透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

私について

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「さぁて?何から話そうかね?」

そう言って私の瞳をじっと見つめるイストリア。


少し落ち着いて、辺りの色が目に入る様になった私。
未だ心の中には、重苦しい気持ちも横たわっている。


でも、この空間の、空気が。

落ち着くように、ゆっくりとした深呼吸から入ってきた、ハーブの香りが。

スッと自分の中に入ってきて、そして深い所まで届いたのが分かり、上を見上げた。

そう、顔を上げるのは大事だ。
上から流れている花の房と、細く差し込む光に透ける、緑の葉。

が目に映る様になったという事は、きちんと物事を見ようという、前向きな気持ちも表していると思う。

しっかり、目の前を見つめて。

自分自身も、見つめ直すんだ。


その、私の中を見透かした様にこう、質問される。

「とりあえず君の一番の心配事は。今のところ、なのだろう?まあ、正直祭祀は君向きの案件だ。祈るのは、得意だろうしな?」

薄茶の瞳を見つめたまま、ゆっくりと頷く。

沢山の私の関心事、心配事の中で。

今、大半を占めているその「貴石」という存在。


そう、行く、行きたい、とは決めたけれど。

全くもって先は見えないし、どうにもならないかも知れない。

目の前のカップに視線を落とし、その柔らかな曲線を映して少し、考える。


そうか。

多分、私が今まで真っ直ぐに突っ走って来れたのは「そうした方がいい」と思えたからで、「それをする事によって良くなる未来」を描けたから。

だけど。

貴石の場合は、未知過ぎて「それ」を描けるのかも分からないし勿論結果も分からない。

あとは…………なんだろう、な。この、モヤモヤは…………。


チラリと薄茶の瞳を確認すると「どうぞ」という顔をしているので、そのままそれを伝えてみる。

そう、多分、私の中を全部一度整理して。
考え、見つめてみないと分からないのだ。きっと。



私の話を聞いたイストリアは頷きながら、頭を掻いた。

「うん、未知のものに対する恐れ。それは正しいし、持っていなければならない意識でも、ある。それとその、モヤモヤね………。これはなぁ………、まあ、うん。私にも難しいけれど。」

そう言って足を組み替えるイストリア。
少し、困った顔になっているが心当たりが無いと言うよりは言うか言わないかを迷っている様な、そんな感じだ。


しかし、しばらく考えていたイストリアの口から出たのは、ベイルートの様な提案だった。


「そうだね。とりあえず、問題を整理しようか。君の事と、貴石の事、どこまで何をどうするのか、貴石の意見もある。何しろ君一人が頑張ってどうにかなる問題じゃない。」

そう言って立ち上がり、背後の戸棚から紙とペンを持って来た。
そうしてそのまま、私を見下ろしはっきりとこう言ったのだ。


「あのね。はデヴァイへ行かないと解決しない問題なんだ。だから、、どうこうしようと思わない方がいい。」

「今は状況を見極めて、どうしても許せない部分を取り去る事くらいじゃないかな?でも冬の祭祀の後はかなり状況が変わっている筈だから、そもそも今改善できる事は無いかもしれない。」


そうして椅子に腰掛けると、紙に何本か線を引きながら続けるイストリア。
私はそれをじっと見ながら、今言われた事を考えていた。

そう「デヴァイへ行かないと分からない」は、ここしばらく自分が思っていた事と、同じだったから。


「そうだね………。そう言えば。」

「はい?」

急に思い付いたように、話が始まる。

「最近、何か祈ったりしたかい?少し前に、多分君の力だと思うんだがサーっと巡るのかと思ったらパッと爆けて溶けたんだ。また畑が元気になったから、君が祈ったのかと思ったんだけど。」


んん?

祈り?いや、祈って………は、無いな??
え。
どうだろう………??
全然心当たり…でも私の力なんだよね?
まぁでもそれ以外ではあり得ないか。

うーーん?

「あっ。」


アレだ!アレ!
あの、出窓の時!!

そうだ、思い出した。

「私が気焔に会うな」と言われたら、その時じゃない?
想像しちゃった時。それだよね?
それでチカラがぐるっと廻っちゃって焦ってその後……………。

…………ああぁぁ ぁぁ。

いや、ダメージあるなこれ。
うん?

