気焔が行くのが、一番効率的には、いい。
その間に私は二人で何をしていたのか、訊いてみた。
さっきから、男二人で何話してたんだろう、と思っていたから。
「だって絶対、私にも関係ある話だよね?」
そう言う私に少し困った顔をしつつも話し始めたレシフェ。
でもそれは、二人の会話の内容というよりは私に対しての注意の話だったけれど。
「いや、新しい礼拝堂の石をどう調達したかの話とか、だが。まぁ、それはウイントフークだ。実は、お前の石は爆けなかったからそれを核にして他の適当な石を繋げて作ってもらった筈だ。」
「………そうなの?」
何の石が爆けたのか。
そこまで確認した、わけじゃ無い。
それに、私はすっかり眠り込んでいたから。
でもその話にはすんなり納得がいく。
だって、私のチカラだから。
私の石が、爆けるわけがないのだ。
「で、だが。」
えっ。なに。
いきなりズイと前に出て私をじっと見るレシフェに、一歩下がる。
思わず少し後ろにいたレナの袖を掴む、私。
お説教の雰囲気がするからだ。
「お前、今後ネイアの石を作る時は必ず俺らに言えよ?勝手に、歌ったり、祈ったり、するなよ???」
えーーーーーーーーーー。
なんで???
分かったの????
思わずレナの顔を見ていた、私。
そんなレナは「何の事だか分かんないけど、あんたは分かり易すぎるのよ。」と言っている。
えーーーーーーーー……………。
まぁ。
でも。うん。そうだよね。はい。
「分かった。」
「うん、まぁいい。それは、多分皆思う事だ。アイツらを味方にしないとこっちもやり辛いからな。だが、お前一人で無理するなって事。」
「はぁい。」
「みんな思う」と言われて、ちょっとホッとする。
ラガシュの話を聞いた時、一番に思い付いたのは「私が石を作ればいいじゃん」だった。
確かに気焔ならば、それにすぐ気が付くだろう。
心配してたんだ、きっと。
それに、反対されなくてホッとした。
そもそも私が石を作れる事は絶対内緒だと言われている。
作って、持って行ったところで「じゃあそれで」とすんなり行くかは分からないし、きっともっと協力者が必要な筈だ。
でも気焔やレシフェに反対されたらそもそも石は多分、作れない。
第一関門は突破できた事をホッとしたところで、フワリと辺りの空気が変わる。
「あっ。」
気焔が帰ってきたのだ。
久しぶりに、橙の焔を纏って。
「うーむ。」
しかし、私を見て唸っている。
そうして、レナを見て言った。
「お主、以前魔女のがどうこう、言っとらんかったか。」
話し方が戻っている気焔を少し驚いた様に見ているレナは、少し考えてこう答えた。
「あの、お化粧の話してる時かしら?多分。」
「そうかもしれん。…………しかし。」
また視線が私に戻って、ため息を吐く金の石。
それは、勿論「魔女」と「お化粧」という単語に私が目をキラキラさせているからなのだろう。
でも、これでコーフンするなってのが、無理!
出来るだけ騒がない様にピョンピョン飛んで喜ぶ私を見て、レナが言う。
「まさか、下にあるのは魔女の家、とか?」
「左様であろう。」
「まぁ、心配なのも分かるけどコレで連れてかなかったら………あんたが無理なんじゃない?」
二人の視線を感じつつも、浮かれた私はピョンピョンくるくる、回っていた。
「鼻歌も禁止よ?」
そう、朝に言われながら。
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