透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

湖の家

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「いや、いつもは売りに来てくれるのよ。小さいお店って感じね。何か小さいトランクから沢山物が出てくるから、あのウイントフークの石と一緒だと思うわ。」


それってやっぱり、ウイントフークさんのお母さんだよね?


私が一人、そう思っていると下を見てきた気焔が言う。

「知り合いか?」

「ううん、まぁ顔見知りって感じ?そう、しょっちゅう会うわけじゃないし。とりあえず行ってみましょうよ。」
「うんうん。」

思いっきり、頷いて期待の目を向ける。
少し不安そうな目をしている気焔に「大丈夫」と目配せをした。

「お前、そもそも植える場所を探してるんじゃないのか?」
「うっ…………でも………ちょっと、だけ。」

レシフェにも鋭いツッコミを入れられたけど、ここまで来てまさか魔女の家が見られないなんて、無理に決まっている。


「…………分かったよ。」

ジトッとした目で見ていたら、渋々レシフェも頷いてくれた。



「じゃあ、お先。」

私達の話が纏まったのを聞くと、朝が穴の上でスッと消える。

ていうか、どうなってるんだろう?
階段?

私の疑問の眼差しに気焔が答えた。

「レシフェはそっちを頼む。落ちるから気を付けろ。」

ん?落ちる?

私が「??」と疑問顔になっているうちに、気焔はパッと私を抱え瓦礫の陰に向かう。

「え?え?ホントに?」


返事を聞く前に穴に落ちたのが分かって、私はその落下のスピードに目を瞑るしか、なかった。

もう、言ってよ~!






落ちていたのは、そんなに長い時間じゃ、なかった。

一瞬ふわりといつもの感覚がきて、「それなら始めからフワフワ下りてよ…」と思ったけれど、そうすると時間がかかるのかもしれない。
そう、その景色を見て、そう思った。



サワリと湿った風が、頬を撫でる、感覚。

風が、あるのだ。


「…………すご………。」

なんで?
水が、いや、湖があるんですけど???


私達が降り立ったのは、何故だか桟橋の様な湖に浮かぶ、木の通路だ。
丁度、真ん中あたりに立っているが片方は靄がかって、遠くは見えない。

もう片方には、なんだか煌びやかな家がある。

「あれが、魔女の、家?」

煌びやかと言っても、豪華、とか大きいお屋敷、というものではない。


は三角屋根の小さな、木の家。

しかし周りが木立に囲まれている様に見え、その木に実がなっているように光がキラキラ、しているのだ。
例えて言うなら、クリスマスイルミネーションが近い。それの、めっちゃ電飾付いてる感じ?


「なにあれ!凄い!凄い!」

辺りの景色も美しく、夕暮れなのかそれにしてはピンク、紫、青、紺のグラデーションが鮮やかな空。
空、と言うか湖以外は何も、見えない。

遠くは薄く、ぼんやりとしていてただただ綺麗な空と水平線が繋がっている様に、見える空間。


湖面に光が映し出され、グラデーションの上に煌めく、金色。
木に付いているキラキラが湖に反射して、まるで星に囲まれている様に見える、魔女の家。


流石の私もこれだけ別世界なのだから、まじない空間なのは、解る。

でも、このセンス。

絶対、気が合いそうなんだけど。

夜になったら、これが全て星空になるとかなら感動ものだ。
いや、今でも十分美しいのだけれど。



私が「ほぅほぅ」言っている間に、レナとレシフェも到着していた。

「これは…………好きそうね。」
「確かに。」

二人は意外とアッサリしている。
二人とも景色をぐるりと見渡すとその桟橋を確認し始めた。
足元が不安らしい。

こんなに素敵な空間なのに、なんで??


「でもさ、これだけの空間って作れるものなの?」

「俺もそれは思った。」

私がレシフェと話していると、辺りを見渡している気焔はこう言った。

利用しているのだろう。」


?なにを?

気焔以外の三人で顔を見合わせていると、その魔女の家から朝が走ってくるのが見える。

いないと思ってたらまさか、先にお邪魔してたなんて!


勿論、私も走って向かった。
背後で「走るな、危ない!」と過保護な人が何か言っていたけど、そこそこの幅はある道だ。

流石の私も落ちないよ…。



一番に魔女の家に入りたい私は、朝をパッと抱き上げて「で?どうだった?」と聞きながら歩く。
勿論、家に向かって、だ。

「流石にバレてたわよ。待ってるわ。」

「ねぇ。朝だから言うけど、お母さんだった?」

みんながいると、訊けないかも知れない。

特に朝には「ウイントフークの母の件」は話していないが、すぐに分かったのだろう「そうね。」と言う。

それだけ分かれば、後はまたこっそり………来れるかな??すぐ分かったって事は、似てるのかな?
フフッ。


そうして私は悪巧みをしながら、魔女の家の扉を叩いた。








「いらっしゃい。」


その扉は、すぐに開いた。

出て来たのはやっぱりお母さんだった。
何故分かったのかと言うと、顔も似ているけれど雰囲気がそっくりだったから。


しかしその人は私をパッと中に入れると、外に向かって「ちょっと待ってて。」と言いパタンと扉を閉じた。

「ん?」

振り返っていた私は閉じられる瞬間、気焔が何か言っていた気がしたけれど多分この中もまじないの部屋なのだろう。
もう全く外の音は聞こえず、外界から遮断されているのが分かる。

さすが。

なんだか守りが、固い。


「さて、と。悪かったね。君は、ヨルだったかな?悪いね、うちの子が。」

えっ。
話が早い。

私は何を言っていいのか、分からなくてそのまま彼女の顔をまじまじと見つめてしまった。


少し癖のあるふわりとした髪は背後で一つに束ねられていて、ストレートにするとウイントフークと同じ髪色なのでもっと似ているだろう。
瞳も、似ている。
彼女の方が少し、薄い茶だ。

そうしてまた同じ様に白衣を着ているものだから、この二人が会った事がないなんて私には信じられなかった。

「あ、の…………。」

「ああ、私はイストリアだ。よろしく。」
「あ、ヨルです。よろしくお願いします、って言うかなんで分かったんですか?」

その、質問には答えずに彼女は私を部屋へ案内する。

私達が話しているのは、まだ扉のすぐ内側、家の入り口だ。

左右には沢山のスワッグというか、多分スワッグにする前の花やハーブが所狭しと下がっていてちょっと、狭い。


「まず、お店へおいで。」

そんな魅力的な言葉を聞いて黙ってはいられない。

イストリアの背後について奥へ進みながら、「気焔、心配してるだろうなぁ」と思いつつも、私はワクワクに勝てなかった。






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