ヤバ。

咄嗟に顔を上げると、何故だか満足気な顔の人がいる。

多分、と言うか確実に赤いであろう顔を両手で挟むと私は一度、大きく息を吸って、吐いた。

よし。
大丈夫。………多分。

「あれは、祈りじゃないんです。あの、その………。」

うん、言い辛いけど私コレイストリアさんに言えなかったら、どんな人にも言えないだろうな……そう、思うとなんか………うん。ああ、ええ。


自分の中で押し問答して結局、言う事にした。

多分、イストリアは何かに気が付いたから私にその質問をしたのだろう。
きっとこの後の話に関係ある筈なのだ。

「あの………、ちょっと、色々あってですね………。少し、想像したんですよ。「私が気焔と会えなくなったら」って。そしたらなんかチカラがドンってぐるってなって………。」

いまいち微妙な、説明だけれど。

頬を押さえたまま、チラリと視線を送ると何やら真剣な顔で考え込んでしまっているイストリア。

「?」

完全に揶揄われると思っていた私は、拍子抜けして、ただその様子を眺めてしまった。
ついでに、顔の熱さを冷ましながら。


しかししばらくしてもイストリアは帰ってこない。
何やら表情はくるくる変わり、時折私の顔を見るとまた腕組みをして考え込む事の繰り返しだ。


何か、あったのかな………?
あのチカラが結構影響、あったとか?
でもそれなら会った時にすぐ、言われるよね??

そう、私もぐるぐるし出した頃。

やっと、顔を上げると再びペンを持ったイストリアはまず始めに、こう、言った。


「これは私の予測なんだが。君が青の少女だと、いう事はその青の本の著者の、血縁という事でいいだろうか。答えたくなければ、返事はいらないが。」

真剣に、しかし優しくそう問い掛けられた。

でも、逆に私はこの質問を聞いて、驚いていた。


え?
イストリアさん、知らないんだっけ???
あれ?
知ってるのって「青の少女かも」的な事だけだっけ??うん?

もう、てっきりイストリアは全てを知っているかの様な気になっていた、私。
頭の中をぐるぐるしてみたけれど、言ってはいけない理由が思い付かない。

えーと?
私が、絶対に秘密なのは姫様を探している事、だけだよね………?

結局、長との関係はウイントフーク、ハーシェル、レシフェとフローレス、あとは多分ラガシュも知っている。
具体的な事は言っていないが、レナも気が付いているけれど気にしていない、という感じだろうし、ミストラスはきっと気付いていそうだ。

それにきっと、ブラッドフォードやアリススプリングス………知られたくない人達にも、疑われている。
いやでも?「青の少女」って事だけかな??
でもイストリアさんが気が付くって事は…?


チラリと薄茶の瞳を見る。

意外とイストリアはゆったりとお茶を飲んでいて、私に気を遣わせまいとしているのか、目は合わなかった。

うん。

いいよね?言っても。
て言うか、言わないと多分、無理。

何が、どう無理なのかは具体的には分からないけど。
多分、これから起こる沢山の事や、この後続くあの話も。

全部、含めて繋がっていて、関係がある事で。
きっとイストリアには知っていてもらった方がいい筈なんだ。
どうして気が付いたのかも、聞いてみた方がいいだろうし?

それで何なら、本部長とも協力して貰えばいいし?
何コレ、ナイスアイデア。

いや、急に呼んだら怒るかな………。


一人納得してニヤニヤしていた私。

ふと、顔を上げると既に視線は私に向けられていた。

「あ。」

ちょっと恥ずかしくなって、何となく座り直した。そう、誤魔化したかっただけだけど。


そうして私はどう話したものか、少し考えてみたのだけど。
とりあえず、切り口はここからいく事にした。

「最初の最初、始めは。私の、瞳が金色に変わってきたんです。」

そう、全ての始まりはここからだ。

「ラピスで初めて、石の、この腕輪の力を使った時から。少しずつ、変化していたんです。それに気が付いたハーシェルさんがウイントフークさんの所に連れて行ってくれて。そこでまじないの眼鏡と、髪留めを………。」

あ。

大丈夫、大丈夫。
確か、大丈夫なんだ。
今は神殿に、いる。

一瞬、あの小さなシンの事を思い出してザワリとしてしまった。

でも。

あれは大丈夫で、ちゃんと確か確認して(どこで?)今は神殿に白灰色のシンがいるし、大丈夫なんだ。(どうしてだっけ?)


私の中が疑問だらけで溢れてきた所で、イストリアが的確な質問を投げてくる。

「うん?君は………血縁な事はなんだろうが、まさか…?瞳?そっちなのか?いや、でもまぁ血縁という事はつまりそういう事、か………。まあ、何と言うか。ん?髪留め?」

「はい。髪の色も、違います。」


そう言ってアキに手を掛ける。

そうして、私の中のあの疑問は再び煙に巻かれる事になった。

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