235 / 2,079
7の扉 グロッシュラー
男達の相談・ラジオ電話
しおりを挟むある日のラジオ電話。
始めは全く光に気が付かなかった。
いや、目には入っていたが本を読んで考えていたから無視していた事になるのか?
まぁそれはいい。
とにかくあの番号はグロッシュラーからのボタンだ。
前回は祭祀でどでかい扉を出して石が爆けた話、その前は旧い神殿で歌ったら何故だかいい石が出来た話。
さて、今回はどんな話か。
聞きたいような聞きたくないような。
持っていた本を置き、カップのお茶を飲むと冷たさに喉が鳴る。
まぁいつも温かいのは始めの一口だけだからな…。
催促する様に点滅するボタンを押すと、怒った様な第一声が耳に飛び込んできた。
「遅い。」
「なんだよ。解ってるだろう?」
「…………。」
「ああ、この前池の話をしただろう?」
おい。突然割り込んできて突然脈絡のない話をするな?
そう言ったならばきっと「それはお互い様」というレシフェの顔が浮かぶ。
古巣に帰ったアイツは少し楽しそうに聞こえるのは俺だけか。
適当な相槌を打ちながら、話の続きを促す。
「この前融通してもらったのは、ネイア用の、石なんだが。ウイントフークは知ってたか?ネイアの石が、人質だったって。」
「いいや?気にした事は無かった。」
「ああ………そういう事ね。はい。」
どういう事だ。
「で。うちのあの姫さんだけど。案の定、ネイアに石を作ればいいとさ。まぁそれで味方になるなら悪くはないと思う。だが…。」
「どこまで、話すかなんだよな。信用できる奴も、いるにはいるが、できない者も多い。」
口を挟んできたのはベイルートだ。
俺は、本当にベイルートが石?虫?になって、グロッシュラーへくっ付いて行って良かったと思う。
レシフェはいつもあの二人と一緒な訳じゃない。
気焔は、まぁ、アレだ。
本人からの証言も…………アレだ。
まともな大人の話。
それを俺にする、伝える、役目が必要なんだ。
あの二人じゃ、ちょっと、な。
そんな俺の心情を知ってか知らずか、ベイルートは的確な報告をしてくる。
「とりあえず、ウェストファリアはいいだろう、ラガシュも大丈夫、あれはもう僕になった、その系列でウェストファリアを抑えてるから白は大丈夫だ。」
「まぁ青は関係が深そうだからそれもいいとして。でもラレードは面倒そうだから却下。」
「とりあえずこの辺には、「石を創れる」ことは言うしかないと思うんだが、どうだ?」
「まあ、そうだろうな。配るにしても、説明がつかない。ウェストファリアは必須だしな。」
「そうなんだ。まあ理由も正直、彼が考えるのが一番いいと思う。他のネイアには、やはり保留か。」
「それがいい。「石を創れる」なんて、最悪だからな。」
本当は「最高」と言ってやりたい所だが。
あまりにも、危険過ぎる。
今迄の歴史、この世界の均衡。
全ては「石」が起点になっている。
多分、その筈だ。何を調べても。
何処の、扉へ行っても。
「石」の所為で平和が保たれ
「石」の所為で争いが起きるのだ。
「言える訳がない。」
「解っている。」
俺の呟きに急に返事を返したのは、金色のヤツだ。
言いたい事は、嫌と言う程解るだろうが。
「油断するなよ?知ってるやつは知っているんだ。」
「ああ。」
まだ、向こうに動きは無いと聞いている。
どこまで、それが保つか。
「ニセモノ」の青の少女。
未だ、帰らない銀の家の面々。
不安要素は多い。
そして一番の不安の原因、ヨル本人からは全くラジオ電話は使わないくせに手紙が来た。
しかも大体が子供達の事、それに「風を起こして、巻き込みます!」という不安な一文。
ただ「巻き込む」という部分には、賛成だ。
何しろ、最終的にデヴァイへ行く事はきっと、あいつの決定事項なのだろう。
それなら、味方は多いに越した事はない。
それに、グロッシュラーはある意味デヴァイの縮図だ。
練習にもってこいだし、ウェストファリアの様に味方にすると大きい奴もいる。
そう言えば。
「ミストラスは、どうした?」
ヨルをお茶に連れ出すという荒技に出た所までは、聞いている。
祭祀後は、騒ぐかと思ったがいつも通りらしい。
逆に、怪しいんだが。
「俺は知らんな。ベイルートは?」
「ああ、俺も気になっていた。しかし………動きは無い、無いんだが。」
「何だよ。」
「多分、あいつはアレで満足したのかも、しれない。ヨルを引き込みたかった、というのは確実だと思う。しかし、あいつも石は吸収されてないから自分の力にかなり、溜まった筈なんだ。それで満足したのか、或いは………。」
「…………………。」
何となく、ベイルートの言いたい事は分かる。
多分。
俺も、考えなかったワケじゃ、ない。
だが、しかし。
あの金の石、そして「あいつ」もいる。
そんな事には、ならぬと思いたいが。
顔を合わせている訳ではないが、全員が顔を見合わせて黙る、という様な雰囲気。
「ま、その為に「味方」を沢山作るんだろ?とりあえずやろうぜ。」
「「ああ。」」
いつもの様子でレシフェが言う。
やるしかないのは、確かなのだ。
「じゃあ理由はウェストファリアに任せよう。石は、創る。ヨルは子供達にも創りたいと言ってたが大丈夫だと思うか?」
「お前は子供達にだけ創れない理由をあいつに説明出来るか?」
「…………やめとく。」
「そういう事だ。ネイアは、とりあえず自分達に石が出来るなんて思ってもないだろう。それだけでかなりこっちに付く筈だ。「特別な理由」でも、ない限りな。そこ迄気にすまいよ。」
「光は、どうする。」
急に金色が口を挟む。
光?何の事だ?
「あー、そうだな。」
「どうした?」
「ああ、ヨルが祈ったり、歌ったりすると。光が飛ぶんだよ。最初なんて、旧い神殿からあっちの神殿、島の反対側迄飛んだんだぜ?信じられないよな??」
「ふぅん?」
石を創る時光が飛ぶとバレやすいな?
光?何故?
何処に飛ぶんだ?飛んで、どう、なる?
幾つか気になる事を質問すると、理由が判った気がする。現場で見られないのが惜しいな。
「じゃあ創る時は気焔を連れて行け。それで大丈夫だろう。」
「気焔?何故だ?」
「なるほど。」
本当の理由を言うのは、酷か。
「気焔は「あっち」の護りだ。その、関係じゃないか?」
我ながら上手い言い訳。
レシフェとベイルートは素直に納得したようだ。
まさか本人まで、そう思ってはいまいな??
「解っている。」
遠くの俺の思考を読んだかの様に、返事をしてくるあいつが、少し怖くなったところでそろそろ時間だろう。
「じゃあくれぐれもヘマはするな。」
「あーい。」
「分かった。」
「…解っている。」
プツリと途切れた音がして、ドサリとソファーへ沈み込んだ。
何故だか、立って話していた事に今、気が付いた。
思いの外緊張して話していたのだろうか。
「ま、出来る準備はしておくか…………。」
ぐるりと部屋を見渡して、これから必要になりそうなものにアタリを付ける。
あの屑石を纏めて…………。
「聞こえないやつ」とやらも送った方がいいか。
ヨル用の石もいるか?
もう、要らないのか?それはそれで寂しいものだな…………。
そんな事を思いながら、つい先日ハーシェルと話石で話した事を思い出した。
「ヨルは元気だろうか」と言っていたのだ。
それを聞いて、ハーシェルには手紙を出していない事が分かった。
「しまった!」
それだけ言っておけばよかった‥。
まぁ触らぬ神になんとやら、知らぬふりをしておこう。
それっきりヨルからの手紙の事は忘れ、積まれた本の上に置きっぱなしになっていた。
次のハーシェルが訪問する時、迄は。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる